Martin Torgoff, Bop Apocalypse, Da Capo Pressの全訳書『ジャズとビートの黙示録 人種、ドラッグ、アメリカ文化』全国の書店にて発売中
日本評論社(東京都豊島区)はこのほど『ジャズとビートの黙示録 人種、ドラッグ、アメリカ文化』を刊行しました。
本書はMartin Torgoff, Bop Apocalypse, Da Capo Pressの全訳書で、ジャズ百年の歴史とそれに大きな影響を受けて誕生したビート文学について、多くの当事者の証言をもとに振り返った本です。
激しいドラッグ戦争の一方で合法化が進む米国。その文化ルーツをジャズとビート文学の関係からたどる現代米国史を綴っています。
定価:税込 4,180円(本体価格 3,800円)
ポイント
①読み出すとジャズを聴き、本を読みたくなる本であり、なぜ彼らが薬物に手を出さざるを得なかったのかを考えさせられる一冊です。
②全30章構成ながら、章を飛ばして読めるので、興味があるところの拾い読みが可能です。
主な内容
第1章
物語は、テキサスの牧場から始まります。そこでは牛が陶酔状態で寝転がっているのでした。これはテリー・サザーンの少年時代の思い出です。1930年代南部の農村では、黒人やメキシコ人たちが労働の疲れを、クサを吸って憂さを晴らしているのでした。
「みんなハイになっちまうと、だれも起きてニワトリにエサをやらなくなるんだ! ヘッヘッヘッ」
第2章 サヴォイでストンプ
第3章 被害妄想のスポークスマン
反ドラッグ十字軍、排外主義者、人種差別者、アメリカ初代ドラッグ帝王ハリー・アンスリンガー。彼は、自分の配下にある連邦麻薬局を使って、取締りキャンペーンを組織し、強権的な取締りを行います。その第一ターゲットがジャズ・ミュージシャンでした。
第4章 2発もキメればメローになっちまう
ふたたびバーニー・ブライトマンのハーレム回想。ジャズとリーファーを核に育ちつつあったまったく新しい生き様とは。
第5章 ハーレムの白人市長
第6章 ポップス
第7章 軽犯罪から重犯罪へ
第8章 シューシャイン・ジュークボックスでの偉大なるテナーソロ
本書前半の山場の章。ビリー・ホリデイとレスター・ヤングの登場と、彼らの出会い、そして1937年2月25日の歴史的セッションの模様がかなりくわしく語られます。ビリーとレスターがジャズ史上に残した偉大な足跡と、アメリカ文化全体にもたらした多大な影響が考察されます。
第9章 なんだって、こんなものがこの世にあるってのか?
ジャズ史上、最大の革新者、最高のミュージシャン、チャーリー・パーカーがいよいよ登場します。レスター・ヤングら先駆者に学びながら、バップ革命を成し遂げたバード=チャーリー・パーカー。彼の人生において、自由と解放と、孤独と自滅とは一体のものでした。
第10章 一度知れば、決して忘れることはない
この章から、ビートたちが本格的に取り上げられます。トップバッターはハーバート・ハンケ。ばくち打ち、盗人、詐欺師、物書き、生涯ヤク中。初めてビートという言葉を使った男。
第11章 世界中で語り継がれる注射
ビート2人目はバロウズ。バロウズは科学者のようにヤクを探求し、中毒者になります。
彼の独特の世界観、ジョーン・ヴォルマーとの交流がこの章のテーマです。
第12章 バズってるね、ベイビー
ビート3人目はケルアック。ヤクの注射を勧めるバロウズに対して、ケルアックは最初のうち慎重だったといいます。
ケルアックが薬にはまるにはヴィッキー・ラッセルの影響が大きかったのでは?
第13章 そしてカバたちはタンクで茹で死に
ビート4人目はギンズバーグ。ルシアン・カーを介して、ケルアックとの付き合いが始まります。そこにさらにバロウズが。
結びつきを強めた彼らは“感覚の攪乱”を求め、さまざまな薬物に手を染めていきます。
第14章 パーカーズ・ムード
ふたたびチャーリー・パーカーの章。パーカーは盟友ガレスピーとの溝を深めます。録音最中に酒とクスリでぶっ倒れることになる伝説のラヴァーマン・セッションを中心に、パーカーの栄光と迷走が描かれます。
第15章 賑わう路上の白昼の幽霊
第16章 他人の知ったことじゃない
第17章 つまらないものの神聖化
ビート・ジェネレーションに精気を吹き込んだニール・キャサディの登場。『オン・ザ・ロード』のディーン・モリアーティは、ケルアックの精神と創造性を解放します。後半にはジョン・クレロン・ホームズが登場。チャーリー・パーカーがビート・ジェネレーションに与えた影響についてもみます。
第18章 それが俺たちの烙印
チャーリー・パーカーに影響を受けた次世代ミュージシャンにスポットを当てます。マイルス・デイヴィスとジャッキー・マクリーン、ジョン・コルトレーンたちです。いずれも類まれな才能と努力によってジャズ・シーンの中心を担いましたが、彼らも麻薬中毒の日々を過ごしました。ドラッグ中毒とジャズとの関係が複雑な現象としてとらえなおされます。
第19章 ジャンキー娼婦のためのブルース
第20章 ワイルドな形
第21章 ドイツ人ならではの本気でヤバいブツ
第22章 聖なるかな、バップ黙示録!
第23章 ラウンド・ミッドナイト
Dope(ヤク注)とDrunk(飲んだくれ)のD&Dバンドと言われた50年代マイルス・クインテット。
その代表メンバー、マイルスとコルトレーンが薬物中毒から脱却するまでの物語。
第24章 ビル、なんであの若者たちはみんな鍾乳洞で首をつられてるんだ?
第25章 ジャズの経験的なソウル
第26章 ペヨーテの詰まった廊下
第27章 一目でわかる烙印
第28章 グッドバイ・ポークパイ・ハット
1959年、レスター・ヤングの死。ビリー・ホリデイは取り乱します。そして彼女の身にも死の影が迫ってきます。
第29章 すべては彼らの詩的な――いや形而上学的な――教育の一環
第30章 レディを殺すな
59年5月肝硬変でビリー・ホリデイ入院。そして6月に麻薬不法所持で彼女は病院内で逮捕され、保釈も公判もない投獄状態に置かれました。一方、院外では逮捕に対する抗議デモが始まります。LET LADY LIVES! 一時快復の兆しを見せたものの、ビリーは7月17日息をひきとります。麻薬中毒を犯罪として取り締まるのか、医療問題として治療の対象とするのか。論争はまさにビリーの死の前後から激化したのでした。
エピローグ 始まりの終わり
ギンズバーグの闘い、その後のジャズとビートの前進と解体について簡単にふれます。
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