【第77回 人権週間 テーマ「誰か」のこと じゃない】住まいづくりのヒント

株式会社本間総合計画

2025.12.05 10:23

現代社会の住まいの課題、事例とともに建築のプロが解説! 障がいを持つ方のための生活空間 建築家視点のアイデアに家族視点も加えて

一級建築士事務所の本間総合計画(本社:宮城県仙台市、代表:本間貴史)は、2025年12月4日(木)〜10日(水)の第77回人権週間(以下、人権週間)のテーマ “「誰か」のこと じゃない”が障がいを持つ方がいる家族の住まいづくりを考えるときにも重要だと考えています。当社はこれまで、国内はもちろん海外でも認知症高齢者とその介護家族や、自閉スペクトラム症のお子さんとその家族、といった様々な事情を持つ方の住まいづくりを数多く手がけてきました。そこで人権週間を機に、「誰か」のこと じゃない住まいづくりを考える上で必要なことを建築のプロがお伝えします。

障がいのある方々やその家族からのご相談が増えたきっかけ

 当社は「建て主の生活をデザインする」という考えのもと、これまで自閉スペクトラム症児療育、パーキンソン病患者、中途視覚障害をもつ方に配慮した住まいなど、様々な事情を持つ建て主の生活をデザインしてきました。大きな転機となったのは、1990年代後半に手がけた宮城県大崎市田尻地域の車いすのご夫婦の住まいでした。当時は、バリアフリーという言葉もまだ広く浸透しておらず、障がいを持った方々の住環境に対する指針も明確にされていませんでした。何よりも今のようにインターネットで検索すれば膨大な情報が入手できる、という時代ではなかったので暗中模索でしたが、結果的に建て主に喜んでもらえる住まいを完成させることができました。このような住宅が可能であることが報道により広がったことで、高齢者の方や障がいを持つ方々、その家族からの依頼が急増しました。2016年には海外で「建築の力で介護の質を変える」ことを目的にしたプロジェクトもスタート。これまでの経験上、大切なのは被介護者の残存機能(=障がいを負った方に残る本来の機能)の維持・活用だと考えます。そのためのリハビリテーションとして、食事準備を家族でできる空間づくりの工夫、トイレ空間の工夫、趣味がしやすい空間の工夫などを提案してきました。当社のこれまでの実績やノウハウが多様な事情を持つ住まいづくりに悩んでいる方へのヒントになればと思います。

Tips①:動線に危険・大切なものは置かない! もし経験ある建築士でも不安なら……

 国内で、自閉スペクトラム症の男児を療育しやすい住まいづくりのご相談をいただいたことがあります。家族のこれまでの生活を伺い、当社も症例について調べながら設計を進めました。自閉スペクトラム症の特徴的な行動のひとつに「頭や目の働きを伴う協調運動が苦手で、危険を察知する感覚が弱い」ということがあります。これを建築上の注意点に落とし込むと「住まいのなかの危険を取り除き、事故を未然に防ぐ手立てが必要」ということになります。危険物はもちろん、大切なものも、そのような障がいを負った方の動線上に置かないゾーニングが必須です。

 その一方で、長時間 目を離すこともできないのが実情です。つまり大切なものを置く必要のある書斎などは、家の一番奥に配置したいと考えますが、視認性は低くなり目が届かなくなってしまう恐れがあります。そこで建具はスライドで開閉するがらり戸にすれば、必要なときはスペースの無駄なく開放状態にしておくことができます。また、家族の目線の高さにスリットを入れて人の存在を感じられる工夫をした事例(写真①)や、壁に穴を開けた事例(写真②)もあります。

 また、当社のように障がいを持った方の住まいづくりの実績が多くあっても、やはり介護者や家族にとって建築士は建築士。医療従事者ではないので、説得力に欠けると感じられることも。そこで当社では、理学療法士、作業療法士の方に現場に同行してもらい、設計の工夫や意図がプロの視点から有効かどうか、判断してもらうようにしています。もし、同様の状況で設計に不安がある場合、介護の専門家の立ち会いを希望してみても良いかもしれません。

Tips②:全面的な建て替えが難しいときにできること

 Tips①で述べた危険なものや大切なものがやむを得ず障がいを負った方の動線上にある場合は、保管場所の鍵の設置など、できる限り触れない工夫を施してみることをお薦めします。鍵も2つの動作をしないと開かない2ロック方式にするとなお良いです。

 自閉スペクトラム症や認知症高齢者の方は、大きな声を出したり、床や壁、物などを叩いたりする行動が見られます。防音対策を施したり、床材の耐久性を高めたりするのはもちろん新築時がベストですが、リフォームや後付け工事など対策はあるかもしれませんので、建築家に相談してみても良いと思います。また、言葉によるコミュニケーションや文字などの理解が苦手な被介護者は、そのモノが何を意味するのか絵やマークなどにするとわかることもあります。自由に出入りして良い空間や、トイレなどの生活に欠かせない空間は共通して一見でわかりやすいマークをつけると良いかもしれません。

Tips③:誰よりも被介護者を知る身近な方からアイデアが出ることも……

 前述の自閉スペクトラム症の男児をいつもみているお母様からのアイデアが建築家を超えた事例もあります。夜間に照明のスイッチがわかりづらいのではないかとスイッチ自体が光るホタルスイッチの採用をご提案したところ、同じ形状の照明のスイッチが並んでいること自体わかりにくさがあるかもしれない、と。お母様は「スイッチを色紙で分類する(写真③)」というアイデアを提案。やはり一番近くでみている方のアイデアの素晴らしさに脱帽しました。

会社概要

株式会社本間総合計画は「建て主の生活をデザインする」という理念のもと、超高齢化社会や地域経済格差といった現代社会の課題に対し建築を通じて解決すること、人々の生き方の質を高められる建築を目指しています。単に“建物を設計する”ことだけではなく、そこに住む人そのものを設計対象として捉えています。どのような家に住みたいかよりさらに深く「どんな暮らしをしたいか」を出発点として、家族の生活習慣や将来像、仕事や趣味、介護や育児、ペットの飼育…… などを丁寧にヒアリング。それらを空間として具現化します。

今後も、時代の変化に応じて多様化する住まいのあり方に応えられる「暮らしのデザイン」という当社最大の特長を武器にしていきます。

 

  • 会社名:株式会社本間総合計画
  • 代表者名:本間 貴史
  • 所在地:宮城県仙台市青葉区柏木一丁目3-12-111
  • 設立:1991年
  • 資本金:10百万円
  • 事業内容:当社は一級建築士事務所として、以下の事業を展開しています。

      ・新築住宅/リフォーム

      ・店舗/医院/施設設計

      ・海外プロジェクト

      ・不動産事業

      ・検査・支援業務

 

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