「第2回AIのべりすと文学賞」受賞作発表

株式会社デジタルメディア研究所

2025.11.03 17:09

AI文章生成サービスを使った日本初の文学賞

株式会社デジタルメディア研究所は、AI文章生成サービス「AIのべりすとβ2.0」を活用する「AIのべりすと文学賞」の第2回を開催し、全国から寄せられた223作品の中から各賞を決定しました。AIと人間の共同創作を推進し、新しい文学表現を拓く本賞。本年の最優秀作品賞は、事の顛末さんの『おじいちゃんは国家反逆者』が受賞(賞金50万円・「AIのべりすと」プラチナ会員権12ヶ月)。純文学賞・エンタメ賞・AIショート賞の各受賞作とともに、審査員の講評も公開します。

AI文章生成サービスを使った日本初の文学賞
第2回AIのべりすと文学賞受賞作発表

株式会社デジタルメディア研究所(東京都目黒区/代表・橘川幸夫)は、AIによる文章生成サービス「AIのべりすとβ2.0」を活用した文学賞「AIのべりすと文学賞」の第2回を開催しました。
「AIのべりすと文学賞」は、AIと人間の共同創作を支援し、新しい文学表現を拓くことを目的に創設されたものです。2025年度となる今回は、全国から223作品の応募をいただきました。

ここに、最優秀賞をはじめとする各賞の受賞作品を発表いたします。

「AIのべりすとβ2.0」

第2回 AIのべりすと文学賞
最優秀作品賞

受賞作:「おじいちゃんは国家反逆者」
作 者:事の顛末
純文学、ライトノベルなどジャンルを問わず最も優れた作品に贈られます。
賞金 50万円・「AIのべりすと」プラチナ会員権12ヶ月分

最優秀作品賞
作品名:おじいちゃんは国家反逆者
作者:事の顛末

【受賞コメント】
 昨今の成長著しい文章生成AIですが、突飛な発想力や執筆スピードが優れている一方で、脈絡や整合性などの細かな機微の点で人間には及ばない部分があるとも感じています。今回私は、次の一文に詰まった時「AIのべりすと」に頼ったり、「AIのべりすと」が出力した前後が繋がっていない文章を逐次手直ししたり、といったニ人三脚のような形で作品を書き上げました。どちらかに頼りきりではゴールにたどり着けなかったはずです。
 完全に人間に代わるものでもなく、人間を堕落させるものでもなく、辞書やテキストエディタが多くの執筆者を助けてきたように、創作をより手軽にするツールとしてAIが広まっていくことを心より願っています。

純文学賞
受賞作:「語られぬ君 読まれぬ詩」
作 者:だん がらり
最も優れた純文学作品に贈られます。
賞金 10万円・「AIのべりすと」プラチナ会員権12ヶ月分

エンタメ賞
受賞作:「怪異系女子モロイさん」
作 者:晃月芽依也
最も優れたエンタメ/ライトノベル作品に贈られます。
賞金 10万円・「AIのべりすと」プラチナ会員権12ヶ月分

AIショート賞
受賞作:創作落語「一人心中」
作 者:スートラ
最も優れたショート作品に贈られます。
賞金 10万円・「AIのべりすと」プラチナ会員権12ヶ月分

審査員
橘川幸夫[デジタルメディア研究所・代表]
柳瀬博一[東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授(メディア論)]
池澤春菜[声優]
KAHUA[AIアート・ディレクター, アーティスト]
ダ・ヴィンチ・恐山[ライター] 

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審査委員長総評

●第2回「AIのべりすと文学賞」審査委員長・橘川幸夫の総評

 2025年は、全世界的に「生成AI元年」とも呼べる、新しい時代の幕開けとなった。 テキストだけでなく、音楽や動画までもがプロンプト一つで生成される時代を迎えている。しかし、人間にとって最も根源的な表現は、やはり「文章」による言葉の世界である。
 「AIのべりすと」は、2021年7月に時代を先取りして公開された、AI技術による物語生成システムである。単なる自動文書作成ではなく、人間との対話を通して物語を共創していく。この仕組みを使って、多くのユーザーが物語創作に挑んできた。
 私たちは、こうした時代の流れを背景に、2022年度に「第1回 AIのべりすと文学賞」を開催し、今回はその第二回となる。
 AIと人間の協働が広く浸透するなかで、作品の完成度はさらに高まりつつある。今後も、AIと人間のコラボレーションによる新しい物語文化を、より多くの人々へと広げていきたい。
 ぜひ、多くの方々に「第2回 AIのべりすと文学賞」の受賞作に注目していただき、新しい才能の誕生をともに楽しんでほしい。


●AIのべりすと開発者Staさんからのメッセージ

 AIのべりすとは、チャットボットタイプのAIが流行する前にデビューしたので、去年まではテキストコンプリートAI(文章の続きを書くことを主眼に置いたAI)を手がけてきました。技術的な流れも鑑み、少々テキストコンプリート寄りの機能をもたせつつ、今年は「すぴこさま」シリーズのチャットボットタイプとのハイブリッドAIを開発しています。
 世間的にはAIを使って何かするというと、AIでイチから十まで書かせたり、完全に作業を自動化するというイメージがあります。実際に世間的な「AIで小説やプロットを書かせる」というようなテキストを見ても、一回のプロンプト(入力文)で全部を済ませようとする傾向があるようです。しかし、AIのべりすとの半分AI・半分人間で進めていくという考え方は変わっていません。その上でAIがさまざまな機能を持ち、一定以上の汎用性を得たことで、当初よりも幅のある使い方が可能になっています。
 実際に私自身がゲーム開発にテキストAIを取り入れる過程では、アイディアはあらかじめこちらで決まっているので、むしろ詳細で長い部分、たとえば架空の一国の歴史をシミュレートしてみたり、プロットの中で丁々発止のやりとりや対立・戦闘、キャラクターが取るリスクのある行動の部分をロールプレイングゲームのようにシミュレートしてみたり、といった使い方も行っています。最終的に作品として見えるのはその一部分になりますが、特に思考実験的なものや、ゲーム性をもったライティングではAIは大きく役に立つと考えています。私自身は直接審査には関わっていないものの、AIのべりすと文学賞の審査・選出においては、どのようにAIを使って創造性を増しているか、というプロセスの部分を重視するよう、事務局にお願いしました。
 デジタルアートの歴史をふりかえってみると、80年代のネットワークの発祥から00年代まではアナログで不安定だったクリエイティブのプロセスをデジタル化する、デジタルへの渇望の過程であり、2010年代はビッグデータ、データのライブラリ化と今度はアナログさへのあこがれの時代。2020年代は、これまで30年かけて集積されたデータを、ただ眺めたり解析するだけでなく、自由に操作できるようになる初めての時代です。
 2010年代まではデジタルのデータは線形的(リニア)にしか補間できませんでしたが、AIを用いれば非線形的な操作、たとえば、ジャズの楽譜を3Dオブジェクトや文章のプロットに変換したり、といったことが可能になります。木の枝をはさみで切ると、切ったところから自然に新しい枝が生えてきますし、生き物の傷口はふさがって新しい細胞組織に置き換わります。この、生えてくる枝をどのようにしたいかということをある程度コントロールできるのがAIです。2020年代は、クリエイティブにとってある種アナログよりもアナログな、超アナログ的な10年間になると考えます。その一端をみなさんでかいま見ることができればと思い、第2回を開催しました。

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★各賞の受賞者と審査員のコメントは、「AIのべりすと文学賞サイト」に掲載しています。

★なお、受賞作は書籍として発行の予定です。第一回の作品集はこちらです。

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