【世界初】脳波計測で駐車場巡回中の集中力低下を定量的に解明
~巡回支援システム「MEGURU」が集中力維持に有効であることを実証~
株式会社想画(本社:東京都千代田区、代表取締役:田中統蔵)は、この度、株式会社CyberneX(本社:東京都大田区、代表取締役CEO:馬場基文)と共同で、駐車場巡回業務中の人間の集中力推移を脳波計測によって世界で初めて定量的に解明する実証実験を実施しました。その結果、長時間の巡回業務では集中力が有意に低下する一方で、当社の駐車場巡回支援システム「MEGURU」を使用することで、集中力を維持し、業務効率と安全性を高めることが示唆されました。
1. 実証実験の背景:過酷な巡回業務と集中力の課題
駐車場巡回業務は、子どもの車内放置を防ぐため1台ずつ車内を覗き込んで確認することから、特に夏場において、多大な身体的・精神的負担を伴います。駐車台数500台を超える大規模施設では、1回の巡回に1時間近くを要することもあり、人間の集中力が長時間持続しないという特性から、業務後半での疲労による集中力低下、ひいては見落としのリスクが懸念されていました。しかし、これまで巡回業務における集中力低下を定量的に測定した研究や、「MEGURU」のような支援システムの効果を科学的に検証した事例はありませんでした。

駐車場巡回支援システム「MEGURU」は、AIカメラがナンバープレートを読み取り、初めての新規車両か以前にも見た既存車両かを判定することにより、新規車両は入念に、既存車両は迅速に、確認作業のメリハリを作ることで負担軽減を図るシステムです。

2. 世界初の試み:移動中の脳波計測
本実証実験では、従来の脳波計測では困難であった「屋外での移動中の脳波計測」を実現するため、株式会社想画が実証実験の企画・運営、株式会社CyberneXが耳から脳波を測定する脳波計「XHOLOS Ear Brain Interface」の提供を担いました。XHOLOSは、動きに伴うノイズ混入を抑制し、小型軽量で被験者への負担が少ない次世代型デバイスであり、屋外での移動を伴う脳波計測は本実証実験が世界初の試み(当社調べ)となりました。

2025年6月16日から20日にかけて、千葉県および神奈川県の3施設で、巡回担当者にXHOLOSを装着して巡回業務を行っていただき、脳波データを記録しました。巡回は1回あたり20分~60分で、以下の2パターンで計測を実施しました。
- 「MEGURU」を使用せずに全車両を新規車両扱いで巡回した場合
- 「MEGURU」を使用して新規車両と既存車両の違いが分かる状態で巡回した場合
※被験者数18名、計測巡回数31回、巡回時刻10~20時台
脳波データは1秒ごとに取得され、集中状態の高低は、ベータ波(β波)をアルファ波(α波)で割った「集中指数(Engagement Index)」を用いて数値化しました。
- 集中指数EI≧0.5は高集中、0.3≦EI<0.5は中程度の集中、EI<0.3は低集中・弛緩状態に相当
- 集中指数EI≧2.0以上は外れ値として除外(グラフ上では0としてプロット)



巡回中は車内を覗き込んだり、歩いて止まってを繰り返すことから、脳波に乗るノイズの影響を考慮する必要があります。本実証実験では、体や首を動かしたときにノイズが乗りやすいデルタ波(δ波)とシータ波(θ波)の合計が200以上になった計測値は除外しています(グラフ上ではすべての値を0としてプロット)。また、ガンマ波(γ波)は筋電の影響を受けやすく、集中指数(Engagement Index)の算出にはアルファ波(α波)とベータ波(β波)のみを使用していますが、ある程度のノイズを含んだ計算結果の可能性があります。よって瞬間瞬間の数値に着目するのではなく、巡回の前半と後半という長いスパンに分けて見たときに、全体的な傾向として「前半と後半では集中状態の持続傾向に差があるか」などの観点で評価をしました。
なお、全31回分の計測値のうち、上記の基準で除外したノイズおよび外れ値が占める割合は、4~20%が12件、27~44%が10件、51~59%が3件、69~83%が6件であり、過半数がノイズに相当した9件分の計測値については、傾向分析や評価の対象からも除いております。
(参考)周波数帯別の傾向
- アルファ波 (α波): 周波数8~13Hz。リラックスした状態でよく見られます。
- ベータ波 (β波): 周波数14~30Hz。集中している時や、活発に思考している時に現れます。20Hz以上になると、緊張状態を示すこともあります。
- ガンマ波 (γ波): 周波数30Hz以上。最も高い周波数で、高度な情報処理や集中状態、高次の精神活動の際に現れるとされます。瞑想やマインドフルネスの実践中にも現れることがあります。
- シータ波 (θ波): 周波数4~7Hz。浅い眠りや、うとうとしている時、瞑想状態、または強い眠気を感じている時に現れます。
- デルタ波 (δ波): 周波数4Hz未満。深い睡眠時に現れる脳波で、ノンレム睡眠の主要な要素です。
3. 実証実験結果:定量的に確認された「MEGURU」の効果
(1) 「MEGURU」を使用しない場合:業務後半で集中力が有意に低下
「MEGURU」を使用せずに巡回した場合の脳波データからは、以下の傾向が示唆されました。
- 集中力の経時低下が顕著: 前半に比べて後半の平均集中指数が25〜60%低下し、巡回開始から15~20分経過以降は集中指数EI<0.30の低集中状態が連続して出現する区間が増加するなど、巡回業務の後半になるにつれて集中指数が統計的に有意に低下する傾向が確認されました。
- 高集中ピークの減衰: 複数の計測結果において、巡回開始直後はEI 1.0〜1.9のスパイクが頻発しますが、後半のスパイクはEI 0.8〜1.2程度に低下するなど、前半に比べて後半は集中指数のピークが下がり、一時的に発揮される高い集中力の水準が低下しています。
- 低集中・弛緩区間の長尺化: 後半になると30秒~数分間の低集中状態が散見され、前半に比べて後半は低集中状態でいる時間が長くなっていることから、徐々に高集中状態への切り替えが難しくなる傾向が見られました。
この結果は、長時間の巡回業務が人間の集中力に負担をかける可能性を示しています。

(2) 「MEGURU」を使用した場合:集中力の維持とメリハリのある巡回
一方、「MEGURU」を使用して巡回した場合の脳波データからは、以下の傾向が見られました。
- 高集中域を安定して維持: 全体平均でEI≧0.50の高集中状態が60~75%を占めており、巡回の前半と後半を比較した場合の平均集中指数の差は±0.05程度と、統計的に有意な低下は認められませんでした。
- 適切な集中と緩和の切り替え: 集中指数EI 1.0~2.0のスパイクが断続的に発生する間は、EI 0.30~0.45の中集中帯に短時間入るなど、高集中と低集中のジグザグが5~15秒周期で繰り返され、「メリハリのある注意状態」が巡回全体を通じて適切に維持されていることが確認されました。
- 低集中の連続化を抑制: 集中指数EI<0.30が1分以上続くケースは稀で、連続しても数十秒で回復しており、低集中率は全体の5〜15%程度にとどまっています。
この結果は、「MEGURU」が巡回者に新規車両と既存車両の区別を通知することで、集中すべきポイントと力を抜けるポイントを明確にし、集中力の維持と効率的な業務遂行に貢献していることを示しています。

4. 今後の展望
本実証実験により、巡回時間が10~15分を超えると高い集中力の維持が困難になることや、「MEGURU」が駐車場巡回業務における集中力維持に有効であることが定量的に確認できました。これは、巡回業務の安全性向上、見落としリスクの低減、そして巡回担当者の負担軽減に支援ツールの導入が効果的であることを示唆しています。
株式会社想画は、この実証結果を基に「MEGURU」のさらなる機能強化を進め、駐車場巡回業務の業務効率化と安全確保に貢献してまいります。また、今回の脳波計測技術の応用により、様々な現場業務における人間の集中力や疲労度を可視化し、より安全で働きやすい環境づくりに寄与するソリューション開発にも取り組んでまいります。
※個別の脳波計測結果等の詳細は、後日、ホワイトペーパーとして公開を計画しております。ご興味・ご質問等がございましたら、問い合わせフォームへお寄せくださいませ。
株式会社想画について
株式会社想画は、「現場の課題をテクノロジーで解決する」をミッションに掲げ、駐車場巡回支援システム「MEGURU」の開発・販売を通じて、駐車場管理業界のDXを推進しています。
ウェブサイト:https://www.sohga.jp/
MEGURU製品情報:https://meguru.run/
株式会社CyberneXについて
株式会社CyberneXは、「脳情報を日常に開放する」ことを目指し、脳情報技術の社会実装に挑み続ける会社です。耳装着型脳波デバイス「XHOLOS Ear Brain Interface」は、その最先端技術の結晶です。
ウェブサイト:https://www.cybernex.co.jp/
XHOLOS製品情報:https://www.cybernex.co.jp/technology
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