消費者の健康志向が加速するアジア太平洋地域―高まる健康食品への需要と栄養ラベル表示の重要性
【東京】英国の市場調査会社ユーロモニターインターナショナル(以下、当社)は、消費者調査「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:健康・栄養サーベイ」(21か国、各国約1,000名を対象に毎年実施)等を基に、アジア太平洋地域の飲食料業界におけるトレンドと同地域進出企業へのアドバイスを発表しました。
- アジア太平洋地域では、過去数年で食事に気を遣う人が増加し、便利でリーズブルな健康食品が求められている
- 同地域では『ベジタリアン』『高タンパク質』の強調表示が成長見込み
- 東南アジアでも政府規制による栄養ラベル表示が広がり、消費者の二人に一人が栄養ラベルを注意深く読んでいる
アジア太平洋地域でも高まる健康志向
今日、世界中のあらゆる世代の消費者が、できるだけ健康的に長生きすることを目標に、食生活や運動を意識して生活をするというトレンドが広まっています。アジア太平洋地域も例外でなく、当社が実施した「健康・栄養サーベイ」によると、コロナ禍を経て、同地域の消費者の健康意識が高まり、食生活に変化が見られたことが判明しました。アジア太平洋地域の消費者で、「現在の自分の食習慣は『極めて健康的』または『健康的』である」と答えた人の割合は、5年間で6ポイント上昇しました。また、「少なくとも週に一度はプラントベースの乳製品代替品を摂取する」と答えた人の割合は、2年間で4.1ポイント上昇し、「特定の食事制限をしていない」と答えた人の割合も5年間で4.4ポイント減少するなど、食事に気を付ける人の割合が増えていることがわかります。
他方、食生活を改善する上で妨げになっていることに関して尋ねたところ、「お金がかかりすぎる」「料理する時間がとれない」「料理が上手くできない」「不健康な商品の方が便利」といった回答が上位を占めるなど、リーズナブルかつ便利な健康食品が理想とされていることがわかりました。
成長が見込まれる『ミネラル』『ビタミン』『無糖』の他、『ベジタリアン』『高タンパク質』の強調表示
以下のグラフは、アジア太平洋地域の飲食料品について、健康に関する強調表示ごとの市場規模の変化(2023年から2028年)を表したものです。アジアでは、健康に関する強調表示のうちトップ3である『ミネラル』『ビタミン』『無糖』の他、今後、『ベジタリアン』や『高タンパク質』といった強調表示が高い年平均成長率(CAGR)で増加する見込みです。
アジア太平洋地域最大のソフト飲料市場である中国では、2022年から2029年にかけて、無糖・低糖製品がソフト飲料市場全体(※)に占める割合が13.6%から26.8%にまで拡大する見込みです。同国では、無糖・低糖ソフト飲料以外にも、スポーツ飲料や、栄養価が高いことで知られるココナッツ飲料市場も、2023年から2024年にかけて大きく成長、今後も拡大が見込まれています。
※RTD茶、エナジー飲料、スポーツ飲料、炭酸飲料
東南アジアでも広まる栄養ラベル表示
東南アジア諸国においても、可処分所得の増加や健康生活を推進するための政府による規制を背景に、健康意識の高まりが見られます。
例えば、シンガポールでは、以前は小売販売されるソフト飲料のみに適用されていた脂肪分と糖分に関する栄養等級表示制度の適用が、外食産業における飲料にも拡大されました。更に同国政府は現在、この表示を食品(加工食品及び外食産業)に拡大し、塩分含有量の表示をも追加することで、糖分、脂肪分、塩分含有量に関する消費者の意識を高め、人々がより健康的な選択がすることを促す政策を策定しています。また、ベトナムでは、2026年1月1日から、加工食品・ソフト飲料に含まれる飽和脂肪の含有量表示が義務付けられる予定です。
栄養ラベルについて、当社でアジア太平洋地域の飲食料市場を調査している松永芽恵コンサルタントは以下のように述べています:
「忙しい現代の消費者は、自分が手にする商品について調べる時間を短縮したいと思っており、栄養ラベルは、まさに消費者が求める「栄養素の透明性」をわかりやすい形で提供するものだ。例えばヨーロッパでは、栄養スコア表示制度Nutri-Scoreが急速に拡大している。栄養ラベルは、商品に含まれる栄養素をアルファベットと色でスコア化するものであり、商品パッケージや、ECサイトの商品ページに表示されている。健康的な食生活を目指し、かつ商品選択の時間を短縮したい消費者はこのコンセプトを、自身の判断をサポートするものとして受け入れている。」
2024年に実施されたライフスタイルサーベイによると、東南アジア主要6か国の消費者のうち、58%が飲食料品には健康的な原材料を求めており、47%が栄養ラベルを注意深く読むと答えています。また、消費者のうち2人に1人が健康的な原材料のためであればお金を多く払っても良いと回答しています。
アジア太平洋地域市場におけるビジネス拡大、市場参入に関心のある企業へのメッセージとして、松永は、
「消費者は食の安全に強い関心を寄せており、この傾向は、特に中国・東南アジアで顕著である。これら市場の消費者は、商品購入において慎重になる傾向があり、栄養成分表示の確認だけでなく、製造メーカーやブランドのバックグラウンドや、原料リストに記載されている素材についてリサーチを行うことが珍しくない。食の安全意識が高い消費者にとって、知りたい正確な情報をその瞬間に得られることは極めて重要だ。特に、日本国外における現地のローカルブランドとの競争において、知名度で差がある状況では、現地の消費者の認知度を上げるだけでなく、きめ細やかな情報提供で、ブランドや商品について現地の消費者に良く知ってもらう必要があるだろう。商品パッケージやソーシャルメディアのアカウント上で、商品に関する説明やブランドの歴史や背景について、また、機能性商品においては、「何が、なぜ、何に良いのか」を明記することで、消費者に安心感を与え、商品購入へのハードルを下げることができるだろう。」と述べています。
– 以上 –
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ユーロモニターインターナショナル 広報担当
花﨑 真夕(はなざき まゆ)
Tel: 03-3436-2100 mayu.hanazaki@euromonitor.com
ユーロモニターインターナショナルについて
ユーロモニターインターナショナルは、英国ロンドンに本社を置くグローバル市場調査会社です。世界16か国にオフィスを構え、100か国に現地アナリストを配置し、市場分析レポートや最大世界210か国を網羅するデータベース、そしてカスタマイズ化されたコンサルティング調査をもって、企業の皆様の、いつ、どこで、どのようにビジネスを成長させるべきかという意思決定のお手伝いをしています。戦術的(Tactical)かつ戦略的(Strategic)である当社の調査ソリューションは、最新のデータ分析技術を利用、都市圏単位からグローバル市場までをカバーし、世界市場の様々なトレンド・成長要因に関する情報を提供することで、事業における優先順位の見極めや仮説の見直し、潜在的なビジネス機会の発見にお役立ていただけます。
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