新刊書籍『はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学』好評発売中!

福村出版株式会社

2022.12.16 15:00

「フォートナイト」の開発に携わった心理学の専門家が、ゲームのおもしろさの秘密をやさしく語る!

福村出版株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:宮下基幸)は、12月13日(火)に新刊書籍『はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学』を刊行いたしました。ゲーム(ビデオゲーム)のおもしろさを心理学の専門家がやさしく解説する、日本ではじめての書籍です。これからゲーム研究・開発を始めようという大学生・専門学校生、よりおもしろいゲームの開発を志す開発者の方々に、心理学・認知科学の見地に立った有益なヒントを提供します。

 

■概要
書名:はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学
著者:セリア・ホデント(ゲーム開発コンサルタント)
監訳者:山根信二(東京国際工科専門職大学)
訳者:成田啓行
発行所:福村出版株式会社
定価:本体2,200円+税(税込2,420円)
発売日:2022年12月13日(火)
読者対象:ゲームに関心をもつ大学生・専門学校生・開発者
ISBN:978-4-571-21045-7

■内容
本書では、まず第1章で著者が自らの専門領域である認知心理学の知見をもとに、ゲームプレイ中にプレイヤーの脳内で何が起こっているのかを明らかにします。
第2章では、よりよいゲームを作るための方法論として著者が提唱するUX(ユーザー体験/ユーザーエクスペリエンス)の考え方を紹介しています。
第3章・第4章では、豊富な事例を用いてゲームプレイがユーザーにもたらす正の効果・負の効果を検証します。
最終の第5章では、ダークパターンやアテンションエコノミーを取り上げ、ゲーム開発者に求められる倫理について論じます。

■著者紹介
著者のセリア・ホデントは「フォートナイト」のUX開発、またゲームUXサミットのチェアパーソンとして知られる著名な独立ゲーム開発コンサルタントです。パリ第5大学において心理学の博士号を取得し、認知心理学の知見を活かしてユービーアイソフト、ルーカスアーツ、エピックゲームズなどの有力ゲームメーカーで「アサシン クリード」「スター・ウォーズ」「フォートナイト」といった人気ゲームの開発に携わってきました。著書に『ゲーマーズブレイン──UXと神経科学におけるゲームデザインの原則』(ボーンデジタル)があります。

■目次
日本の読者のみなさんへ
はじめに
謝辞
第1章 ビデオゲームと人間の脳
  知覚
  記憶
  注意
  動機づけ
  情動
  この章のまとめ:脳はどのように機能しているのか
第2章 ゲームユーザー体験
  ヒューマンファクターと人間工学
  UXマインドセット
  ゲームユーザー体験:ゲーム制作を支える心理学
  ユーザビリティ
  エンゲージアビリティ
  動機づけ
  情動
  ゲームフロー
  問題解決のための科学的アプローチ
  この章のまとめ:ゲームUX
第3章 ビデオゲームをすることは有益か?
  ゲームプレイの利益
  視覚機能と認知機能
  教育用のビデオゲーム
  健康と幸福
  ソーシャルスキルと社会的な影響
  この章のまとめ:ビデオゲームのメリット
第4章 ビデオゲームをすることは有害か?
  ビデオゲームと暴力
  学校の成績
  過度の病的なゲーム行動
  睡眠
  反社会的行為
  この章のまとめ:ビデオゲームの悪影響
第5章 ビデオゲーム業界の倫理
  ダークパターン
  アテンションエコノミー
  ゲームのコンテンツ
  この章のまとめ:ゲーム業界の倫理
おわりに
本書で引用した文献
日本語版解説(山根信二)

■本文冒頭部立ち読み

第1章 ビデオゲームと人間の脳

 ビデオゲームで遊ぶ、映画を観賞する、人の話を聞く、仕事をする、本を読むなど、私たちはそうした日常の活動をすべて心の中で体験しています。この「心」という言葉は、脳(と体)のはたらきから生まれる、注意や記憶などの精神過程を指しています。したがって、ゲームをおもしろくする要素を心理学的に理解するには、第一に脳のはたらきについて考える必要があります。厳密に言えば、心と脳は完全に同じではないのですが、この本ではその細かな違いを扱わないので、「脳」と「心」を互いに置き換え可能な言葉として使います。
 まず前提となるのは、脳はきわめて複雑で、未解明の部分が多く残っているということです。以降では、人間の脳について現時点でわかっている内容の一部を簡略化して説明します。
 心を対象とする科学研究は「認知科学」と呼ばれ、心理学や神経科学、コンピューターサイエンスなどの分野に分かれています。認知科学の研究が進んだおかげで、脳が情報を処理して学習する過程を全体的に把握することができるようになりました。図1.1は、その内容を非常に簡単に表現したイラストです。
 実際には、個々の精神機能が独立しているわけではありませんが、この図を見れば、人が情報を処理するときに脳内で起きていることを大まかに把握できます。この「処理」は通常、私たちがさまざまな感覚を通じて、環境からの刺激(入力)を知覚することから始まります。そして、脳内でシナプス(ニューロン間の接合部)に関する変化が起きて(たとえば新しいシナプスが形成されて)、記憶が変容することで終わります。
 つまりビデオゲームをすると、脳内で「配線がつなぎ直される」のです。ただし、これはどんな日常活動でも同じで、この説明を読んでいるときにも起きています。なぜなら、脳の配線は最初の位置で固定されておらず、順応性があるからです。脳は絶えず変化する環境を知覚し、環境との間で相互に作用しながら、その結果に基づいて自己調整を加えるというわけです。こうした「脳の可塑性」は、私たちの適応と生存を可能にします。
 知覚から記憶までの過程では、複雑な処理が行われ、多くの要因による影響を受けます。なによりもまず、注意のレベルは情報処理の質、ひいては学習の質に大きく影響します。たとえば、会議中に同僚が緊急のメッセージを送ってきて話に集中できない場合は、しっかりと話者に注意を向けて聞く場合に比べて、理解度が低下するでしょう。またこの注意も、動機づけや情動の影響を受けます。情報処理に影響する要因はほかにもありますが、以下ではこれまでに挙げた要因について説明します。
 それでは、知覚、記憶、注意、動機づけ、情動をそれぞれ簡潔に説明し、脳が情報をどのように処理しているかを大まかに示して、その主な限界をみていきます。説明の都合上、ひとつずつ順番に取り上げますが、これらは個別に交替で機能するわけではありません。そもそも、脳はコンピューターのように情報を「処理」したりしません。脳はコンピューターではないからです。
 このあとの説明ではコンピューター関連の用語をいくつも使いますが、それは身近な言葉で脳の機能を理解するのに便利だからです。本当のところを言えば、脳は生きている器官であり、複雑すぎて完璧には理解できません。皮肉にも、私たちの脳は自身の複雑さを完全に理解できるほど優れてはいないのです……。でもまあ、それはそれとして進めていきましょう。

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