プライスレスな子犬たち 日本人と犬(4)
犬張子
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張子は、竹や木で組んだ枠や粘土で型どった土台に、紙などを貼りつけた人形で、中が空洞になっていることから、はりぼてとも呼ばれるものです。
張子の技法は、室町時代に中国から日本に伝えられたと言われます。張子に貼る紙を、混擬紙(こんくりかみ)と呼びます。
動物の張子には、犬や虎、牛などをかたどったものがありますが、魔よけ、無病息災、安産祈願、子どもの健やかな成長を願うといった、縁起物になっています。
犬は、忠義、知性の象徴、あるいは、子どもそのものを表していると考えられました。
犬を祭るというのは、平安時代に、宮中で厄払いとして狛犬(こまいぬ)を置いたことが始まりと言われています。
室町時代に入ると、上流社会では、産室に、天児(あまがつ)、這子(ほうこ)などの祓人形とともに、「筥犬」(はこいぬ)という張子の犬を飾るという風習が起こりました。筥犬は、顔は幼児、体は犬に似せて作ってあったそうです。
犬は出産が軽く、子の成長が良いということにちなんだもので、人間の子どもが生まれると、まず産着を筥犬に着せ、それから子どもに着せて、魔よけのおまじないにしたと言われています。
また、犬箱と呼ばれる張子の入れ物にお守りを入れて、嫁入りする娘に持たせる風習も生まれました。雌雄が対になったもので、「御伽犬」(おとぎいぬ)とも呼ばれ、ひな祭りのひな壇にも飾られたそうです。
犬張子は、古くは座った姿でしたが、江戸時代の半ばからは、四つ足で立った姿になりました。「東犬」(あずまいぬ)とも呼ばれました。
犬張子は、郷土玩具として、江戸時代に広まり、江戸末期には、縁起物として丸みを帯びた形になったと言われています。
明治から昭和にかけては、初宮参りのお祝いとして、親戚から送られるようになりました。犬は多産で安産と考えられていたので、犬張子は、安産祈願や出産祝い、子どもの健康祈願のお守りとして、贈られるようになったのです。
犬張子を竹篭(たけかご)に入れるのは、縁起かつぎで、犬+竹で「笑」という字になるからです。いつも笑いの絶えない、明るい子に育って欲しいという願いが込められているそうです。よく泣く子の疳の虫にも効くとか。
竹で作ったザルを被った犬張子があります。ザルは、水を良く通すことから、子どもの鼻づまりにご利益があるとされています。
でんでん太鼓を背負った犬張子もあります。
でんでん太鼓には裏表がないので、「うらおもてのない正直な子」に育って欲しいという願いが込められています。太鼓のバチとして、昔は、紐で結ばれた豆が使われていました。豆には、「まめまめしく」という意味が、そして、紐に使われた麻は、まっすぐ伸びるので、スクスク育つようにという願いが込められたと言われています。
また、犬張子は厄年の厄落としにも使われました。
節分の晩に厄落としのために氏神などの参詣する途中で、犬張子のなかに古い櫛などを入れて、道端にわざと捨てるのです。節分は、立春の前夜、新たな生活が始まる節目なので、そのときに、日常の穢れを犬張子とともに捨てるというものでした。節分の豆撒きにも、鬼払いの他に、豆と一緒に穢れを捨てるという意味があります。
(参考資料 「郷土玩具辞典」 斉藤良輔編)
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