動物のなかには、人間が知っている感覚を越えた知覚能力をもつものがまちがいなくいることが報告されています。飼い主がいつ家路についたかがわかる犬、好きな人からの電話が呼び出し音でわかるネコ、飼い主のてんかんの発作を警告する犬など、人間とペットを結ぶ不思議な力についての実例がたくさん報告されています。

そんな不思議な力、テレパシーとか、方向感覚、予感といったものは第六感、第七感である超感覚的知覚（ESP）の代表例だと捉えられています。そして、その力はその人とペットとのきずなが深いほど強くなると考えられています。

米国のフィラデルフィアで、ネコを飼うことで高齢者にどのような変化が生じるかを調べる実験が行なわれました。その後の調査では、ネコを引き取った人達は、引き取らなかった人達と比べて、孤独、不安、憂鬱を感じる率が低いという結果が出ました。また、ネコには、高血圧者の血圧を下げ、服薬量を減らすという効果も認められたのです高齢者とネコとの間のきずなが強いほど効果が高く、気の合ったネコは一緒にいて楽しく、いい話し相手になり、愛情が湧いて、日々の悩みや憂さを忘れさせてくれるのです。

ペンシルヴェニア大学の研究者は、心臓発作などの心臓病で入院したペットの所有者の群の方が、ペットを持っていない人達よりも、入院１年後の生存率が高いという報告をしました。家にペットがいることは、配偶者や家族の支えがあることよりも生存率の向上にずっと大きな貢献をしているのです。

１９９０年に英国のケンブリッジ大学のコンパニオン・アニマル研究グループは、健康面、経済面での差がほとんどない人たちを対象に、犬や猫といった動物を飼っているグループと動物を飼っていないグループに分けて、１０ヶ月にわたって調査しました。そして、犬、猫を飼っているグループでは、頭痛や腰痛、かぜといった軽い病気が、飼っていないグループより少ないことがわかったのです。理由のひとつが、動物たちのために良い環境を整えようとすることが、人間にとっても健康的な環境作りにつながったからではないかというものです。

ペットは家族の誰かを喪った人の精神的な支えにもなります。配偶者に先立たれて間もない人々を対象にした研究では、ペットの所有者は憂鬱になったり、絶望や孤独にさいなまれることがずっと少ないことが分かったのです。また、健康状態もおおむね良好で、服薬も少なくてすむという結果でした。飼い犬は親戚や友人よりも慰めになっていると答えた人もいました。また、飼っている動物たちに必要とされ、愛され、敬われているという意識を持つことが、飼い主の自信や自尊心を高めて、生きるはりあいや気力が起こって、飼い主の精神的な健康につながったためとも分析されています。

●うつ病患者と犬

ただし、うつ病患者には、ペットが負担になるということが報告されています。うつ病の患者を何とか明るくしようと考えた家族が、犬の面倒をみさせれば、気力を取り戻すきっかけになるかもしれないと子犬を買ってきました。しかし、患者の状態は、良くなるどころか悪化してしまったのです。うつ病には、何もできない、何もさせてはいけない時期があって、気分転換にと動物の世話をさせることが、症状の悪化につながったからです。子犬の世話から開放したところ、患者の精神状態は安定しました。

●主人のてんかん発作がわかる犬

１９９３年「獣医学レコード」にアンドリュー・エドニー博士が、てんかん発作を持っている飼い主に飼われている、何らかの訓練を受けたことがない普通の飼い犬３７３頭の調査結果を発表しました。２１匹の犬が、飼い主のてんかんの発作の前に不安がる様子を見せたというものでした。てんかんの患者の中には、発作が起こる前に、手足がチクチクする、特別なにおいを感じるといった自覚症状がある人がいるそうです。これらの症状は、てんかん発作が起こるときの脳細胞の電気的な興奮によるものと説明されています。 しかし、犬が、飼い主のてんかんの兆候を察知する理由については、飼い主の行動によるものなのか、あるいは、何らかのにおいからくるものなのか、わかっていません 。

●赤ん坊の命を救ったシェパード

赤ちゃんのティファニー・バーンは、眠っている間に呼吸が止まる「無呼吸障害」を持っていました。その障害は、乳児の突然死の原因にもなっていますが、母親のジョアンはその事実を知りませんでした。ティファニーが生後９日目を迎えた日のこと、ジャーマン・シェパードのピーターが、ジョアンの部屋にとびこんできて、ティファニーに異変が起きていることを知らせたのです。 ジョアンは、窒息状態で顔が真っ青になっているティファニーを見つけて、間一髪で命を救うことができました。 同じことが９ヶ月後にも起こり、その時もシェパードのピーターが赤ん坊の異変を知らせてくれ、２度目も命を救ってくれたのです。