ペットケア、国内市場は鈍化、アジア市場は力強い成長

ユーロモニターインターナショナル

2024.07.09 10:50

  • 国内ペットケア市場の向こう5年間の年平均成長率は9%と鈍化
  • ペットケア主要国では購買力は上昇中。アジア地域ペットケア市場も、ペット数増加、経済成長、健康志向やプレミアム化等に支えられ、向こう5年間は世界平均を上回る6%の年平均成長率で拡大
  • 香港の犬猫一頭当たり支出額は、日本の5倍で世界一
  • 現時点で犬猫一頭当たり支出額が少ない途上国にもビジネスチャンスあり

成長の鈍化が見込まれる国内ペットケア市場

【東京】英国の市場調査会社ユーロモニターインターナショナル(以下、当社)は、国内外のペットケア市場*の最新の調査結果を発表しました。それによると、2023年に世界8位であった日本のペットケア市場は、前年比7.2%増**の8,107億円に成長、2018年から年平均成長率4.5%で拡大を続けているものの、向こう5年間(2024年~2029年)の年平均成長率は0.9%と、成長は鈍化する見込みです。

ペットケア市場の大部分を占める、ペットフードの成長を数量ベースで支える鍵となる国内ペット飼育頭数については、2023年、減少を続ける犬の飼育数が700万匹を切った一方、上下しながら拡大を続けてきた猫の飼育数は、900万匹を突破しました。猫の飼育数は増加をしているものの、将来の日本国内人口や世帯数の急速な増加は見込めないため、メーカー各社はペットフードの数量ベースの成長ではなく、プレミアム商品や商品単価が高くても選ばれる商品の開発に引き続き注力するとみられます。

ペットケア主要国のペットオーナーの購買力は上昇中、円安も追い風に海外進出を

ペットケア市場主要国における可処分所得の中央値とペットフード単価推移を比較してみると、日本国内の所得の上昇は限定的でありながら、ペットフードの1㎏あたりの単価は上昇を続けています。対照的に、アメリカやブラジル、イギリス、中国やドイツといったペットケアの巨大市場においては可処分所得の中央値が2020年から2023年まで上昇していて、これらの国々のペットオーナーの購買力は、可処分所得の上昇がみられない日本よりも力強く向上していると言えます。

当社の松永芽恵コンサルタント(国内ペットケア市場担当)は、以下のように述べています:

「現在の日本のペットケア市場は、数量ベースでの成長が難しい中、プレミアム価格帯の成長に支えられて金額ベースでは好調に推移している。一方で、度重なる価格増により支出増に耐えられなくなったペットオーナーが価格の低い商品を選択する、トレードダウンが見られるようになると、プレミアム価格帯に支えられている現状の成長スタイルから、数量増も金額増も叶えられなくなる可能性がある。日本国内のペットケア企業にとって、商品輸出の強い追い風である円安を味方に、海外市場での売上確保を図る絶好のタイミングが来ていると言えるだろう。」

アジア市場は、世界平均を上回る力強い成長

2023年の世界のペットケア市場は約1,935億米ドルで、2018年~2023年の間、年平均成長率8.3%で成長しました。2024年~2029年の年平均成長率も3%で、世界的な飼育数の増加に加え、ペットフードのプレミアム化の進行、ペットテックやペットヘルスケアに見られるペットと飼い主を豊かにするイノベーションの登場などが寄与し、世界のペットケア市場は今後も安定的に拡大を続けると見込まれます。

地域別に見ると、アジア太平洋地域市場は2023年には約280億米ドルと、北米、西欧に次ぐ第3位でした。2024年~2029年の年平均成長率も、ラテンアメリカ(5.8%)、中東・アフリカ(4.6%)に次いで高く、世界平均(3%)より高い3.6%で拡大すると見込まれています。市場の成長を支える犬猫飼育頭数(2023年)は、アジア太平洋地域では約3億139万匹であり、世界の犬猫飼育頭数の約3分の1を占める最大の地域となっていて、今後5年間の年平均成長率も2.3%と世界平均1.8%を超えるペースでの増加が見込まれます。

国別で見た場合、中国は、過去10年間で市場が3.5倍に拡大し、年平均成長率16%での成長を続け、2017年には日本を抜いてアジア一位の巨大市場(2023年約127億ドル)となっています。※現在中国はペットフードの日本からの輸入規制を行っています。

その他、好調なアジア市場においては、特にインドやタイが、犬猫飼育等数の増加とそれに伴うペットフードの需要増に支えられ、それぞれ年平均成長率9.4%、8.7%で発展していく見込みです。また、飼育頭数増による需要増だけでなく、付加価値のあるペットフードが好まれるようになっています。特にタイの消費者は機能性に関心が高いこともあり、肌や毛並みに良い素材や、メンタルケアの機能をもった素材を使ったペットフードブランドが登場しています。

犬猫一頭あたりの支出額の少ない途上国にもビジネスチャンスあり

アジア太平洋地域の犬猫一頭当たりの年間フード支出額を見ると、香港がアジア一(世界一)で1,289ドルと、日本の5倍の支出となっています。市場を牽引するキャットフードでは、単価の高いウェット(キャットフード全体の47%)がドライ(41%)より市場規模が大きく、日本を含む多くの国の市場と比率が逆転している、プレミアム市場となっています。

他方、インドネシア、フィリピン、ベトナムといった国々では、犬猫一頭当たりの年間支出額が2桁ドルを超えていません。これに関し、当社シニアコンサルタントのサヒバ・プリは、「発展途上国・地域国々の経済が拡大し、生活水準が向上するにつれて、ペット支出は徐々に増加すると予想されるため、ペットケア市場は急速な発展を遂げ、関連企業にとって大きなビジネスチャンスとなる。」と述べた上で、「アジア太平洋地域のペットケア市場は、残飯を与えていた状態からやっと市販のペットフードに移行するペットオーナーから、プレミアムペット商品に貪欲なペットオーナーまで、消費者の洗練度や価格感度は多様で、様々な価格帯にビジネスチャンスがある。アジア太平洋地域に注力するブランドは、同地域の消費者の習慣や嗜好、主要販売チャネルを理解し、現地に適応した商品を提供する必要がある。」と述べています。

*ペットケア市場:ペットフードとペット用品。保険、トリミング、ペットホテル等のサービスや処方箋が必要な薬、生体の販売金額は含まない。

**本プレスリリースでは、過去については名目、未来についてはインフレ率を考慮しない実質の数値を使用。

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