ゲームが変える「教育」と「社会」の未来──新刊書籍『シリアスゲームの社会的受容を問う』発売!

福村出版株式会社

2024.02.07 13:00

「シリアスゲーム(役立つゲーム)」の可能性と課題をデジタル/アナログの両面から検証。「遊び」と「学び」の両立を探る!

福村出版株式会社(東京都文京区、代表取締役社長:宮下基幸)は、2024年2月9日(金)に新刊書籍『シリアスゲームの社会的受容を問う──韓国の事例にみる「ゲーム」と「教育」の社会文化的研究』(シン・ジュヒョン著、定価:本体4,400円+税)を発売します。この本は、シリアスゲーム(社会的に役立つゲーム)が教育や社会に与える影響や可能性を、韓国の事例を通して分析するものです。シリアスゲームの歴史や特徴、利点や課題、展望や未来について、人文社会学的な視点から検討しています。ゲームに興味のある方はもちろん、教育や社会問題に関心のある方にもおすすめの一冊です。全国の書店・オンライン書店にてお求めいただけます。

近年、教育や医療、啓発活動などの分野で、ゲームの力を活用する「シリアスゲーム」が注目を集めています。

シリアスゲームは、遊びながら学ぶことができるだけでなく、社会的な認識や行動を変えることもできるゲームを指します。「遊びながら外国語を学べる」「ゲームで脳トレ」「運動するとRPGのレベルアップ」……など、シリアスゲームはすでに私たちの身近にも普及してきています。

本書『シリアスゲームの社会的受容を問う』は、日本とよく似た世論があり、政策レベルでシリアスゲームの振興と規制が併存してきた韓国の事例をもとに、シリアスゲームの歴史的展開、成功例と失敗例、教育的価値、リアリティの再現などについて、新進気鋭のゲーム研究者が人文社会学的な視点から分析しています。シリアスゲームに関する最新の研究成果を紹介するとともに、日本の現状にもつながる新しいメディアとしての可能性を提示します。

本書は次のような疑問に応えます:

  • シリアスゲームの定義や歴史、分類に関する基礎知識
  • シリアスゲームの開発と普及に関わる政策や市場の状況
  • シリアスゲームの社会的受容やプレイの場所性に関する考察
  • シリアスゲームのおもしろさや教育的イメージに関する分析
  • アナログとデジタルの融合によるシリアスゲームの新たな可能性
  • インスピレーション・ゲームという社会的反響を追求するシリアスゲームの事例

ゲームに興味のある方はもちろん、教育や社会問題に関心のある方にもおすすめの一冊です。

 

【推薦文】

「『まじめ』で『おもしろい』ゲームのためのヒント!  これからの未来を切りひらくシリアスゲームの底力を」
──小川さやか(立命館大学先端総合学術研究科教授)

「遊びと学びの関係を、そして社会を 次のステージへ進めるためのヒントがここにある」
──山本貴光(作家・東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授)

 

【概要】

書名:シリアスゲームの社会的受容を問う
副題:韓国の事例にみる「ゲーム」と「教育」の社会文化的研究
著者:シン・ジュヒョン(立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員)
発行所:福村出版株式会社
定価:本体4,400円+税(税込4,840円)
発売日:2024年2月9日(金)
読者対象:シリアスゲーム(デジタルゲーム、ボードゲーム、拡張現実ゲーム等)に関心をもつゲーム開発者、ゲーム研究者、自治体・公共団体等担当者
ISBN:978-4-571-41076-5

 

【著者】

シン・ジュヒョン(SHIN Juhyung)
立命館大学衣笠総合研究機構専門研究員。韓国ソウル生まれ。2020年9月、立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程修了。博士(学術)。専門はゲーム研究、地域研究。社会文化的観点から、シリアスゲーム、ゲームをプレイする「場」やインディーゲームについて研究している。科学技術融合振興財団 第10回FOST新人賞、日本デジタルゲーム学会 2021年度若手奨励賞受賞。

 

【目次】

序 章
 0.1 シリアスゲームとは何か
 0.2 シリアスゲームの社会的普及に関わる論点
 0.3 本書の視座と構成

第Ⅰ部
 第1章 韓国におけるシリアスゲームの導入と展開
  1.1 韓国における教育システムと「ゲーム」に対する否定的認識
  1.2 デジタル・シリアスゲームの歴史的展開
  1.3 アナログ・シリアスゲームの歴史的展開
  1.4 デジタルとアナログの横断
  1.5 考察とまとめ
 第2章 シリアスゲームの社会的受容とゲームプレイの「場所性」
  2.1 韓国における「房」文化とゲームプレイの「場」
  2.2 ゲームプレイの「場」の特徴
  2.3 房の場所性再考
  2.4 考察とまとめ――場所性とゲームに対する社会的イメージ

第Ⅱ部
 第3章 機能性ゲームのジレンマ――「シリアス」と「おもしろさ」のはざまで
  3.1 『ハンジャマル』と『スターストーン』――ゲームの教育的効果をめぐる議論
  3.2 機能性ゲームの商業的な成功例と失敗例
  3.3 ゲームにおけるおもしろさの「深み」と社会的受容のジレンマ
  3.4 小括
 第4章 アナログ・シリアスゲームの教育現場への普及と「教育的イメージ」
  4.1 機能性ボードゲームの教育活用――「アナログ・シリアスゲーム・インストラクター養成コース」を中心に
  4.2 インストラクター養成コースへの参加動機と参加者による「教育的イメージ」
  4.3 ボードゲーム研究コミュニティの発展
  4.4 アナログ・シリアスゲームの教育的価値をめぐるズレ
  4.5 小括

第Ⅲ部
 第5章 ビッグゲーム(Big Games)――アナログとデジタルの強みを架橋して
  5.1 ビッグゲームとは何か――現実の場所のシリアスゲーム化
  5.2 ビッグゲームにおける場所性の拡張とリアリティの再現
  5.3 小括
 第6章 インスピレーション・ゲーム(Inspiration Games)が世界を変える
  6.1 インスピレーション・ゲーム――社会的反響を追求して
  6.2 「インスピレーション・ゲーム」におけるリアリティの再現
  6.3 リアリティの再現性と「現実」との距離
  6.4 考察とまとめ

終 章
 7.1 総括
 7.2 シリアスゲームの行方と今後の可能性
 7.3 まだ終わらない話

 

【試し読み】

序章

 モンスターを倒しながら、漢字を学ぶ。ゲームのアイテムを探しながら、科学の記号を覚えていく。学校のいじめ問題をゲームの中でも体験しながら考える。障害者に対するアクセシビリティの問題のアイデアをゲームの中で出し合う。アプリで出された問題を解くために実際の史跡を訪ね歩く。本書の目的は、このような教育に活用されるシリアスゲームが私たち自身のゲームや学びに対する理解をどのように掘り起こし、私たちの未来にどのような可能性を持ちうるかを展望することである。序章ではまず、シリアスゲームとはどのようなものであるかについて考えてみたい。その後、本書における主な論点について述べる。


0.1 シリアスゲームとは何か
 近年、テクノロジーの発展や教育パラダイムの転換に伴い、「シリアスゲーム」と総称される、教育、訓練、治療、啓蒙などの目的を持つゲームの可能性に注目が集まるようになった。現在では、教育や医療から異文化交流や環境運動まで幅広い分野で、シリアスゲームの開発がなされている。とくに教育的利用に対する期待は大きく、その教育的効果を実証する研究が数多く展開してきた(Gee 2003, 2005; Klimmt 2009; Squire and Jenkins 2003; Prensky 2001; Ritterfeld and Weber 2005)。
 シリアスゲームは、アメリカやスウェーデン、ノルウェーなどの欧米諸国で開発と研究が進んでいる。これに対して日本、韓国、中国などの東アジアでは、エンターテインメント系のゲーム産業が非常に盛んで、シリアスゲームの開発も進んでいるにもかかわらず、シリアスゲームに関わる研究は立ち遅れてきた。
 そんな中、韓国ではとくにシリアスゲームに対する関心が高く、2006 年には世界で最も早く、ゲームに特化した法律「ゲーム産業振興法」も制定された。シリアスゲームは教育分野を中心に制作され、現在までのところ、シリアスゲームに関する研究も教育分野、とくに英語、数学、科学、社会といった教科科目での活用とその効果を示した研究がなされてきた(Lee 2013)。しかし多様なシリアスゲームが開発されているものの、その大半は教育分野等への導入段階にとどまっている。また研究自体も単発的な効果検証実験にとどまる結果になっている。実際、商業的に成功した事例を探すことは難しく、リリース後に長らく継続しているシリアスゲームは数少ない。
 韓国におけるシリアスゲームのこうした現状の背景には、政府がゲームをあらゆる分野で活用することを企図したゲーム振興策を取ってきたのに対して、他方にはゲーム依存などの問題を指摘してゲームの規制を求める声があり、そうした両者の議論が並存してきたことが挙げられる。韓国ではデジタルゲームに対する否定的な見方が根深く存在しており、シリアスゲームが教育などに応用されることを懸念する声も大きいのである。
 ゲーム研究は、学際的な研究分野であるといわれる。コンピューター工学だけではなく、人文学や社会学、人類学、教育学、メディア研究など多様な分野の学問から、ゲーム研究にアプローチすることが可能である(Aarseth 2001; Newman 2004; Mayra 2008)。そのような人文社会学的な観点からのゲーム研究分野は「ゲームスタディーズ」(Game Studies)と呼ばれている。シリアスゲーム研究も同様に学際的な研究分野である。日本におけるシリアスゲーム研究の第一人者である藤本徹は、シリアスゲーム研究が「間学問的研究」であることを強調し、シリアスゲームは今後、多様な分野から研究されていくだろうと予見した(藤本 2007)。藤本によれば、教育目的のゲームの開発や研究は以前から個別の分野で行われてきたのに対し、リハビリなど教育のみに限らない多様な目的を持つシリアスゲームの登場によって、多様な学問分野の交流が可能になり、学際的な研究が促進されたという(藤本 2007: 19)。
 しかしながら、現実には東アジア地域におけるシリアスゲーム研究の主流は具体的なゲーム開発の分野において展開されており、上述したとおり、人文学的な研究は圧倒的に不足している。シリアスゲームの効果や機能を強調する研究が多くを占めており、形式的にも内容的にも変化を遂げているシリアスゲームの社会文化的背景は考慮されていない。それら研究の多くはシリアスゲームに関する実践的な応用研究にとどまっているのである。
 以下では、これまでシリアスゲームがどのようなものとして理解されてきたのかを検討する。それらの研究では「シリアスゲーム」という語の定義が常に問題となってきた。そこでまず、シリアスゲームという語が何を指し、その意味がどのように変遷してきたのかという点から議論を始めたい。
 前述したようにシリアスゲームという用語はアメリカの研究者であるアプトの『Serious Games』という著書で初めて提案された。アプトは「これらのゲームは明らかに慎重に考えられた教育目的を持ち、第一義的に娯楽のために
プレイされることを意図していないという意味においてシリアスゲームである」と述べた(Abt 1970=1987: 9)。これは現在に至るまでシリアスゲームをめぐる研究に大きな影響を与えたものであり、ゲームが教育的に活用できることを示す定義である。だが、提案当時の時代的背景もあり、現在のシリアスゲームの定義よりも、はるかに広義のものであった。
 他方、シリアスゲームという用語が一般的に広まるようになったのは、2002年にアメリカでシリアスゲームイニシアチブ(Serious Game Initiative)が発足してからのことである。
 ソーヤーとレジェスキの二人によって設立されたもので、設立者のひとりであるソーヤーは、シリアスゲームを「教育や訓練、保健、公共政策において使用されるゲーム」(Serious Games Initiative 2003)と定義していた。
 2002 年以降、ソーヤーのシリアスゲームの定義は広く普及し、多くの研究者やゲームデザイナーに共有されるようになった。その結果、「どのようなものがシリアスゲームなのか」をめぐる議論がはじまり、現在も続いている。(以下略)

 

【本文より】

 

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