専門家が解説「日本のタワマンは安全でも“万能ではない”」

株式会社さくら事務所

2025.11.28 10:00

香港火災を機に見直される、防火区画と住民側の備え

香港当局は27日午前、北部・新界地区大埔の高層住宅群で26日に起きた大規模火災で、死者が44人になったと発表しました。亡くなられた方々に、深く哀悼の意を表します。報道によれば、外壁工事で設置されていた足場やネットが燃え、延焼が拡大した可能性が指摘されています。個人向け総合不動産コンサルティング・ホームインスペクション(住宅診断)、マンション管理組合向けコンサルティングを行う“不動産の達人”株式会社さくら事務所(東京都渋谷区/社長:大西倫加)は、タワーマンション・内廊下型マンションを中心に、防火区画の不備や充電設備周辺のリスクが継続的に確認されており、管理組合が今すぐ見直すべき防火対策を整理しました。

日本のタワマンは安全、しかし使い方次第

■マンション管理コンサルタント・土屋輝之コメント

香港の火災の特徴は、外壁の修繕工事中であり竹製の仮設足場が使われていたこと。塗料の飛散防止や落下防止のためのネットに可燃性素材が使用われていたことが原因になったと考えられる。

日本のタワーマンションは、耐火構造・防火区画・防火扉・スプリンクラー・非常用エレベーター・連結送水管など、世界的にも厳しい防火基準のもとで建設されており、基本的には高い安全性を備えている。しかし、建物の性能だけで火災を防ぎきれるわけではない。実際の点検では、防火区画の貫通処理に隙間や未施工が確認されるケースも珍しくなく、こうしたわずかな不備が煙の広がりを早める可能性がある。また、防火扉を開け放したり、物を置いて扉を塞いだりすると、煙が階段室へ到達しやすくなり、避難行動が著しく困難となる。

さらに、火災時の区分鳴動方式の意味、避難開始の適切なタイミング、エレベーター停止など、マンション特有の作動を住民が十分理解していないケースも多い。住民の理解と行動は建物の防火性能と一体で機能するものであり、年1回の消防訓練には、面倒がらず必ず参加してほしい。

タワマン・内廊下型マンションの防火区画に“多数の不備”

当社が、アフターサービス点検(2年目・10年目)で多数のマンションを調査した結果、タワマンや内廊下型マンションで防火区画貫通処理に不備が見つかるケースが極めて多いことが明らかに。典型的な不備としては、耐火パテ・耐火シールの剥落、経年収縮による隙間、施工忘れ(貫通部がそのまま)、一見塞がっているようで実際は不十分な“見せかけ施工”など。防火区画は火や煙の侵入を遅らせる建物の生命線。不備があると、延焼・煙の到達が数分〜十数分早まる可能性がある。

管理組合が今すぐやるべき『3つの重要防火対策』

①火災感知能力を強化する(駐輪場・EV充電エリア)

熱感知器のみ → 煙感知器の追加で早期警報。バッテリー発火が増えている今、電動自転車・EVの充電スペースは特に注意。

②訓練を「通報 → 初期消火 → 避難」の実働型に変更

避難訓練だけでは不十分。消火器操作・屋内消火栓・エレベーター停止など設備の連動を誰もがわかるように周知。

③防火区画貫通処理の点検

経年10年以内でも劣化例が多数のため、天井裏・玄関まわりの貫通部を点検し、長期修繕計画に点検項目を追加することが重要。

 

「アフターサービス活用のための第三者共用部診断」の詳細はこちら

 

さくら事務所について https://www.sakurajimusyo.com/ 

株式会社さくら事務所は「人と不動産のより幸せな関係を追求し、豊かで美しい社会を次世代に手渡すこと」を理念として活動する、業界初の個人向け総合不動産コンサルティング企業です。1999年、不動産コンサルタント長嶋修が設立。第三者性を堅持した立場から、利害にとらわれない住宅診断(ホームインスペクション)やマンション管理組合向けコンサルティング、不動産購入に関する様々なアドバイスを行う「不動産の達人サービス」を提供、74,000組を超える実績を持っています。

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