「アジア・グローバルヘルス・サミット」「香港国際メディカル&ヘルスケア・フェア」閉幕

香港貿易発展局

2025.06.11 18:00

1,000件超のビジネス商談を実現 グローバルヘルス投資拠点としての香港の存在感を強調

香港特別行政区政府・香港貿易発展局共催による第5回「アジア・グローバルヘルス・サミット(ASGH)」(5月26日・27日)、第16回「香港国際メディカル&ヘルスケア・フェア」(5月26日~28日)は、盛況のうちに閉幕しました。両イベントは、「インターナショナル・ヘルスケアウィーク(IHW)」の旗艦イベントとして、政府関係者、国際機関、研究者、投資家、ビジネスリーダーなど、世界中の医療関係者が一堂に集結しました。

「アジア・グローバルヘルス・サミット(ASGH)」には42の国と地域から2,900人以上が参加、「香港国際メディカル&ヘルスケア・フェア」には、57の国と地域から約13,000人のバイヤーが来場しました。両イベントでは、390件以上の1対1の商談セッションと、660件を超えるビジネスマッチングミーティングを実施し、1,000件以上の協業・コネクションの創出を促進しました。国際的な交流と協力を推進し続けるインターナショナル・ヘルスケアウィーク(IHW)は、医療投資と貿易における香港の広大な可能性に注目を集めるとともに、香港が地域を代表する医療ハブとしての地位をさらに強化しています。

80名以上の専門家が登壇、国際医療の未来を議論
サミット初日5月26日、「Fostering Global Collaboration for a Shared Future(共創する未来に向けた国際協力の促進)」をテーマに開催された「アジア・グローバルヘルス・サミット(ASGH)」は、香港特別行政区政府の李家超(ジョン・リー)行政長官による開会挨拶と世界保健機関(WHO)のテドロ ス・アダノム事務局長の祝辞で幕を開けました。公衆衛生、医療技術の革新、健康的な高齢化、グローバルなビジネス・投資連携など、多岐にわたるテーマに焦点を当てました。世界各地から集まった政府関係者、国際機関、研究者、投資家、ビジネスリーダーなど、80名以上のスピーカーが登壇し、世界の健康促進に向けた貴重な知見を提供しました。「プレナリーセッション I:Shaping a More Equitable and Sustainable Health System(より公平で持続可能な医療システムの構築)」では、香港特別行政区政府 医務衛生局局長の盧寵茂(ロー・チョンマウ)教授が、基調講演を行いました。ほかには、マーティン・テイラー氏(世界保健機関(WHO)中国代表)、葉玉如(ナンシー・イップ)教授(香港科技大学学長)、フレデリック・リマッテイ氏(フランス大学病院全国協会会長の国際関係特使)らが登壇し、世界の医療課題への取り組みに関する見解を共有し、国際医療の連携と発展に向けた活発な討議がおこなわれました。

「プレナリーセッション Ⅱ:Fostering Global Collaboration for a Shared Future(共創する未来に向けた国際協力の促進)」では、グローバルな医療協力の潮流について活発な議論が交わされました。その中で、原丈人氏(デフタ パートナーズ グループ会長/アライアンス・フォーラム財団 代表理事 兼 会長)は、企業の利益と患者のニーズの間でバランスを図るためには、より高度な技術と新たな政府規制が必要であると述べました。原氏は、教育・研究環境の高度な水準に注目し同地を新たな投資の拠点として選定しました。香港には5つの優れた大学と28の先端研究機関があり、スタンフォード大学、ジョンズ・ホプキンス大学、ケンブリッジ大学など、世界有数の学術機関との共同研究も活発に進められています。原氏は、こうした強固な基盤に加え、「新しい産業と雇用を創出する使命を持つベンチャーキャピタル」が必要であると指摘。利益ではなく社会的価値を重視した投資こそが、香港の未来を拓く鍵だと強調しました。利益追求型ではなく社会的価値を重視する投資の重要性を強調しました。また、アジアにおける新たな医療規制制度の構築においても、香港が主導的な役割を担うべきだと提言し、同地域の将来性への強い期待を示しました。

三菱田辺製薬株式会社は、2007年に田辺製薬株式会社と三菱製薬株式会社の合併により誕生し、前身の田辺製薬は創業347年を誇る日本最古、世界で2番目に古い製薬会社です。上野裕明氏(田辺三菱製薬株式会社 会長)は、成長著しいアジア市場の重要性を強調し、同地域への新たな直接治療薬の導入を進めていると述べました。また、日本製薬工業協会(JPMA)の取り組みにも触れ、アジアの製薬団体14団体と香港を含む10の規制当局が連携するAPACの活動を紹介。「アジアの人々に革新的な医薬品を届ける」という共通の使命に基づき、官民で議論を重ねていると語りました。さらに上野氏は、製薬ビジネスにおいて企業規模は必ずしも成功の鍵ではなく、革新的な医薬品の多くがベンチャーのような小規模な組織から生まれていると指摘。一方で、グローバル展開には治験やマーケティング面で大規模なリソースが必要であり、大手企業の関与も不可欠と述べました。将来的には、製薬ビジネスは、創薬、開発、製造、販売に至る機能を各企業間で分担し、それぞれの強みを活かして共存していくビジネスモデルが望ましいとの見解を示しました。

医療データ企業・株式会社JMDC代表取締役社長兼CEO・野口亮氏は、同社が保険者や医療機関から収集した約2,000万人分の疾病、検査、治療、使用薬剤などに関する包括的な医療情報などを含む保険請求データに加え、個人向けPHRサービス「Pep Up」を通じたライフスタイルデータを保有していると説明。これらは、ユーザーの同意のもとで統合・管理されており、この統合型プラットフォームにより、AIを活用した脳卒中や心筋梗塞などの疾患予測モデルの開発が進んでいると語りました。野口氏は、こうした取り組みが個別化された予防医療の実現に寄与していると述べるとともに、医療データ活用においては「透明性」が重要であり、利用目的や保護体制を明確にすることで、社会からの信頼のみならず、自身のデータが他者によって活用されることが如何にして医療の改善に繋がるのか認識されるようになると述べました。さらに、現在医療データビジネスの中で注目しているのは、生成AIなどの新技術が医療サービスの価値構造を大きく変えている点であると語りました。AIは質の高い独自データからのみ効果的に学習できるため、①独自性のある高品質データと②ユーザーや医療従事者との接点、この二つが今後の医療サービスで不可欠な要素だと指摘。これらが揃うことで、AIを活用した次世代の医療ビジネスが実現すると力強く語りました。

多様なテーマが交差し、未来志向の知見が集結 ― シルバーヘルス分野で新たなビジネス機会を探る
「Dialogue with Global Pioneer in Health(健康におけるグローバルパイオニア)」セッションでは、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)クイーンズスクエア神経学研究所のJohn Hardy(ジョン・ハーディ)神経疾患分子生物学教授が、アルツハイマー病に関する最新の研究成果と先進的な開発について紹介しました。

今回初めて、サミットは香港科技大学と共同で「Shaping the Future of Healthcare(医療の未来を形作る)」をテーマに2つの特別セッションを開催しました。登壇者には、英国インペリアル・カレッジ・ロンドン医学部副学部長であるGraham Cooke(グラハム・クック)教授も名を連ね、医療分野におけるAIの可能性に焦点を当て、革新的なテクノロジーがどのように医療のブレークスルーを推進しているかについて参加者と共有しました。グラハム・クック教授は、多くのイノベーションが実用化に至らないのは、患者のニーズが医療システムに十分に組み込まれていないためであると指摘し、大学がイノベーションの推進役として重要な役割を担っていると述べました。またテンセント・ヘルスケアアの社長アレックス・ン博士は、「テック企業の特異性のひとつは、常に最新の話題に注意を引かれやすいことです。しかし、医療分野に留まり、それを実現させるには、忍耐と継続力を持った企業が必要です」と語りました。

世界的な高齢化を背景に、サミットでは新たに「シルバーヘルス・チャプター」が設けられ、 Surfing the Silver Tsunami: Advancements in Geriatrics and Longevity Technology」と題したテーマセッションには、香港中文大学の胡令芳(ジェーン・ウー)教授(香港中文大学 賽馬會老年学研究所 所長)、James L. Kirkland(ジェームズ・L・カークランド)教授(シダーズ・サイナイ医療センター 高度老人症候群治療研究所 所長)をはじめとする専門家が、今後の高齢化社会における医療や投資機会について議論を行いました。胡令芳教授は、急速な人口高齢化が世界の医療および社会経済の構造を再形成していると指摘し、世界でも有数の長寿都市である香港においては、早期に高齢者ケア政策を強化し、医療資源をより適切に配分する必要があると強調しました。また、カークランド教授は、老年科医の究極的な目標は、複数の疾患を抱える患者が薬の使用を減らしつつ、より効果的に治療を受けられるよう支援し、全体的な生活の質を向上させることだと述べました。

「Beyond ‘Healthy China 2030’: Driving Health Innovation(『健康中国2030』を超えて:ヘルスイノベーションの推進)」セッションでは、中国本土の医療市場におけるビジネス機会について議論が交わされました。マーク・ホーン氏(メルク株式会社執行副社長兼メルク中国社長)は、「China for China(中国のための中国)」に続く「China for the globe(世界のための中国)」という2段階のアプローチを強調し、先進的な治療法を世界に提供するための医療分野での協力の重要性を訴えました。また、張連山(チャン・リェンシャン)博士(江蘇恒瑞医薬 執行副社長)は、「当社のヘルスイノベーションが、中国だけでなく海外でもその価値を実現することを望んでいます。だからこそ、最大限の価値を達成できる“グローバル化”について議論しているのです」と述べました。
※「健康中国2030計画要綱」は、中国政府が2016年に発表した、国民の健康増進を目的とした国家戦略


数多くの商談セッションと協力協定が新たなグローバル機会を創出
会期中には、医療分野における世界各地の投資家とプロジェクトを結びつける商談セッションが実施され、オンラインとオフラインの双方で1対1のビジネスマッチングが行われました。商談の対象は、医薬品、医療機器・診断、スマートヘルスケア、地域の健康増進といった幅広い分野に及び、投資家やベンチャーキャピタリスト、企業のベンチャー投資部門、プライベートエクイティ事務所など、多様な投資家層が参加。390件を超える1対1のミーティングが行われ、グローバルな協力関係の構築と新たなビジネス機会の創出に寄与しました。

同サミット期間中、患者ケアや診断ソリューション、医療機器・画像技術など多様な分野を対象に、複数の協力協定が締結されました。主な事例としては、Gleneagles Hospital(港怡醫院)香港、PanopticAI、SmartCareの三者による、カメラによるバイタルサイン監視技術と相談プラットフォームの統合に向けた協定が挙げられます。その他、EVDLやHKSH Medical Groupなど、医療機関・企業間の連携も進展しました。

会期中ASGHビジネスハブも設けられ、13の国と地域から170社以上の医療関連イノベーション企業が参加しました。参加地域には、中国本土(上海・厦門)、オーストラリア、タイなどが含まれ、医療イノベーション、スマートヘルスケア、AI、ビッグデータ、遠隔医療、サイバーセキュリティなどの主要分野でプロジェクトやソリューションが紹介されました。Mitrassist Lifesciences社共同創業者のZhong Wei氏は上海パビリオンに参加し、ASGHを通じて自社の非侵襲的医療モニタリング技術を東南アジア、アフリカ、そして一帯一路構想の諸国へ展開する機会を得られたと語りました。

香港国際メディカル&ヘルスケア・フェア イノベーション・ビジネス協力を促進
香港貿易発展局・香港医療・健康機器産業協会(香港醫療科技協會、HKMHDIA)共催「香港国際メディカル&ヘルスケア・フェア」は、5月26日から28日まで開催されました。

同展には、13の国と地域から約300の出展者が参加し、英国、タイ、イスラエルの初出展パビリオンのほか、シンガポール、ドイツ、イタリア、ルクセンブルクからの初出展企業も加わりました。さらに、香港の7つの大学、香港サイエンスパークパビリオンに出展した30社以上のイノベーション企業、香港医療・健康機器産業協会(HKMHDIA)が率いる20社以上の医療企業が参加しました。香港社會服務聯會(The Hong Kong Council of Social Service)も今回初出展しました。「イノベーションがスマートヘルス体験を加速する」をテーマに、展示会はメドテック、ジェロンテック(高齢者向け技術)、グリーンソリューションの3つの主要分野に焦点を当て、多くの出展品がAI技術を応用した革新的技術を紹介しました。

メディカルフェア ビジネスネットワークの拡大を提供
出展者のEieling Technology社(香港)は、香港理工大学の研究成果を事業化するために設立された企業です。同社は、過渡的弾性測定技術を用いた非侵襲的肝臓検査技術を展示しました。共同創業者兼CEOのXiaojia Jia氏は、「この技術を持つ企業は世界で約4社しかなく、バイヤーにとって大きな魅力となっています。展示会期間中には、中国本土、香港、インドネシア、タイから数百万香港ドル相当、約10台分の引き合いがありました。今回で参加は3年目ですが、商談を通じてバイヤーの専門性が大きく向上しているのを感じています。来年もぜひ出展したいと考えています」と述べました。

韓国のNeoneco社のCEO、カレル・リー氏は、今回のフェアで最低予算10万米ドルをもって革新的な医療製品の調達を行いました。すでにイスラエルパビリオンの出展企業であるRhinoCareの鼻詰まり解消デバイスに注目しており、香港の出展企業の医療検査機器にも関心を示しています。リー氏は次のように述べました。「展示会では出展者と直接対面でき、信頼関係を築き、意思決定のスピードを加速させることができます。HKTDCのClick2Matchプラットフォームも効率的なビジネスマッチングを支援してくれました。すでに10社の出展者と連絡を取り合い、当社の調達ニーズを知ってさらに20社から連絡が着ました。アジアの有数の医療調達イベントのフェアに、来年も必ず参加します。」

本展では業界のバイヤーに刺激を与える多彩なフォーラムも開催されました。これらには、「大湾区における医療機器の規制協力の最新動向」、「香港メドテック協会と共催の大湾区メドテック・ネクサス」、そして「HKCSS(香港社会サービス協議会)と共催のシルバーエコノミーの促進、質の高い高齢者・リハビリケアの実践」などのセミナーが開催されました。多くの参加者が集まり、医療分野に関する貴重な知見が提供されました。公式サイトで再視聴が可能なセッションもありますのでぜひご覧ください。

今回も「EXHIBITION+」のオンライン・オフライン開催のハイブリッドモデルを採用しました。世界各国の出展者や業界の専門家、バイヤーはClick2Match(オンライン)を活用し、HKTDC Sourcing(hktdc.com Sourcing)を通じて調達機会を探ることが可能です。

公式サイト
インターナショナル・ヘルスケア・ウィーク: https://internationalhealthcareweek.hktdc.com/ja 
アジア・グローバルヘルス・サミット:  https://www.asiasummitglobalhealth.com/conference/asgh/ja 
香港国際メディカル&ヘルスケア・フェア: https://www.hktdc.com/event/hkmedicalfair/ja 

写真ダウンロード:  https://bit.ly/4kbr9Nc 


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香港貿易発展局 
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【香港貿易発展局について】 
香港貿易発展局 (HKTDC) は1966年に設立された公的機関であり、香港の貿易の促進、支援、発展を担っています。香港貿易発展局は中国本土の13カ所を含めて世界50カ所に事務所を設置し、香港が双方向でのグローバルな投資とビジネスの拠点となるよう尽力しています。香港貿易発展局は中小企業を主な対象に、中国本土および国際市場におけるビジネスチャンスを創出するため、展示会、国際会議、ビジネス使節などを運営・実施しています。また、最新の市場分析や製品情報を、貿易関連のデジタルニュースなどのチャネルを通じて提供しています。
詳しい情報は公式サイト:www.hktdc.com/aboutus(英語)、www.hktdc.com/Japan (日本語)をご覧ください。 

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種類
イベント

カテゴリ
美容・健康