4年連続増・新築住宅の不具合指摘率88%に。建設現場が抱える課題とは?

株式会社さくら事務所

2023.01.31 10:00

2022年最新データを公開

業界初の個人向け総合不動産コンサルティング・ホームインスペクション(住宅診断)、マンション管理組合向けコンサルティングを行う“不動産の達人”株式会社さくら事務所(東京都渋谷区/社長:大西倫加)は、2019年1月~2022年12月までの4年間に行った「新築工事チェック・建設途中検査」合計400件以上のデータを元に、不具合の発生箇所と状況を分析しました。  その結果、新築一戸建ての最大88%において、建物性能に影響を及ぼす可能性がある不具合が発見され、発生率は過去4年間で上昇傾向にあることがわかりました。内訳をみると、家の耐震性や強度、断熱性に関わる箇所では、過去4年間で最大の不具合指摘率となりました。

  4月の新生活に向けて、1月~3月は1年で最も「新築の完成・引渡し」が集中するタイミング̽であり、新築の完成を待ち遠しく思っている方が多いことでしょう。しかし、現場が多忙なこの時期は、不具合が発生しやすいともいえます。
※1~3月のさくら事務所への「新築工事チェック(建設途中検査)」顧客依頼数は、年平均と比べて約1.4倍(2021年・2020年実績)

1.分析結果サマリー

さくら事務所が第三者として、新築住宅の建築途中現場にて検査を行った際に、不具合がどういう工程で発生していたのか、および、その指摘率を分析した結果が下記グラフです。過去4年間、指摘率は概ね右肩上がりであり、中でも基礎・構造・断熱に関わる重要箇所の指摘率は、2022年に過去最大値となりました。

当調査は、完成前に確認する検査の中でも特に重要度の高い5か所、配筋、型枠、構造、防水、断熱を対象としています。いずれも家が完成した後では確認できず、建物の性能を左右する重要箇所です。こうした不具合が住まいに及ぼす影響には、次のようなものがあげられます。

<5か所の重要検査項目と住宅に及ぼす影響>
①    【配筋検査】基礎の鉄筋が正しく配置されているか、本数に間違いはないか、ずれはないか、といった点をチェックする検査です。耐震性や耐久性などに影響があります。
②    【型枠検査】鉄筋の太さ、コンクリート「かぶり厚さ」などを検査します。耐震性や耐久性などに影響があります。
③    【構造検査】柱・梁の寸法、接続する金物の適切な取付け状況を確認します。耐震性や建物強度に影響があります。
④    【防水検査】住宅トラブルで多く発生する「雨漏り」を防ぐため、防水状況を確認します。
⑤    【断熱検査】断熱材の取付状況や隙間を確認します。寒暖差など快適性や省エネ性に影響があります。

2.分析結果に対する考察

数々の現場を訪問させて頂くなかで、不具合が増えている背景には、大きく3つの課題があると考えられます。

①建設業界の慢性的な人手不足
2021年6月~2022年7月の建設業求人倍率は、平均6.2倍と高水準が続いており、人手不足が深刻化しています。(厚生労働省「一般職業紹介状況」より)住宅は、基本的には人の手で作られていますので、人的ミスの可能性は必ずあります。最終的に不具合をどれだけ減らせるようにするか、二重三重のチェックを行うことが、求められていると考えます。

②コロナ禍で増える不確定要素
この数年間は、発熱で現場の急な人員不足や資材納入の遅延が生じ、現場は計画変更の対応に日々追われています。また、予定外の資材価格高騰など、見通しが非常に立てづらい状況が続いています。 

③属人的な生産システム
昨今、様々な業界でDXによるシステム化や自動化といった省人化による、属人的な作業の効率化が推進されていますが、建築業界はその点で遅れている一面があります。

 こうした業界の共通課題で現場が疲弊している中、営業受注は好調を続ける一途です。2021年の新築戸建ての着工数は、2020年比10%増(国土交通省「新設住宅着工戸数」より)であり、首都圏の分譲マンション価格はバブル期を超えるなど、住宅市場は右肩上がりです。営業受注の増加に、現場がついていけない状況は今後も継続すると考えられます。従って、これからお引き渡しを迎える方、あるいは、着工する方は「社内検査」のタイミングに同行し、ご自身の目でも確認されることをお薦めします。ただし、現場に行く前には、必ず現場監督の許可を取り、事故が起きないよう安全確保を最優先しましょう。今回のデータを元に、家づくりに役立てて頂ければと思います。関連コラムは弊社サイトをご覧下さい。

 

 

企業担当者の連絡先を閲覧するには
会員登録を行い、ログインしてください。

種類
調査レポート

カテゴリ
ホーム

サブカテゴリ
ライフスタイル