須田先生が考える集中力を阻害する主な要因 

 なぜ従来の対策は効果が限定的だったのか

オフィスワーカーの働き方に詳しい医師の須田先生によると「これまでの企業研修などで実践されてきたオフィスワーカーの集中力に関するアドバイスは”人間関係の改善”や“空間づくり”など外的要因に対するコントロールに重点を置かれてきました。しかし、このような外的要因は個人でコントロールすることが難しく、効果が限定的でした。」

新しいアプローチ「内的コントロール」による集中力向上

そこで須田先生は個人が、個人が自身でコントロール可能な「内的要因」に着目したアプローチです。具体的には、日常生活の中で小さくリセットする習慣としての「養生」を摂り入れることを推奨しています。養生は以下の5つの要素から構成されます。

★重要なポイント①：養生の現代的解釈と実践

須田先生は現代のデジタル社会に伝統的な「養生」の考え方を適応させることが重要と説いています。特に、デジタルデバイスの常時使用が一般化している現代において、脳を適切に休ませることも養生の一環として重要視しています。

「実は、集中力はルーチンになるような感覚刺激が有効だと考えられます。例えば、呼吸を意識的にコントロールすることで、すぐに集中力を高めることができます。1分間の呼吸回数を10回以下にすることで、副交感神経が優位になり、集中しやすい状態を作り出せることができます」と須田先生は説明します。

★重要なポイント②：ガム咀嚼による集中力向上効果

須田先生は「実は、咀嚼が集中力に大事な役割を果たしています。ただし、仕事中の食事や食べ続けることは難しいと思います。そこで、取り入れて欲しいのがガムです。最近ではオフィスでガムを噛む人は減っているようですが、集中力に関しては以下のような有用な効果が期待できることがわかっています。」

• 脳血流の増加

・特に前頭葉（集中・注意力）の活性化　　　・海馬（記憶）の活性化

「噛むという行為は、脳の血流を増やすことが知られています。特に前頭葉は集中をする、注意を向けるといった機能に関連する部位です。また、記憶に関連する海馬も活性化されることで、より効果的な仕事ができる状態が作られます」と須田先生は説明します。

• 神経伝達物質への作用

・セロトニン（リラックス効果）の分泌促進

・コルチゾール（ストレスホルモン）の分泌抑制

「脳内のホルモンや神経伝達物質の状態も変化します。具体的には、リラックスをもたらすセロトニンが出やすくなり、一方でストレスを感じる際に出るコルチゾールの分泌が抑制されます。集中を妨げる要因として、イライラや気持ちの荒れがありますが、これらをキャンセルしてくれる効果があるのです」

須田先生が実践する集中力の入れ方

• 仕事開始のルーチンとして

「仕事を始める時のきっかけ作りとしてガムを活用しています。続けることで、ガムを噛むことが集中モードに入るスイッチとして機能するようになります」（5～10分程度から始めて、慣れたら20分程度まで）

• タスクの切り替えのリセットとして

「ガムの味が薄くなる15～20分程度で、人の集中力も一度切れやすくなります。この時にガムを捨てに行き、違う景色を見て戻ってくることで、良い気分転換になります」

須田先生オススメするガムの選び方

・初心者は柔らかめのものから始める

・柑橘系の香りはリフレッシュ効果が高い

・硬すぎると顎関節に負担がかかるので注意

オフィスワーカーの集中力向上に最適な手段としてのガム

須田先生は、このような内的アプローチによる集中力向上の取り組みは、働き方改革やウェルドゥーイング (ウェルビーイングより積極的な行動をすること)の観点からも注目されています。

「ストレスを小さくする習慣を身に着けることが大切です。特に自分でコントロールできる呼吸やガムの咀嚼などの手法は、すぐに実践できる効果的なアプローチとなります」
なかでもガムは、現代のオフィスワーカーにとって最も取り入れやすい解決策と言えそうです。小腹が空くと集中力の妨げになりますが、チョコやクッキーは血糖値が急激に上がり、その後下がった時にすぐに空腹感が戻り、しかもカロリーが高いのが難点です。一方でガムは、低カロリーながら満足感が得られ、不適切な間食を防ぐことができます。また、仕事の切り替えやリフレッシュのきっかけとしても活用できます。さらに、脳の活性化からストレス軽減まで、科学的根拠に基づく多面的な効果があることも魅力です。

デジタル社会において増大する様々なストレスに対して、このようなシンプルでありながら効果的なアプローチは、オフィスワーカーの生産性向上に大きく貢献する可能性を秘めています。