パリ五輪、ジェンダー平等の理念と共に、女性の健康やウェルネスに注目が集まる
【東京】英国の市場調査会社ユーロモニターインターナショナル(以下、当社)は、7月26日に開幕し、史上初のジェンダー平等実現を理念に掲げるパリ五輪が、ファッション・ラグジュアリー界、女性のスポーツ、健康やウェルネスに与える影響に関する分析を発表しました。
- パリ五輪の影響で、2024年のスポーツウェア世界市場は4%の成長率で拡大の見込み
- 女性の心身の健康向上を目指す商品やサービスへの注目の高まりから、大手スポーツブランドも女性フィットネス領域への取り組みを強化
- ラグジュアリーとファッションの中心地パリでの五輪開催ということもあり、公式スポンサーにはLVMHが、アスリートへのウェア提供には、ナイキやアディダスの他にもルルレモン、ラルフ・ローレン、スキムスが名を連ねるなど、ニッチファッションブランドにとっても好機会に。
パリ五輪は女性用スポーツウェアの売上増に貢献
五輪開催でまず脚光を浴びるのはスポーツウェアであり、世界中の人々のテレビ視聴とスポンサーシップから恩恵を受け、2024年のスポーツウェア世界市場は4%で拡大すると予測され、これは、アパレル・フットウェア世界市場全体の市場成長率の2%を上回ることになります。
当社のアパレル・フットウェア産業インダストリーマネジャーであるマルグリット・ル・ロランは、以下のように述べています:
「パリ五輪は、五輪史上初めて、男女同数の選手が競技に出場するという完全なジェンダー平等が達成され、このことは、女性用スポーツウェアの売上向上を後押しするだろう。多くのスポーツウェアメーカーが、従来から男性と比べてターゲット層とされてこなかった女性消費者層を積極的にターゲットにするようになった。女子スポーツの観客動員数、視聴率、ファン参加率は上昇傾向にあり、女子サッカーに見られるように、主要ブランドが女子アスリートやチームのスポンサーになることは、もはや珍しいことではなくなっている。」
世界における過去5年間(2018年―2023年)の女性用スポーツウェアの売上は、男性用スポーツウェアを上回る成長率で推移(それぞれ年平均成長率は5%と3%)しているものの、女性用製品がスポーツウェア全体の売上に占める割合は、36%に止まっています(1,430億米ドル、2023年)。
女性の健康とウェルネスへ集まる注目、女性のフィットネスのための大手スポーツブランドの取り組みも
今日、Eコマースはスポーツウェア世界市場の売上の約33%を占めていますが、今後、スポーツウェアのオンライン売上はますます伸びるでしょう。世界の女性消費者のおよそ半数が、日々の活動やエクササイズ、カロリー計算を管理するためにスマホアプリを使用している中、スポーツウェア業界も、ウェルネスや女性のエンパワーメントといった領域に一層注力するようになっています。
また、ル・ロランは、次の様にも述べています。「イギリスの女子ラグビー選手、ホリー・エイチソンがビューティーブランドのクリニークとエンドースメント契約をするなど、女子スポーツ界には、美容から食品、栄養、健康、ハイテク・家電に至るまで、スポーツウェアの範疇に留まらない可能性がある。また、女性の身体の健康をめぐる議論が進み、生理や避妊に関する悩みの解決策が、より積極的に語られるようになる中、企業はますます女性の消費者、つまり女性の心身の健康そして権利を考えた商品やサービスを開発するようになっている。なお、当社が2024年に実施したライフスタイルサーベイによると、世界の女性回答者の51%が、『今後1年間に健康とウェルネスへの支出を増やすだろう』と回答している。」
「ナイキは、女子や若い女性に対して、どのようにスポーツを指導するかをコーチに教育するキャンペーンである“Coaching HER”を打ち出した。アシックスは、2022年に実施したState of Mind調査の結果、世界的に女性は男性よりも運動量が少ない傾向にあり、それが精神的な健康に影響を及ぼしていることが明らかになったことを受け、運動が精神的な健康にもたらすポジティブな影響を強調する女性向けキャンペーンを開始した。プーマは、十字靭帯(ACL)調査研究を通して、女子サッカー界へのコミットメントを加速している。このように、大手スポーツブランドたちは、女性の健康への取り組みを、次の段階へと移行している。」
ラグジュアリーファッションの中心地で開催されるパリ五輪
ファッションブランドと五輪チームとのコラボレーションやパートナーシップは目新しいものではありませんが、今回のパリ五輪では、実に10億人以上の視聴者の注目が、同大会とファッションブランド、ラグジュアリーブランドとのパートナーシップに注がれることになります。
当社のラグジュアリー産業統括者であるフルール・ロバーツは、以下のように述べています:
「ラグジュアリーとファッション業界の世界的リーダーであるLVMHが2024年パリ五輪の公式スポンサーとなったことは、今後、他のラグジュアリーブランドやファッションブランドが、自国の代表チームをサポートすることのベンチマークになるだろう。また、パリ五輪が世界のラグジュアリーファッションの中心地のひとつで開催されるという事実は、各国代表チームおよび自国ブランドがそれぞれ、選手たちが大会参加に際し着用する衣装についてより深く考えることを促した。
ナイキやアディダスといった代表的なスポーツウェアブランドが、実際の競技やスポーツイベントで着用する衣装の大部分を担当することに変わりはないが、イベント前後の衣装については、全く新しい現状が形成されることになるだろう。中でも、アルマーニはイタリア代表チーム、ルルレモンはカナダ代表チーム、ラルフ・ローレンは米国代表チーム、スキムスは米国代表チームの公式アンダーウェアとルームウェアのパートナーとして名を連ねる。五輪大会は、ラグジュアリーブランドや世界的ファッション企業にとって、代表チームおよびアスリートをサポートしつつ自らのブランドをアピールする絶好のマーケティング機会であるが、小規模なニッチブランドにとっても、自国代表チームをサポートしながら認知度を高めるための良い機会となるだろう。」
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