世界一の「一人旅」国、日本。コロナ禍で一人旅への見方が大きく変化。

ユーロモニターインターナショナル

2024.06.18 07:00

【東京】国際的な市場調査会社であるユーロモニターインターナショナル(以下、当社)は、世界各国を対象に実施した消費者調査から、日本と、日本へのインバウンド客の8割以上を占めるアジア太平洋地域の旅行者の最新トレンドを発表しました。

  • 日本では、世界平均を大きく上回る、5人に1人が「一人旅」をするなど、コロナ禍で個人主義が台頭
  • アジアからのインバウンド客もコト消費―リラックス、自然、地元文化を重視
  • アジア太平洋地域でVR/ARを使用する人のうち、4割が旅行先の下見、3割強が宿泊先ホテルの見学に使用すると回答

一人旅行の割合は日本が世界一、コロナ禍を経て倍増

当社が実施した「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ」2024年版(39か国、各国約1000名を対象に2024年1-2月実施)によると、一人旅をすると答えた人の割合は、調査対象国39か国中、日本が一番大きいことが判明しました。

「休暇で旅行に行くとき誰と行きますか」という問いに対して、「一人で行くことが多い」と答えた人の割合は、世界全体では、一番回答数の少ない7.2%である一方、日本は19.2%と、約5人に1人が一人旅をしていることとなります。また、日本でこのように回答した人の割合は、2019年の10.4%から、5年間でほぼ倍増していることも判明しました。

日本の回答者を男女別に見てみると、女性で「一人で行くことが多い」と回答した人は13.5%、男性で「一人で行くことが多い」と回答した人は24.2%と、男性の方が一人旅をする割合が高くなっています。世代別では、「一人で行くことが多い」と回答した人は30~44歳で24.6%と、全世代の中で最も多くなっています。

一人旅を好む日本国内の消費者が増えた理由について、当社の木村幸コンサルタント(日本国内旅行業界担当)は、以下のように述べています:

「前提として、2023年の日本の世帯構成比は単身世帯が全体の4割を占め、これは世界の2割を大きく上回っている(当社データより)。それに加え、伝統的に集団主義の価値観が強い東アジアでは、コロナ禍を経て個人よりも社会を優先する考え方に対し、疑問を持つ消費者が増え、自分を大切にするセルフケアの意識や個人主義が台頭するようになった。日本でも、近年「ソロ活」という言葉が注目を集めたように、一人カラオケ、一人焼肉など旅行以外の日常の場面でも一人で快適に過ごせる環境が整い、『一人行動』に対する印象は大きく変わった。なお、新型コロナウィルスによる行動制限によって複数人での行動が避けられていたため、各種規制緩和後も少人数や一人での行動を継続している消費者も一定数いる。このような理由から、グループ旅行や家族旅行も依然として主流ではあるものの、一人旅を好む消費者が増えていると考えられる。」

 

インバウンド客もコト消費へ

アジア太平洋地域からの観光客が、訪日観光客全体の8割以上を占めていますが、彼らの嗜好も、モノ消費からコト消費へ移りつつあります。ライフスタイルサーベイにおいて、アジア太平洋地域の消費者に対して旅行先を決めるときに重視する事項について聞いたところ、「リラックスできるところ」、「食事が美味しいところ」、「自然やアウトドアの活動があるところ」、「地元の文化に溶け込めるところ」という回答が上位に入り、「買い物」という理由を挙げた回答者は10%に留まりました。

旅行業界において、AIVR/ARは使える道具?

AIは、特に若い世代に対して、より高い利便性とシームレスなカスタマージャーニーの提供を可能にするツールであると考えられており、ExpediaやTrip.comといったオンライン旅行代理店大手は、顧客獲得のために自社製品に生成AI機能を組み込んでいます。しかし、旅行業界全体では、社内プロセスの改善や、チャットボットなどの単純なカスタマーサービス改善以外の、AIアプリケーションの投資対効果がまだ証明されておらず、AIの一般的な普及には至っていません。

ユーロモニター「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:デジタルコンシューマーサーベイ」2024年版(20か国、各国約1000名を対象に2024年3-4月実施)において、 企業やブランドとやりとりをするときに心地よいと感じる場面・方法に関して尋ねたところ、アジア太平洋地域の半数近くの消費者(48.9%)が、「カスタマーサービスに係る質問をリアルな人間にすること」と回答し、「カスタマーサービスに係る単純/複雑な質問をチャットボットに対してすること」と回答した人の割合(28.2%/21.3%)を大きく上回りました。

他方、同サーベイにおいて、アジア太平洋地域の消費者でVR/ARを使用したことのある人に対し、その用途を尋ねたところ、40%が「旅行先の下見のため」、33%が「宿泊先ホテルの見学のために使う」と回答しています。

当社のプルーデンス・ライ・コンサルタント(アジア地域旅行業界担当)は、以下のように述べています:

「カスタマーサービスのために最新の生成AI技術を使用したとしても、アジア太平洋地域の消費者は、問題を解決し、質問の回答を得るためにリアルな人間との対話を好む傾向にある。旅行やホスピタリティ、特に旅行先やブランドに対してロイヤルティーを育むためには、人間的な触れ合いが不可欠であることに変わりはない。他方、近年拡大しているVR/ARの使用用途として、旅行先や宿泊先の選定が大きな割合を占めることから、シームレスなカスタマージャーニー実現のためには、カスタマージャーニーの段階に合わせて、最新技術導入を検討するのが良いと考えられる」

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調査レポート

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観光・レジャー