『笑え』の主人公は、舞台俳優のオオタ。「舞台・阪神淡路大震災」神戸公演の千秋楽を明日に控えるこの人物を、「幽☆遊☆白書」「半沢直樹」『クライマーズ・ハイ』の滝藤賢一が好演している。撮影が行われたのは2008年。滝藤賢一がブレイクを果たす直前のことだ。

「舞台・阪神淡路大震災」出演者の中で、ただひとり実際に1995年に被災している座長（社城貴司）と、当時の被災経験を持たないオオタ（滝藤）ら６人の俳優たち。両者の溝は、稽古を重ね、各地で公演を行うごとに広がってしまっていた。この日はオオタの提案で、両者が初めて正面から向き合って話す。当然、モメる。７人の俳優たちが一晩中モメまくる様子は、さながら世の中に顕在する数々の分断の縮図のようでもある。オオタはこの話し合いを提案した張本人でありながら、明らかに面倒くさそうだ。しかし、それでもその場から去ることはせず、粘り強く対話を続けていく。俳優たちは、千秋楽の公演を気持ちよく迎えられるだろうか。

『笑え』は台本なし。４枚のプロットのみを７人のキャストと３人のスタッフが共有し、全編を通して即興演技のみで構成された“完全即興映画”。当時から役者のほんとうの瞬間を切り取ることに徹する太田監督が、この作品のために選択した手法だ。このたび新たに公開された『笑え』紹介動画 https://youtu.be/BS0xBx79syA?si=SUn340LR-GUEeyZY でも滝藤賢一が台本なしの即興演技を敢行。この40秒の動画だけでも、滝藤はじめ俳優たちが、いかにその場に“存在”しているかが見てとれることだろう。

本作の太田真博監督は自身の逮捕経験から着想した物語『エス』で2024年1月に長編劇場公開デビュー。今回の上映に際しては、15年ほど前に仲間と撮ったという自主映画３本をセレクトした。そのうち２本が滝藤賢一主演作である。

『笑え』も、劇場公開作『エス』と同様に太田の実体験が反映された作品だ。太田自身が俳優時代の2005年に【舞台｜阪神淡路大震災】に出演しているのだ。自身がモデルだという主人公・オオタの粘り強く対話を続ける姿勢について、太田はこうコメントを寄せている。

「どんな人とでも一瞬だったらわかり合えるんじゃないかというのが、当時も今もおそらく僕が人間関係に持っている唯一の希望なんです。オオタという人物は僕自身ではないですが、そういう部分は僕と共通してるんじゃないかなと」

「太田真博監督 初期作品集」

• 日時：2024年５月25日（土）14:30～（受付開始：14:10）
• 上映作品（上映順）：『ドリブラー』（45分/2006年/主演・滝藤賢一）、『笑え』（43分/2008年/主演・滝藤賢一/福井映画祭2008グランプリ）、『LADY GO』（25分/2009年/山形国際ムービーフェスティバル2010グランプリ）　※上映後、太田真博監督によるトークあり。
• 会場：シネマハウス大塚（JR大塚駅徒歩７分）
• 入場料：無料
• 予約・問合せ：https://otamasahiro-syoki.peatix.com/（Peatix内特設ページ）の＜主催者へ連絡＞より、またはs.eiga.cf@gmail.com （映画エス応援プロジェクト事務局）へ【氏名・枚数を明記】のうえ連絡。

なお、この無料上映会は、太田の最新作『エス』の全国上映へ向けたクラウドファンディング開始を記念して催される。クラウドファンディングのリターンには、５月10日から公開の『不死身ラヴァーズ』（監督：松居大悟、主演：見上愛）を手がけた脚本家・大野敏哉（ほかにアニメシリーズ『約束のネバーランド』、映画『シムソンズ』など脚本作多数）と太田の対談音声や、太田が過去に手がけた舞台の上演台本、映画本編や新たな予告編へのクレジットなど。詳細は『エス』クラウドファンディング特設ページ https://motion-gallery.net/projects/s_eiga にて。