気候変動はいのちに直結する問題 医師たちが命を守り、次世代につなぐため、厚労省に署名提出
〜気候危機による熱中症・豪雨災害等からいのちを守り、次世代につなぐために〜 気候変動に強い保健医療システム構築と、 2050年までに医療保健介護界の温室効果ガス排出のネットゼロ宣言を求めた署名を厚生労働省に提出
地球環境に配慮した医療を提唱する医師たちによる、一般社団法人みどりのドクターズ(代表理事 佐々木 隆史)は2024年3月6日(水)、気候変動に強い保健医療システム構築と、2050年までに医療保健介護界の温室効果ガス排出ネットゼロ宣言を求めた署名647筆を厚生労働省大臣官房国際課 国際保健管理官に提出いたしました。
この署名活動は、世界医師会も2015年「健康と気候変動に関するデリー宣言」にて温室効果ガス排出量の削減、化石燃料の段階的廃止を宣言したように、G7国を始め世界ではメインストリームとなりつつある『国家として気候変動に強い保健医療システム構築と低炭素医療実施』を、日本でも実現するために、みどりのドクターズが中心となり、2023年8月からオンラインにて開始したものです。
署名提出時には、みどりのドクターズ代表理事の佐々木隆史と理事の太田知明より、日本の医療保険介護業界における温室効果ガス排出対策が諸外国に比べ遅れをとっている現状と、だからこそ、医療従事者から声をあげる意義を説明させていただきました。
署名を受け取っていただいた国際保健管理官からは、「昨年末に行われたCOP28で初めて気候・保健大臣会合が開かれ、濵地厚生労働副大臣が出席、医療提供体制の強化などを進める共同宣言に賛同しました。また、今話題になっている気候変動と健康に関する変革的行動のための国際イニシアチブ”ATACH”(Alliance for Transformative Action on Climate and Health)についても、我が国として今年の1月に開かれたWHOの執行理事会にて積極的に参加すること検討すると発言しました。
厚生労働省でも引き続き、今回ご提出いただいた署名活動など含めて医療界・製薬業界での取り組みについてフォローアップを行い、政府一丸となって低炭素社会の実現に取り組んでいきたいと思います。」とコメントをいただきました。
私たちは、今後、より悪化していく気候変動による健康被害を軽減させるとともに、次世代ほど大きくなる健康被害の格差を縮小させるため、温室効果ガス排出第五番目の産業である保健医療システムも、気候沸騰化時代に責任を持つべきであると考えています。
この活動に対し、医療保健介護界はもちろん、より多くの方々から賛同いただくことを願っています。
〈みどりのドクターズからのメッセージ〉
気候変動はいのちに直結する問題です。
日本でも、気候変動の影響で、熱中症による死亡者数は年々増えて、洪水で直接いのちを落とす人や怪我をする人、そして精神的ストレスを抱える人はより多く増えつづけています。昨夏はかつてない熱波を体験して、いのちの危険を感じた方も多いでしょう。そして、この夏は強力なエルニーニョ現象のため、10万年ぶりとなった2023年の酷暑を超える暑さも予想されています。
気候変動は人類が直面する単一では21世紀最大の健康への脅威であると、世界保健機関(WHO)が定義しています。高血圧1000万人、たばこ800万人より多い、年間1300万人が栄養失調・マラリア・下痢・暑さ等による環境因子で亡くなっています。2010年代までは減少傾向であった環境因子による死者数が、気候変動により少なくとも年間約25万人も増えると予測されています1)。
世界気象機関(WMO)は2023年の年次報告書で、現在から2027年の間に地球温暖化の臨界点(Tipping Point)である1.5℃を超える可能性が66%に達したと伝えましたが、昨今の気象状況をみていると、日本も含め世界の各地では、1.5℃にほぼ等しい気温上昇になってきています。ゆえにその被害も『想定外』となることは容易に想定されます。
現在の保健医療システムのままでは、不十分です。熱中症や洪水などの被害は弱者中心に起こります。熱中症、感染症、洪水等の災害対策などを、超高齢化多死社会・格差拡大社会に適応した横断的な対応システムを構築して、レジリエンスの高い地域つくりなどが必要です。
一方で、いのちを守る仕事である保健医療システムも、日本の温室効果ガスの5%以上を出しており、産業としては第5番目の排出量です2)。ネットゼロ社会実現に向けて、また保健医療システムから排出される温室効果ガスによる健康被害を少なくするために、医療・保健・介護界としても、温室効果ガス排出を減らす必要があります。低炭素医療実施のための、インフラ再エネへの投資強化やサプライチェーン含めた脱炭素政策、そのためのインセンティブを含めた報酬制度、プラネタリヘルス教育などの整備が必要となります。日本の医学部でも令和6年度より『気候変動と医療の関係』が必須学習項目となります3)が、現役のヘルスケア従事者の行動変容が不可欠です。
最後に、2050年までの医療・保健・介護界でもネットゼロ達成を標榜してください。現状では、加速度的に次世代ほど気候変動による健康被害だけでなく、くらし・人生に対する悪影響は大きくなってしまいます。まさに気候変動対策は子供たちの安全保障です。未来に責任のあるネットゼロ政策を実行して、次世代に少しでも良い未来を残していきましょう。
参考文献
1) WHOホームページ.気候変動と健康に関するファクトシート
https://www.who.int/publications/i/item/fast-facts-on-climate-change-health
2) Carbon footprint of Japanese health care services from 2011 to 2015 Resources, Conservation and Recycling;Volume 152, January 2020, 104525
3) 医学教育モデル・コア・カリキュラム 令和4年度改訂版
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001026762.pdf
一般社団法人みどりのドクターズについて
医療からの気候変動対策を啓発する医師を中心とした医療従事者の一般社団法人。医療関係者が環境への配慮を通じて健康向上を追求し、持続可能な未来を築く支援を行う。VISIONは、環境に優しい診療により、健康向上や健康リスク減少、医療の環境負荷とコスト軽減を目指して、Primary careの強化やコベネフィット・専門医連携などの創造的な環境提供、協力的なコミュニティの形成を重視して持続可能なヘルスケアを実現すること。
2023年より日本国内の現役医師や医療関係者など有志による、セミナーやプレスブリーフィングを通じて、気候変動による健康被害に関して啓発活動を行う「医師たちの気候変動啓発プロジェクト」に協力。
一般社団法人 みどりのドクターズ 代表理事 佐々木 隆史
滋賀医科大学卒、京都⺠医連中央病院、名古屋大学総合診療部研修等を経て、2013 年こうせい駅前診療所を開設、病児保育室併設。プライマリ・ケア連合学会 指導医、在宅医学会専門医。2か月のワクチンから 100 歳の在宅看取りまで。2021年みどりのドクターズを発足し、2022年に一般社団法人化。
本リリースに関するお問い合わせ先
一般社団法人みどりのドクターズ:https://greenpractice-jp.studio.site/ greenpracticejp@gmail.com
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