シンガポールの観光地でARの仕掛けが若い世代にハマった理由、BytePlusに学ぶ海外先進事例

株式会社36Kr Japan

2023.12.19 11:16

シンガポールでは、コロナ禍が終わり再び海外観光客を呼び込もうと様々なキャンペーンが実施されている。そのうちのひとつがシンガポール川沿岸を主要観光地として盛り上げようとする「シンガポール・リバー・フェスティバル(Singapore River Festival)」だ。今年の祭典では以前から開催されるグルメ巡りや音楽フェスに加え、新たに楽しくテクノロジーが体験でき学べる仕掛けとしてAR(拡張現実)が導入された。

ARといっても専用グラスや独自アプリは必要なく、スマートフォン用アプリの「TikTok」があれば利用できる。このARを含めたプラットフォームを提供したのは日本を含め世界で展開するインテリジェント・ソリューション・プロバイダーの「BytePlus(バイトプラス)」だ。 

今年9月7日〜10月1日にわたり開催される「Singapore River Festival」

シンガポールの有名スポットでも、それぞれの特徴に合わせたユニークなAR表現で観光客を驚かせる。例えば、ランドマークのひとつ「マリーナベイサンズ」に向けてスマホをかざすと、未来の高層建築物と空飛ぶ乗り物によってスマホから見える景色が未来都市に変わる。また名所スーパーツリーグローブからスマホを通して空を見上げると、巨大な温室ドームの中で立体的なスマート農場が描かれ未来のグリーンな環境との共生を垣間見ることができる。ちなみに各スポット周辺にはARで遊べることを知らせる掲示物があり、指示通りにTikTokからQRコードをかざすとすぐに色々なARコンテンツを楽しむことができ、観光客が手軽にARの世界に入っていける工夫も見逃せない。

シンガポールのマスコット・カワウソが活躍したARゲーム「SABA’S TIME QUEST」

これらのインタラクティブな体験により、観光客はテクノロジーを楽しみ、映え写真をSNSなどでシェア、クーポン配布でお得に感じてもらい現地へ行きたくなる、この一連の仕掛けは今までの「受け身観光」とは一線を画す。また、新しい技術を活用してコンテンツを作りこむことで、シンガポールという都市の歴史や未来を魅力的に伝える効果も発揮され、国のカルチャー発信にもなる。 

ところでシンガポール政府は、ARを活用して何を期待しているのだろうか。TikTokといえば世界的に若い世代を中心に普及しているアプリであるように若い世代がよく利用している。年齢で言うとテクノロジーに反応する若い社会人(25~34歳)であり、友人同士や、若い夫婦、小さい子連れの家族に対して、シンガポールの生活をより楽しんでほしいと考えているようだ。例えば子連れの家族にとってはARを仕掛けることで飽きやすい子供も喜んでくれるため、積極的に祭典に訪問してくれるだろうという期待があった。BytePlusの担当者によれば、「AR×観光」戦略の効果としてリバー・フェスティバルの訪問人数を20%上げることを目標としているそうだ。

どのようなSNSやプラットフォームもそうだが、昨今、最も人気が上昇しているジャンルの一つが旅行だ。自由に移動できるようになったことで旅行に行きたい人が増えたのだろう。シンガポール政府は、テクノロジーで魅せる観光をテーマに何らかの施策が出せないかと検討していたまさにそのタイミングで、BytePlusからARについての新しいソリューションの提案を受け、導入を決定した。導入が決定すると、BytePlusはプラットフォームを提供、デザインは地元の企業が開発を行い、1~2カ月でサービスをローンチしたという。

BytePlusがテクノロジーでユーザーに驚きを与え、かつTikTokを活用しながら観光地を巡って楽しんでシェアしてもらうというのはシンガポール政府としても期待通りの提案だった。BytePlusのAR SD(ソフトウェア開発キット)は、モバイル向けとWEB端末向けに用意されていて幅広い端末でサービスを利用できる。さらに、多数のユーザーが同時かつ快適に利用可能なTikTokを活用することで、普通の企業では簡単に出来ない高度なレンダリング機能で高精度・低遅延を実現、つまり見たいときに綺麗な映像がストレスなく表現されることもシンガポール政府が今回BytePlusとタッグを組んだ理由に挙げられる。

TikTokと連動し効果的に拡散させる取り組み(Saba’s Time QuestのTikTok公式アカウントにより)

レトロなRPGゲーム風のマップ画面で観光客が名所スポットを巡りやすいように誘導し、ARのクリエイティブな映像で新鮮な体験や驚きを与える。これはシンガポール向けに限らず、日本のインバウンド施策や地方自治体のイベントなどで大いに活用できよう。SNS利用世代の観光客に向けて種まきをして各地を巡り店舗のフォローや拡散を行い、そのフォロワーが日本に旅行に来た時には指名で訪問する。ARの導入によりたくさんのメリットが期待できそうだ。

(作者:山谷剛史)

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