元『ライフハッカー』編集長の米田智彦氏がドバイで開催されたカンファレンスで部門別としては日本人初受賞。さらに数々の著名企業を輩出したY Combinatorに参加。
『ライフハッカージャパン』『FINDERS』と編集長として活動してきた米田智彦氏と新会社WALKONが見据える次なるメディアとテックの未来地図とは?
元「ライフハッカージャパン」編集長、前「FINDERS」創刊編集長の米田智彦氏がWeb3とAIをメインに、新しいコンテンツとエクスペリエンスを提供する株式会社WALKON (ウォークオン)で再び起業。今年6月、ドバイで開催されたテックカンファレンス「INTERNET 2.0 CONFERENCE - SPRING DUBAI 2023」にて、日本人初となる「Outstanding LeaderShip Award」を受賞した。さらに今冬、Airbnb、Dropbox、Stripe、Reditt、Coinbase、Opensea、RIPPLING等の著名企業を次々に輩出し、「世界一有名な起業家育成プログラム」として名高い「Y Combinator(ワイ・コンビネイター)に参加する。
元「ライフハッカージャパン」編集長、前「FINDERS」創刊編集長の米田智彦氏がWeb3とAIを駆使し新しいコンテンツとエクスペリエンスを提供する株式会社WALKONで再び起業した。
2023年6月、米田氏はドバイで開催された国際テックカンファレンス「INTERNET 2.0 CONFERENCE - SPRING DUBAI 2023」にて、日本人初の「Outstanding LeaderShip Award」を受賞した。
現地会場にて受賞スピーチを行い、「テクノロジーと社会的責任」というテーマのパネルディスカッションにも登壇、自論を語った。
また、これまでAirbnb、Dropbox、Coinbase、openseaなど3,500社以上の企業に投資し、投資先企業の時価総額の合計が約70兆円にも及ぶ起業家育成アクセラレータプログラム「Y Combinator」にビジネスプランが採択され、2023年冬のプログラム参加が決定した。これは日本に所在所を置く会社としては3社目となる。
2010年代のメディア編集長時代を経て、2020年代は自らがプロダクトとサービスを作ることを決心したと語る米田氏は「自分の約15年の間、ウェブメディアやSNSのことを考えない日はありませんでしたし、それらを使った表現と仕事でありとあらゆることをやり尽くしたという感覚がありました。
また、Web2の広告頼りのビジネスモデルのままだと、スタートアップや中小企業がどう努力しても世界のビックテックやプラットフォーマーにユーザー数や閲覧数で勝てる可能性は極めて低い。
さらに『誰でもメディア』の時代に乱立するウェブメディアの自動表示される広告の利益や記事広告(企業とのタイアップ)の収益頼りのビジネスモデルの限界を痛感するここ数年でもありました。
今、ネットのオーディエンスは『可処分時間』、よく言われる『タイパ』を考えるようになり、読むことにある程度の時間を要する活字よりも、動画や音声コンテンツ、つまりYouTubeやTic Tok、ポッドキャストに自然と移行しつつあるのは皆さんご承知でしょう。これは戦後、新聞からテレビの時代に移っていった現象と似ていると言えるのではないかと。現に僕自身が気づいたら、これまで13ものポッドキャスト番組を立ち上げていたのです。これは自分でも忘れていたことでした」。
「2023年現在、多くの人がスマホ一台で発信できる動画や音声に移行していくのは極めて自然な流れだと思います」。
さらに彼はこうも続ける。
「ウェブメディアはテレビやラジオのような国の許認可事業でもなく、出版のような取次流通を前提としないため、個人でも気軽に始められる自由度は魅力的ですが、それゆえに現在の玉石混合の情報洪水の状況になったとも言えます。
2010年代までは企画、取材、執筆といった制作におけるプロフェッショナルの編集者や記者が一次情報やファクトに当たって取材し裏どりをして記事やコンテンツにするというのが仕事の常識でしたが、現在は膨大にある情報の中で何を選びとり、それをどう分析・解釈するか?という時代になっています。AIが作る人間の顔と実物の区別など何が正しく何がフェイクなのか、もはや誰もわかりませんよね。要は情報があまりに多すぎて、レコメンンドで受動的に見ることはあっても、なかなか能動的に選べないんです」。
「近年、メディアを自社のブランドにしたい企業が増えましたが、SEO対策やインフルエンサーマーケティングを駆使して『とにかくページビューを多く稼げればいい』という状況は徐々にですが変わりつつあり、まさに『ウェブメディアの戦国時代』で勝者はほんの一握りです。さて誰が全国を統一したメディア界の秀吉になるのか。しかし、もはやウェブメディアに秀吉のような中央集権的存在は必要ないかもしれません。
というのはウェブメディアで何千万PVを稼ぐビジネスから、SNSや動画サービスで表現活動とビジネスを行う『クリエイターエコノミー』に時代は確実に移っています。例えば、チャンネル登録者数1億400万人超えで『フォーブス』によると2021年の推定収入額5400万ドル(約82億円)と言われている世界一のYouTuberのMrBeastはYouTubeの制作に加え、自分のブランドを利用して、ゲームアプリ、チョコレートの販売、ハンバーガー店など経営を多角化しており、特に『MrBeast Burger』は実店舗を全米300か所に開業して長蛇の行列ができるなど大成功を収めています」。
「コンテンツを作ることが好きな人にとって、個人でスマホ一つで制作可能なYouTube動画やポッドキャスト番組は非常に魅力的で無限大の可能性を秘めています。クリエイターがたちが良質なコンテンツを量産し、彼ら彼女ら自身のブランディングに成功すれば世界中にファンダムが生まれ、莫大な利益を得る事例が多数存在しています。
何事も自分でやってみなければ理解度が全く異なってきますので、僕も小さい頃から得意だった絵をまたやってみようと、暇を見つけてデジタルアートを作り、NFTアートもマーケットプレイスに出品していました。するといつの間にか作品も売れ始め、気づいていたらNFTクリエイターになっていたんです」。
「また、Facebookに『NFT & メタバースJAPAN』というグループを作り、自分が知った最新情報を投稿したり、初心者向けのメタバースツアーを組んで多くの人にメタバースを体験してもらったりといった活動もやってきました。そのグループはのちに「WEB3 RESERCH LAB」という研究所になりました」。
「ネットやウェブメディアの激しい変化を追いかけてもイタチごっこのようなもので、今年AIが流行るとどの企業もAIのサービスやセミナー・ウェビナー、学習プログラムを打ち出していますが、同じジャンルに一斉に集まって競争して果たして業界全体としてポジティブなことなのだろうかと少し疑問も感じているところです。確かにOpen AIはChatGTPで世界のテック業界を一変させましたが、まだ日本初のグローバルサービスやプロダクトが世界に出ていない点も気になります。
ですから僕はここ2年ほどはひたすら情報を集め調査し、禅問答のように一人で思考を繰り返すとともに、Figmaで自分でアプリを作ってみたり、動画制作を行ったりと試せるものは全て試してみました。
僕は空海を尊敬しているのですが、遣唐使として唐に旅立つ前の弘法大師の修行状態だと勝手に自分に言い聞かせています(笑)。結論としては、自分はメディアでの批評やコンテンツ作り、情報キュレーションも充分にやり尽くしましたが、『偉そうに批評するなら自分で作ってみればいいじゃないか』という内なる声には抗えなかったという地平に行き着き、そこに残りの人生を賭けようと思うようになりました。
つまり『いち早く自分もクリエイターになれ』と自分自身に喝を入れられたようなものです。そこで、2020年はVR、AR、MR、XR、AIのオンライン講座で外国講師たちに学び、さらにニューヨークの起業家育成プログラムも受講しました」。
「そんな中でどんなオリジナルなサービスプロダクを作ることができるのかと試行錯誤の日々を送っていますが、さらにその先の量子コンピュータや量子ドット、核融合なども視野に入れていて勉強が追いつかないのですが(苦笑)、かつての起業家の口癖であった『世界を変える』ことより、僕は『より良い世界と人々の幸福のために少しであったとしても貢献する』ことを自分の次の事業の目的として定めるに至りました。
これは善人ぶりたいわけでもなく、自分も歳を重ね、ごく自然と自分自身の利益のためより未来を担う若者や困難の中にいる人たちに対して何かできることはないだろうかと考えるようになりました。特にコロナと戦争と不景気の時代のど真ん中にあって暗いニュースや話題ばかりですから、少しでも人々にポジティブな影響を与えられるものにこれからはフォーカスして仕事をしていくつもりです」。
2020年代はパンデミックと戦争にも起因しますが、連日のように激しい変化が続き、テック業界も世界経済も先行きが全く読めません。僕はそんな悲観的になりがちな時代にあっても「歩き続けよう」という意味をこめて社名をWALK ONと決めました。そこには持続可能性という意味も込めています。
2023年はドバイでのカンファレンスの参加や受賞、さらにY Combinator への参加も決まり、ひたすら準備に追われる日々でしたが、2024年こそは新メディアやアプリの事業を立ち上げつつ、徐々にいくつかのプロダクトをグローバル展開しようと考えています。『英語だけじゃなくて多言語対応はできるの?”という声が聞こえてきそうですが、語学習得よりAIによる自動翻訳や同時通訳の技術の方がきっと先に来ます(笑)。なので仕事に支障が出ない程度の英語ができれば心配はないですね」と現在の心境を述べた。
有名メディアの編集長という立場と職を爽快に過去のものとし、次なるステップに踏み出す米田氏とWALKONの今後の動向に注目したい。
なお、株式会社WALKONは、メタバースを中心としたWeb3、生成AI、音声テクノロジーに関する共同パートナー企業と、ボランタリーベースでの個人の参加を募っているとのこと。この機会にご興味がある企業や個人はアクセスしてみてはいかがでしょうか。
▪️企業情報
株式会社WALKON(ウォークオン)
http://walkon.world
〒107-0062
東京都港区南青山3丁目1番36号青山丸竹ビル6F
問い合わせ:walkonthamani@gmail.com
▪️プロフィール
米田智彦
Tomohiko Yoneda
福岡市生まれ。青山学院大学卒。株式会社メディアジーンが運営する「ライフハッカージャパン」編集長並びに同社執行役員を経て、2018年、シー・エヌ・エス・メディアを起業。「FINDERS」創刊編集長として創刊2年で月間2500万PV達成させ、2022年3月、同社代表と編集長を退任。同年、株式会社WALKONを立ち上げ、Founder兼CEOに就任。著書に『僕らの時代のライフデザイン』、『デジタルデトックスのすすめ』、『いきたい場所で生きる 僕らの時代の移住地図』などがある。2011年にはGoogle PlaceのCM動画にも出演した。
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