(後編)『機動戦士ガンダム』シリーズのアニメーション映画監督富野由悠季先生がN/S高生に熱烈授業!

公益財団法人角川文化振興財団

2023.11.02 17:00

各界の豪華講師陣が「世の中のリアル」を伝える【特別授業】第三回を開催!「国家を担えるような人材が、N/S高の出身者にいるかもしれない!!」

日本の文化振興に寄与するための事業を手掛ける公益財団法人角川文化振興財団(理事長:川上量生)は、<「世の中のリアル」を伝える>をメインテーマに、未来に夢を抱くN/S高の生徒達に向けた【学園生のための特別授業】を、株式会社ドワンゴが提供する学習コンテンツアプリN予備校を用いて、9月19日(火)に行いました。 第三回目は、『機動戦士ガンダム』シリーズで有名な、アニメーション映画監督の富野由悠季先生をお招きし、【学園生のための特別授業 富野講座】と題して実施。全国から多くのN/S高生が参加し、あらかじめ選ばれた会場でのリアル受講者からは、熱い質問や相談も飛び交い、手に汗握る盛り上がりを見せました。 (特別授業の内容を抜粋して、前編、後編の2回にわたり採録しております。)

(前編紹介)URL:https://presswalker.jp/press/27057

  • 「多様性という言葉がメディアで都合よく取り上げられていると思いますが、富野先生はどう思われますか?」(こうた)

 (富野監督)「多様性というのは、お勉強ができる人が勝手に使っている言葉です。おそらくその言葉を意識して使っている人に、多様性があるかどうかはかなり怪しいと思います。つまり先ほど農業の話をしました。農家は野菜のことしか考えていないのかというと、そんなバカなことはありません。我々の暮らしというのはかなり色々なことを考えていないと、野菜一つ育てることができないし、成り立っていきません。そうやって、現在までの人類史を作ってきたということを考える必要があります。つまり、藁ひとつ取っても、藁を綯うことによって縄を作ることができますが、人々が暮らしを立てるためにそのことだけを考えていたわけではないですね。売ることも考えなければいけないし、それをひとりの人間がやっていたかもしれない。そういうことを言うのに、わざわざ多様性という言葉を使うでしょうか?つまり言葉だけでものを考えているような人たちがたくさんいるわけです。そういう人たちが賢いのか?という問題は、やはり別に置く必要があるんです。」

  • 「ニュータイプ論に近い話ですが、監督はガンダムエースでも“ニュータイプの芽が出た”というお話をされていました。現代社会から見て、これからの社会に必要なことは何かをお願いします。」(司会者)

 (富野監督)「今回のプーチンの戦争によって、ニュータイプになるためのハウツーを考えることができました。そこにはある方向性がありました。つまり人類史の中で、なぜ、一番頭がいいといわれる哲学者で政治家になった人がひとりもいないのだろうか?ということです。そこが切り口でした。哲学という“考え方を考える”ということを述べる哲学者たちは、全部自分の中だけで完結してしまうので、外に向かって行う政治というものが一切合切出来ない人たちなんです。ものを考えることができる人が、人を統治する、つまりガバナンスをする、政治をする、という考え方がニュータイプ論を生み出すためのハウツーになると思いました。今回、プーチン大統領は、“ゼレンスキーっていう喜劇役者だった何かちゃらちゃらしてるあいつが大統領になったウクライナなら、ここでやってしまえば一発でロシア領になるかもしれない・・・。”と思ったんだろうと思います。ところが3日目にゼレンスキー大統領が“われわれはここにいる”と言ってしまった。つまり“抵抗する”と。その瞬間から1年以上も抵抗している。何度も言います。喜劇役者だったんです。それが政治家になってしまった。政治家になって、ある日突然、プーチン大統領にとっての敵が出来てしまったんです。」

  • 「ゼレンスキー大統領みたいに経験値がない人が政治家になってくれてもいいんです!」

(富野監督)「“なぜ哲学者が政治家になれないんだ?”というくらいに、違う資質の人、全く違うタイプの人が政治家になってくれればいいっていう考え方があるわけです。ゼレンスキー大統領のように、経験値がない人が政治家になってくれてもいいのです。今までわれわれが信じ込んでいたような、政治家タイプの人間や、政治家の家系の人が政治家になれば間違いなく、今後の日本の政治が良くなるということは絶対にありません。きちんとした政治家が生まれ育つような風土を作っていくことによって、ニュータイプができるのではないかと思っています。つまりゼレンスキー大統領みたいなタイプの人を基準にして考えていくことで、今後の可能性が開けるのではないかと考えています。そういう勉強の仕方をしてくれる人が政治家になってくれれば良いと思っています。」

  • 「“国家を担ってもいいんだ!俺に担わせろ!”というキャラクターがN/S高から出てきて欲しい!」

(富野監督)「この30年ぐらい、松下幸之助さんのように、実業家が政治塾みたいなものをつくって、政治家を育てるということもやりました。けれどもそれも昭和の時代からの伝統のような形の中で、古いタイプの政治家を育てる事しかやっていなかったので、有能な人が育っていない気がしています。どうやって有能な人を見つけていくのかというと、少なくとも今までのわれわれの持っている“何何タイプ”ではない人を見つけ出してくる必要があります。それで皆さん方の世代がとても重要になってくるんです。つまり“そういう私になるんだ!俺になるんだ!”という努力の仕方、勉強の仕方をしていただきたいと思っています。

  • 「“お勉強の出来る人が、有能な政治家にはなれない”ということです。」

 (富野監督)ひとつだけ分かりやすい人のタイプの基準があります。“お勉強の出来る人が、有能な政治家にはなれない”ということです。それだけは覚えておいていただきたい。その前例を日本は前の戦争まででやっています。海軍と陸軍の大学に入る生徒たちというのは、すべてが才能のある人の集まりでした。そういう人たちが日本を敗戦に導いたんです。つまり勉強ができればいいのではありません。さらに戦後の立て直しをしてきたのは誰だったのか?それは一流大学を出た人ではないのです。ソニーやホンダを作った人は一流大学出ではありません。生え抜きのエンジニアだったりするわけです。つまり、“異能の人を連れてこなければいけない”とか“異能の人であるべきなんだ”ということを、われわれは未だにきちん受け入れることができません。“あいつは政治家タイプなのかもしれない”とか“営業タイプなのかもしれない”というふうに思い込みすぎています。それは、ものすごく危険なことではないかと思っています。このN/S高の出身者の中にも、国家を担えるような人材がいるかもしれません。“国家を担ってもいいんだ!俺に担わせろ!”というキャラクターがN/S高から出てきて欲しい!ですから諸君には頑張っていただきたい。そして、おじいちゃんが安心して死ねるようにしておいてください(笑)。それが無いと死にきれません。」

  • 「突然、政治に参入しようっていうのも、全然間違いではないっていうことを知ることができた気がします。」(ほりえ)

(富野監督)「全くそう思います。むしろ、ぼくのような立場に立った時に、こういう話ができるようになってしまった時に、“まずかったな!”と思ったこともあります。今みたいな理屈で考えるのだったら、“どうして20年前からできなかったんだよ?”と全部自分に帰ってきているんです。ぼくにそれだけの気力が無かった。“政治家になろう!”というふうには絶対に思えなかった。やはり自分の中に欲がなかったのか?そういうことを真剣に考えていなかったかもしれない・・・と反省している自分がいる。そう気が付いたから“しゃべるしかない!同年齢から嫌われてもいいからしゃべろ!”と思うようになりました。」

  • 「僕ね、もう少しここに来る皆さんが、違うタイプの人かと思っていました。すごく安心しました!とても嬉しかった!」

 (富野監督)「今日はこういう形で、ぼく自身も実をいうと、皆さんのお顔を拝見するまで、皆さんのことを信用していませんでした。言葉だけで誰が信用しますか?“N/S高がこういうことをやっていて、こういうようなカリキュラムがありまして、こういうような生徒がいまして、こういうところの講師をしてくれませんか?”と大人は平気で言います。けれども、こうして皆さん方の顔を見ることができたので信用することができました。これをもっと、実効性のあるものにしていきたいとも思っています。もし次の講義を設定していただけるのであれば出ます。何度も言います。“ぼくの同年代から嫌われようが何しようが、嘘をしゃべる気はないから、しゃべってもよければ、しゃべりたい!”と思います。ぼくね、もう少しここに来る皆さんが、違うタイプの人かと思っていました。すごく安心しました!とても嬉しかった!」

  • 【特別授業】後のアンケートより

富野先生の特別授業を終え、受講生よりアンケートを実施。多くのコメントが寄せられました。(以下主な回答)

*富野さんの考えになるほどと思った。知識は経験なんだなと思うようになった。

*重めの鉄球が飛び回ってた感じのライブだった。…来年受験だけど僕はこれからどうすればいいか分からなくてもいいなって思った。

*知識とは一流の大学を出てやっと得られるものだと思っていたが、そうではなくいろんな物事を体験して目で見て地に足つけて体感してやっと得られるものだという変化があった。

*当たり前を当たり前と思わないことの重要さを改めて知った。

*将来のことは高校生で確定させることではないと思った。

*大人の形式みたいなものに飲み込まれずに自分の考えを深めていきたいと思ったことと共に、富野先生が仰っていたように体験、自分の肌で感じて自分の頭で考えるということをしていきたいなと思いました。

*私は将来の目標があります。しかし、自分を決めつけて選択肢を狭めるのではなく他にもある可能性も考えながら生活していきたいと思います。たとえ将来の決まった道がなくてもあったとしても、遠回りして様々な事を勉強したり、自分の能力を見極めて自分らしい生き方を探していきたいと考えました。

*今までの自分にあった考え方の根本を揺らがせるような講演で、体感することが大切だと思うようになった。

*リベラルアーツを学ぼうと思った。名作を学び、表の情報だけではなく、自分で体感、体験して生きていくことを大切にしたい。そして、何かに対して、本気で取り組んだ過程には価値がある、その過程を人にぶつけられる人間になりたい。今の夢ビジネスに踊らされず、自分の軸を持って、自分と向き合って、自分のやりたいこと、ライフミッションを探して行こうと改めて思った。とりあえず、明日から、古事記、世界文学集、を読もうと思う。

*富野監督は授業中もとても刺々しい事を言う事がありましたが、自分にとってそれが今までやっていなかった事に挑戦する為のいい刺激になったと思います。

*もっと勉強して、知識を得ること以外にそれを実際に体験して自分のものにするというプロセスまでやる、という事を忘れないでいきたいです。

*ネットで読んだだけのような言葉だけのものは知識とは呼べない、というのがとても自分に刺さった話で、これから行った事のない場所に行ってみたり、体験としての知識を得ようという考えが自分の中で生まれました。

*さまざまなワークショップや体験活動に参加することで、頭でっかちな人間にならないように努力したいと思いました!

*授業ありがとうございました。このような業界の先生に聞く!!のような会では基本みんな同じようなことを言っていてあまり学びがないと思っていましたが今日はずっとこういう事を言ってほしいと感じるものを富野監督は包み隠さず言ってくれてすごく嬉しかったです。もし第二回があるのならば私も現地でお話したいです。改めて、本日は貴重なお話をありがとうございました!!!

 *ガンダムという素晴らしい作品についてお話をお聞きすることも魅力的ですが、それ以上に富野由悠季さんという方の言葉や考え、熱量や空気感に触れることができたことはとても光栄で、刺激になりました。ありがとうございました。次回があれば、富野由悠季さんの人生や挫折を感じたこととそれをどのように乗り越えられたのか、今後の夢などをお聞きしてみたいです。

  • 角川文化振興財団とドワンゴが取り組む【特別授業】とは?

 「N高等学校・S高等学校(N/S高)」は、通信制高校の“制度を活用”した“ネットの高校” で、2016年4月にN高、さらに2021年にS高を開校しました。自分が学びたい分野を効率的に学習できるプログラムや選べるコースなどの特徴を活かし、生徒数は年々増加。2023年6月時点で両校合わせて2万5千人を超え、通学コースのキャンパスも全国43箇所に及んでいます。また2022年10月には「世界最高の学校賞」イノベーション部門のTOP3にも選出されました。     

 この度、公益財団法人 角川文化振興財団は、N/S高生が日々の学習で活用しているN予備校(株式会社ドワンゴが提供する学習コンテンツ)を利用して、卒業後の進路を決めるための礎となる<「世の中のリアル」を伝える>を主眼に、未来に夢を抱くN/S高の生徒達に向けた【学園生のための特別授業】の構築に取り組むこととなりました 。     

 これまでもN/S高は、課外授業の一環として、各方面の著名人を招いての特別授業を行ってきましたが、今回は、さらにバージョンアップし、生徒達が大いに興味を抱くであろう豪華講師陣を選抜。普段の授業で身につける知識や技術を超えた、自分の進路への気づきや発心につながる人生観を伝える授業を目指していきます。 

  • 【特別授業】ラインナップ・今後の豪華講師陣!

【特別授業ラインナップ】(N/S高の生徒限定の授業です)

【第四弾】

●10月24日開催 宮部みゆき(作家)× 京極夏彦(作家)

【実施決定】12月以降予定

●五代目 江戸屋猫八(演芸家/動物ものまね芸) 

●中野信子(脳科学者)      

さらに各分野にわたる豪華講師陣をラインナップ中  

【実施概要】 

■対象:N/S高に在籍する生徒 

■配信:ライブ配信を基本とし必要に応じて教室受講(リアル)も実施 

■講師:作家、漫画家、学者、ゲームクリエーター、映像作家、アーティストなど (生徒のニーズに合わせて) 

※講師が所属する施設やロケ地からのライブ配信なども予定  

※学園の生徒限定の授業だけでなく、広く一般に向けての授業公開も検討中

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