『クジラのまち 太地を語る──移民、ゴンドウ、南氷洋』刊行のお知らせ

英明企画編集株式会社

2023.10.18 14:46

小社では、赤嶺 淳 編著『クジラのまち 太地を語る──移民、ゴンドウ、南氷洋』(四六判352頁、1,800円+税)を刊行いたしました。

本書は、元捕鯨船員、漁師、ペンション経営者、主婦、海産物加工・販売業者など、和歌山県太地町に暮らす8名の生活史の「聞き書き」と食生活史研究者による解説をまとめたもので、鯨食・捕鯨をめぐってすれ違うまなざしの交差点を探り、複数の視点で捕鯨について考え、広くオープンに語りあう環境の構築をめざす一冊です。

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784909151810

聞き書きに取り組んだのは、編著者である赤嶺淳先生と一橋大学の大学院生たちです。太地町教育委員会の協力も得て推薦を受け、太地に生きる8名から話をうかがいました。

  • 「わたしね、南氷洋二五回、出漁してるんですよ。……南氷洋へ行くっていうのが若い人の望みだったからね」(元捕鯨船員・漁師)
  • 「船がかやった(ひっくりかえった)んだもん。落ちたんや、北洋の海に。『これはもうあかんな、死んだな』と思うたね」(元捕鯨船員・漁師)
  • 「ナガスの尾肉のすき焼きとかね。それは忘れられないわ」(元捕鯨船員・漁師)
  • 「僕の祖父が……ちょっと稼ぎに行ってくるちゅうことで……サンフランシスコからカナダのスティーブストンへ行ったんや」(元漁師・海産物加工業経験者)
  • 「たくさんの男たちが流されてね……その人らの命の代償だと思う、クジラの町としてやっていけるのは」(太地鯨組刃刺の子孫の女性)
  • 「(太地が)クジラで栄えたのは、この地形が生んだんだよね」(ペンション経営者の女性)
  • 「二度聞きしたもん。『イルカ? イルカ?』って……『食べるんだ』と思って……」

  (他府県から太地に来た主婦)

  • 「食べやすくないとダメなんだなっていうのは、やっぱり思います」(水産加工業者)

……など、知らず知らずのうちに引き込まれる8名の語りから、なぜ太地が「クジラのまち」になったのか、地勢的な要件、悲劇も含んだ歴史、移民や出稼ぎの送出地であった事実など、鯨食・捕鯨の背景にあるものが浮かび上がる内容です。

編著者の赤嶺淳による解説論考では、「捕鯨問題はすでに『捕る/捕らない』、『食べる/食べない』という単純な二項対立を超えて、科学や政治、倫理など、多様な問題が複雑に絡まりあった“捕鯨問題群”を形成するに至っている」という記述があります。本書を通じて鯨食・捕鯨への理解が深まり、多様な視点から“捕鯨問題群”について多くの人が考える一助になればと考えております。

とくに「太地を語る」8名の生活史は、独自性がありながら普遍性もある、味わい深いものです。ぜひご覧いただき、ご紹介・ご批評を賜りましたら、ありがたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

  • 書籍概要

書名……『クジラのまち 太地を語る――移民、ゴンドウ、南氷洋』

編著者……赤嶺 淳(あかみね じゅん)

ISBN……978-4-909151-81-0

判型・仕様……四六判、352頁、並製本

発行……英明企画編集、2023年8月26日刊

価格……1,800円+税

 

  • 編著者プロフィール

赤嶺 淳(あかみね じゅん)

1967年大分県うまれ。一橋大学大学院社会学研究科教授。専門は食生活誌学、食生活史研究。人間による環境利用の歴史をあきらかにするため、水産物の生産から加工、消費までのサプライチェーンの発展過程に着目し、「食からみた社会」、「社会のなかの食」の変容過程をあとづけてきた。おもな著作に『ナマコを歩く』(新泉社、2010年)、『鯨を生きる』(吉川弘文館、2017年)、「ノルウェーにおける沿岸小型捕鯨の歴史と変容」(『北海道立北方民族博物館紀要』29号、2020年)、「日本近代捕鯨史・序説」(『国立民族学博物館研究報告』47巻3号、2023年)など。

 

■目次

  • 太地をひらく………赤嶺 淳

 

■第Ⅰ部 太地を生きる

  • 1 南氷洋をおもう

①南氷洋、二五回出漁してるんですよ……網野俊哉さん

②大変な仕事やでぇ……濱田明也さん

③もう海しか知らないもん………小貝佳弘さん

  • 2 マッコウにあずかる

①足元は油まみれ……山下憲一さん

②あ~、腹ラーセンや……世古忠子さん

  • 3 太地をつなぐ

①舌は覚えているからね……久世滋子さん

②慣れ、慣れ、慣れ。……小畑美由紀さん

③なんでゴンドウしかいわんのか……由谷恭兵さん

 

■第Ⅱ部 太地を解く

  • すれちがうまなざし──個人史とグローバルヒストリーの交差点で……赤嶺 淳
  • かくれた主役──ゴンドウと歩む太地の捕鯨文化……ジェイ・アラバスター

 

■第Ⅲ部 太地を訊く

  • 幾重もの共同と協働──太地町プロジェクトをふりかえって……辛 承理
  • 太地にかかわる──あとがきにかえて………赤嶺 淳

 

 

 

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URL
https://www.eimei-information-design.com/
業種区分
教育・学習支援業
代表者名
松下貴弘
上場区分
未上場