「 植物 」と考える、まちのこれから。
『植物考』の著者・藤原辰史氏をキュレーターに迎え 建築家ユニットKASA率いる「小石川植物祭 2023」が 11月に開催決定。出展者を公募開始。
2023年11月3日(金)・4日(土)・5日(日)に「小石川植物祭 2023」の開催が決定した。
「街が植物園へやってきて、植物園が街へ広がっていく」をコンセプトにコヴァレヴァ・アレクサンドラ+佐藤敬による建築家ユニットKASA(東京
都文京区白山)によって起案され、東京大学大学院理学系研究科附属植物園(東京都文京区白山、通称「小石川植物園」)と共同で昨年秋初開催した
「小石川植物祭」。その経験をもとに今年「『植物』と考える、まちのこれから」をあらたなビジョンに掲げ、本格始動。年間を通じて「植物」を軸
にまちについて思考し、実践する場づくりを目的とした循環型のプロジェクトとして、「小石川植物祭実行員会」を立ち上げた。前回同様KASAが総合
ディレクターを務める。また、第2回となる「小石川植物祭 2023」の実施が決定。小石川植物園内を中心とした近隣地域を舞台に2023年11月3日から5
日の3日間にかけて開催される。
「小石川植物祭2023」では『植物考』の著者でもある京都大学人文科学研究所准教授・藤原辰史氏をキュレーターに迎え「“命名”―なぜ人は植物に名
を授けるのか」をテーマに出展者の募集を開始。「誰もが「植物」を学び、「植物」で学べる場をつくること」、「世代や分野を越えて、人や地域を
つなげること」、「まちの資源を発見し、新たな価値を創造すること」という3つのミッションを軸に、ART(アート)/PRODUCT(プロダクト)/
SHOP(物販)/WORKSHOP(体験)の4つの分野において出展プロジェクトを募集している。「小石川植物祭 2023」の公募要項の詳細と出展者応募
は小石川植物祭のウェブページより。公募締め切りは2023年5月31日(水)まで。
植物園と地域の店舗や住民が協働し、1万人近くの来場者が訪れた昨年の植物祭は、物語を楽しむように「香りを読む、植物を読む」インスタレーショ
ンをはじめ、間伐や倒木から出た廃材を活用した家具の製作、草花や枯れ枝などから抽出した色で染めたテキスタイルグッズ、園内の植物から抽出さ
れたドリンクを味わうカフェや、フィールドワークを通じた公開型の地図制作のワークショップなど、植物の魅力を再発見し、日常を楽しむきっかけ
や暮らしに繋げる企画・プロジェクト計17組が参加した。(2022年の参加プロジェクト一覧は小石川植物祭ウェブサイトにて紹介)
小石川植物祭 2023 テーマ
命名 ―なぜ人は植物に名を授けるのか―
生まれてきた赤ん坊に親は名前を授ける。赤ん坊は「名前」を選べないが、生涯にわたって「名前」はその子がその子であることの証となり、
出会った人々と関係を築く重要な役割を果たす。そこには親の子にこめた願い、親の享受してきた文化、親の尊敬する人間、そして親の生きて
きた時代など、さまざまな背景がその「名前」から浮かび上がる。
たとえば、サッカーの試合を、選手の名前を覚えて観戦すると、背番号だけを目で追って観戦するよりも格段にゲームの理解は深まる。ピッチ
を走り回る選手を名前によって唯一無二の存在として認定することで、その人の動きを他の人の動きと混同することなく追跡できる。それだけ
ではない。ゲームに至る経歴、とくに出身地や所属したチームなどが、その選手の理解に厚みを与えるのだ。
植物学者が植物に名前を授ける、という行為もまた、植物の理解を深めるのに欠かすことができない(動物でもそれは変わらないだろう)。
「国際藻類・菌類・植物命名規約」に沿って植物に授けられた名前は、学術雑誌掲載のための審査をクリアすれば、その後、唯一無二の名前と
して学界を流通する。そうでなければ、共通の議論が成り立たない。また、科学的に名付けられた名前には、分類の情報も同時に含意される。
それによって、たとえば外見が似ているだけの二種類の植物を同じものとして論じる過ちから植物学者たちを避けることが可能になる。日本の
植物学者の父、牧野富太郎もまた独特のセンスで数々の植物に名前をつけ、日本植物学の基礎を築いたことはよく知られているとおりだろう。
ただ、植物の命名が持つ意味を以上のような科学的手続きの問題としてのみ理解するとすれば、それは不十分である。西欧諸国がアフリカ、ア
メリカ、アジアなどの新しい植民地を発見し、採取して、自国の植物園で生育していく過程と命名行為は分かちがたく結びついていた。それ
は、現地で流通している植物名とは異なる名前をつけることを意味した。18世紀に植物分類・命名法を確立したカール・フォン・リンネは、採
取した現地の言葉を名前に入れようとするミシェル・アンダーソンのような植物学者を、「われわれの舌を使って発音できるものではない」と
批判したように(ロンダ・シービンガー『植物と帝国』工作舎)、現地の言葉とそれをめぐる背景はないがしろにされがちであった。
また、植物の命名には、植物学者の親族や愛人の名前が付けられることも少なからずあったように、植物名から植物学者の個人的な心情を読み
取ることさえできる。名前を知った上で、さらにその背景を知ることで、植物に対する理解はもっと深まるだろう。
ところが、由々しきことに、植物の名前が急速に人びとの記憶から消えつつある。私たちは、次第に「緑」とか「木々」という抽象的な言葉に
よって植物を遠くから「眺める」ことに終始しがちである。
もっと植物の名前を知ろう。私たちはどれだけ植物の名前を知っているだろうか。そしてもし自分が植物に名前をつけられるとしたら、どんな
名前を選ぶだろうか。とたんに植物を見つめるまなざしが変わることに気づくだろう。そして命名という行為の意味と背景を探ることは、その
植物が採取された当時の歴史を知り、立体的に植物を理解することを可能とするだけではない。ちょうど人間の名前を名乗ることから社会関係
が築かれていくのと同様に、植物との関係を新しく取り結ぶことにもつながるだろう。
約4000種の植物を保有する小石川植物園は、このような命名のもつ意味を考えるのに最適な場所である。ぜひ、小石川植物園、そしてこのまち
を歩き、そこに根を張る植物に名前があることと、その名前の由来を知ることで、植物をもっと深く理解していただければ幸いである。
小石川植物祭 2023 総合ディレクター
KASA / KOVALEVA AND SATO ARCHITECTS
カサ / コヴァレヴァ アンド サトウ アーキテクツ
日露建築家ユニット。主な作品に「ヴェネチア・ビエンナーレ ロシア館の改修」(ヴェネチア)、「小石川のアト
リエ」(東京)、「ものがみる夢 - 海の庭 と 島の庭 -」(香川 / 瀬戸内国際芸術祭伊吹島での作品)など。Under 35
Architects exhibition 2022「伊東豊雄賞」、第21回三重県文化賞「文化新人賞」、第17回ヴェネチア・ビエンナー
レ国際建築展2021「特別表彰」、第38回SDレビュー2019「鹿島賞」などを受賞。2022年より小石川植物祭を起
案発起し、総合ディレクターを務める。
https://www.kovalevasato.com
藤原辰史
Tatsushi Fujihara
1976年北海道生まれ、島根県出身。1999年京都大学総合人間学部卒業。2002年京都大学人間・環境学研究科中
退、同年京都大学人文科学研究所助手、東京大学農学生命科学研究科講師を経て、2013年より京都大学人文科
学研究所准教授。博士(人間・環境学)。主な著書に『ナチスのキッチン』(河合隼雄学芸賞)、『給食の歴
史』(辻静雄食文化賞)、『分解の哲学』(サントリー学芸賞)、『農の原理の史的研究』、『植物考』など。
2019年に、日本学術振興会賞受賞。
コヴァレヴァ・アレクサンドラ Aleksandra Kovaleva
1989年モスクワ生まれ。2014年モスクワ建築学校MARCH大学院修了。2014-19年石上純也建築設計事務所勤
務を経て、2019年KASAを設立(共同主宰)。2022-23年東京藝術大学嘱託研究員。
佐藤敬 Kei Sato
1987年三重県生まれ。2012年早稲田大学大学院修了(石山修武研究室)。2012-19年石上純也建築設計事務所勤
務を経て、2019年KASAを設立(共同主宰)。2020-22年横浜国立大学大学院Y-GSAにて設計助手。2023年より
横浜国立大学非常勤講師。
小石川植物祭 2023 キュレーター
藤原辰史
Tatsushi Fujihara
1976年北海道生まれ、島根県出身。1999年京都大学総合人間学部卒業。2002年京都大学人間・環境学研究科中
退、同年京都大学人文科学研究所助手、東京大学農学生命科学研究科講師を経て、2013年より京都大学人文科
学研究所准教授。博士(人間・環境学)。主な著書に『ナチスのキッチン』(河合隼雄学芸賞)、『給食の歴
史』(辻静雄食文化賞)、『分解の哲学』(サントリー学芸賞)、『農の原理の史的研究』、『植物考』など。
2019年に、日本学術振興会賞受賞。
「小石川植物祭」について
「小石川植物祭」は「植物」を軸にまちについて思考し、実践する場づ
くりを目的とした循環型のプロジェクト。コヴァレヴァ・アレクサンド
ラ+佐藤敬による建築家ユニットKASA(東京都文京区白山)が総合ディ
レクターを務め、東京大学の大学院理学系研究科附属植物園として植
物学の研究・教育を目的とする東京大学の施設「小石川植物園」の協
力のもと、まちの人たちとの協働により植物の魅力を「発見」、植物
を用いて「創作」し、開催日に「発表」し、街へ「波及」、4つの過
程を巡り街に様々な体験の循環をつくることを目指している。
ビジョン:
「植物」と考える、まちのこれから
The shape of the town with “plants”
ミッション:
1.誰もが「植物」を学び、「植物」で学べる場をつくる (人)
Create a place where everyone can learn about and from plants (People)
2.世代や分野を越えて、人や地域をつなげる (コミュニティ)
Connect people and communities across generations and disciplines (Community)
3.まちの資源を発見し、新たな価値を創造する (ブランド)
Discover the city’s resources and create new values (Brand)
プレス関係・問合せ先
小石川植物祭 2023
会場:小石川植物園と近隣地域
会期:2023年11月3日(金) - 11月5日(日)
主催:小石川植物祭実行委員会
協力:東京大学大学院理学系研究科附属植物園小石川植物園
助成:文京区社会福祉協議会Bチャレ(提案公募型協働事業)
申込〆切:5月31日(水)必着
*出展者公募は小石川植物祭の公式サイト
小石川植物祭 2023 03
小石川植物祭実行員会 事務局 KASA
〒112-0001 東京都文京区白山2-10-15
E-mail : koishikawabotanicalfestival@gmail.com
*本件に関する小石川植物園への直接の問合せはご遠慮ください。
*プレスキットダウンロードはこちら:https://cutt.ly/q5TDKzS
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