【FRONTIER】「宣伝をこだわり尽くす」藤井道人 監督×石山成人 宣伝P スペシャル対談 ~前編~
『ヴィレッジ』公開記念!!
藤井道人 監督×石山成人 宣伝プロデューサー スペシャル対談
映画業界の最前線で活躍する人々にインタビューする特別企画「FRONTIER 最前線」。
『新聞記者』で日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞し、昨年大ヒットとなった『余命10年』など、数々の話題作を手掛け、いま最も注目されている監督の一人である藤井道人監督。そんな監督が新たに手掛けたのは、「村」という閉ざされた世界を舞台に、そこで生きる人々のきれいごとだけでは生きていけないリアルな姿を、圧倒的な映像美と世界観で描き、現代日本が抱える闇をあぶり出す衝撃のサスペンス・エンタテインメント『ヴィレッジ』。
今回は、『ヴィレッジ』の公開を記念し、藤井道人監督と、同作の宣伝プロデューサーを務める石山成人さん(映画宣伝プロデュース集団KICCORIT所属)とのスペシャル対談が実現。
前編では、藤井監督とは『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』『余命10年』に続いて、今回が4度目のタッグとなる石山さんだからこそ知る、藤井監督作品の魅力や、ここでしか聞けない『ヴィレッジ』の宣伝の裏話について語ってもらった。
藤井監督作品のキーワードは“青春”⁉
『ヴィレッジ』では日本の縮図を描きたかったという藤井監督。一方で、宣伝プロデューサーの石山さんは、本作を宣伝するにあたり、藤井監督作品に共通する、あるキーワードに注目しているようだ。
(藤井道人監督)
KIQ:謎めいた世界観や映像がとても素晴らしかったです。古典芸能である“能”が用いられていたり、“村”を舞台にした特殊な世界観ではありながらも、若者が自分ごととして見ることのできる要素がある作品だなと思いました。そういった点について意識されたことはありますか。
藤井:『ヴィレッジ』というタイトルですが、どこか特定の村を描きたかったわけじゃなくて、日本社会の縮図を描きたかったんです。コミュニティはどこにでも存在していて、組織ができてしまうとそこでの大義によって事情や、執着しなきゃいけない立場ができてしまったりすることがあると思うんですけど、そういうことに対してみんなが同調していくことに、最近は違和感がなくなってきているんじゃないのかなと。この企画の立ち上げはそういったところだったんです。なので、誰しもが共感できる部分がある作品になっているのではないかと思います。
KIQ:一方で、宣伝としては、本作のような暗い雰囲気や辛い場面が多い作品を宣伝するのは比較的難しいのではないかと思うのですが、石山さんは本作の宣伝担当されてみて、いかがでしたか。
石山:確かに、宣伝担当者としては“辛い”“重い”というような作品は避けたいところではあります。ただ、そこを完全に避けて、オブラートに包んで宣伝してしまうと、ストーリーの面白さが伝わらないんじゃないかなという気もちょっとしていて…。例えば、先ほど藤井監督からお話があった “今の日本の縮図”という表現だと、なんだかすごく社会的なものに見えてしまうんです。ですが、これまでの作品も含めて、藤井監督の作品の特徴は、実は“青春”、しかも割とダークな青春像なんですよ。日本の若者の誰もが思っているようなことを描いているんです。それに、若者が苦労している話って、意外に結構幅広い年代の人が感情移入して観ることのできる題材ではないかなと思っているので、僕はこの作品のそういう青春っぽいところを重視して、売っていきたいなと考えています。
KIQ:“青春”というキーワードが出てきましたが、藤井監督いかがですか?
藤井:新しいキーワードですね、初めて聞きました(笑)
石山:はい、初めて言いました(笑)いや、ほら『余命10年』も『ヴィレッジ』も、足の踏み場もないような汚い部屋が出てくるじゃないですか。そんな風に人生というか、目の前の状況に対して「なんでこんなになっちゃってんだよ、俺」というような気持ちとか、日々の生活に出口がなくて腐ってしまったりするようなことって、誰もが特に若い時に経験したことがあるのでないかと思うんです。なので、“青春”って言葉が正しいかどうかはわからないですけど、そういう人たちに寄り添って宣伝していくのがいいのかなと。実は、『余命10年』の客層を性年代別でみてみると、公開後に最も高い意欲度を示していたのが女性20代で、次に女性10代に火が付き、3番目は女性30代かと思いきや、実は男性10代なんですよ。だから、普段はアニメしか観ないような男性が自分たちのストーリーだと思って観てくれたというところが、実際に結構あって。
藤井:そうなんですよね。
映画は、総合芸術だ。
本作のポスターは、能の舞台を背景に、登場人物たちが意味深なまなざしでじっとこちらを見つめているという、強く記憶に焼き付くようなデザインとなっている。藤井監督がこれまでも宣材の一つ一つに強くこだわってきた理由とは―。
(『ヴィレッジ』宣伝プロデューサー・石山成人さん(左))
KIQ:藤井監督は、宣伝について普段から結構意見を交わされたりするんですか。
石山:すごくされますね(笑)
藤井:しますね(笑)やっぱり、自分たちは作品を届けるためにやっているから、誰かに観てもらってこその映画だと思っていて。だから、1人でも多くの人に観てもらうためには、どういう努力が必要なのだろうとか、どういう宣伝が今効果的なのだろというのは普段から勉強しますね。結局、宣伝で得するのも損するのも、監督や主演だったりするんですよね。なので、劇場で映画をかけるなら本当に最重要なのは宣伝です!だからこそ、自分の作品の宣伝においても思ったことはちゃんと言います。
KIQ:監督の作品は、ポスターなど1度見たら忘れられないようなビジュアルのものが多いように感じます。本作もかなりこだわられたのですか?
(『ヴィレッジ』ティザービジュアル(左)、ポスタービジュアル(右))
藤井:今回は、石山さんとチラシのビジュアルなどはある程度イメージを固めてからクランクインしましたね。
石山:そうですね、こういうビジュアルがいいよねというのは、監督とずっと話していましたね。で、いろいろな案をあげていく中で、これだとちょっと重すぎるかなとか、これだとターゲットへの訴えかけが弱いかなというところは、宣伝的なスキルの部分もあるので、最終的に宣伝チームで調整していきました。
KIQ:結構早い段階からビジュアルのイメージを決められているのですね。今回は特に英字で『VILLAGE』と大きく入っているところにインパクトを感じましたが、こちらも何か意図があったのでしょうか?
石山:はい、英語の方が軽い印象になるので、いろんな人に受け入れやすいのではないかと思いました。やや重めで、暗めで、ミステリアスなビジュアルとの相性もよかったので、最終的にこのデザインになりました。
藤井:本当に今作もポスターひとつとっても、どれも素晴らしい出来ですよね。映画ってそういう1個1個の美意識が集った総合芸術だと思っているので、石山さんのようなこだわりがある人たちの、こだわりのある宣伝戦略はこちらもやっていて楽しいです。
後編では、業界の最前線で活躍するお2人が、現在の日本の映画宣伝について感じていること、そして、次々と話題作を生み出す藤井監督の魅力について、石山さんが語った内容をお届けする。
【Information】
『ヴィレッジ』4月21日(金)全国公開
閉ざされた世界。閉ざされた心。やがて、一炊の夢から醒める。
夜霧が幻想的な、とある日本の集落・霞門村。神秘的な「薪能」の儀式が行われている近くの山には、巨大なゴミの最終処分場がそびえ立つ。幼い頃より霞門村に住む片山優は、美しい村にとって異彩を放つこの施設で働いているが、母親が抱えた借金の支払いに追われ希望のない日々を送っている。かつて父親がこの村で起こした事件の汚名を背負い、その罪を肩代わりするようにして生きてきた優には、人生の選択肢などなかった。そんなある日、幼馴染の美咲が東京から戻ったことをきっかけに物語は大きく動き出す――。
出演:横浜流星、黒木華、一ノ瀬ワタル、奥平大兼、作間龍斗 ほか
監督・脚本:藤井道人 音楽:岩代太郎
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
配給:KADOKAWA/スターサンズ ©️2023「ヴィレッジ」製作委員会
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