妊婦のワクチン接種はオミクロン変異株によるCOVID-19の重症化や妊娠合併症のリスク低減に有効

学校法人慈恵大学

2023.02.02 12:03

東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座 助教 髙橋健らが参加する国際研究チームINTERCOVID-2022 International Consortiumは、妊婦における新型コロナウイルスワクチン接種が、オミクロン変異株による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化や周産期転帰に与える影響について世界18カ国・41の病院で調査を実施しました。この結果、ワクチン接種によりCOVID-19から母児を効果的に保護できることが判明しました。

東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座 助教 髙橋健らが参加する国際研究チームINTERCOVID-2022 International Consortiumは、妊婦における新型コロナウイルスワクチン接種が、オミクロン変異株による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化や周産期転帰に与える影響について世界18カ国・41の病院で調査を実施しました。この結果、ワクチン接種によりCOVID-19から母児を効果的に保護できることが判明しました。

 

依然としてCOVID-19のパンデミックが続く中、今回の研究結果は妊婦への新型コロナウイルスワクチン接種の重要性を改めて示すものであり、世界中の妊婦の管理指針に影響を与えるものと考えられます。

本研究の成果は世界五大医学雑誌の一つであるThe Lancetに2023年1月17日に掲載されました。

 

ポイント:

  1. 妊婦がワクチン接種を受けていなかった場合、母体の重症化、重度の周産期合併症、母体死亡のリスクが増加しました。COVID-19の症状が重度の妊婦では妊娠高血圧腎症のリスクが有意に増加し、特に有症状かつ重度の肥満妊婦では母体の重症化、周産期合併症のリスクが最も高くなりました。
  2. ワクチン接種を受けた妊婦は、重症化や周産期合併症が予防され、集中治療室に入院するリスクが非常に低くなりました。
  3. 妊婦にはmRNA ワクチンがCOVID-19 の重症化と周産期合併症の予防に最も効果的でしたが、ウイルスベクターワクチンも十分な予防効果がありました。また、mRNAワクチンとウイルスベクターワクチン共に、最後のブースター接種から少なくとも10ヶ月は予防効果があることがわかりました。

妊婦がCOVID-19 の重症化と周産期合併症を予防するには、十分なワクチン接種を受ける必要があり、可能であればブースター接種も行う必要があると言えます。


今回の研究は、オミクロン変異株のCOVID-19が母体および新生児に与える影響を評価するため、オックスフォード大学のOxford Maternal and Perinatal Health Instituteが主導する国際共同研究として、オミクロン変異株の感染が流行していた2021 年 11 月 27 日から 2022 年 6 月 30 日の間、世界18カ国、41の病院で実施しました。期間中オミクロン変異株によるCOVID-19に罹患した妊婦1,545人及び罹患していない3,073人の妊婦について比較し調査しました。また変異株に対するワクチンの有効性も評価しました。

 

本研究成果:

Vaccination provides effective protection against increased risk of pregnancy complications due to COVID-19 Omicron variant, The Lancet. 2023 Jan 17;S0140-6736(22)02467-9

URL : https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(22)02467-9/fulltext 

 

 

メンバー、コメント:

オックスフォード大学 周産期医学分野 José Villar教授のコメント:

「私たちは、オミクロン変異株によるCOVID-19がもたらす重度の母体合併症は、有症状のワクチン接種を受けていない妊婦で特にリスクが増加するという、確固たる証拠に基づく情報を提供しました。懸念されることは、妊娠中にオミクロン変異株によるCOVID-19と診断されたワクチン未接種の妊婦のうち、4% から7%で、COVID-19の重篤な症状が発生したことです。 この研究は、妊娠中の十分なワクチン接種の必要性を明確に示しており、またブースター接種を行えば最後の接種から少なくとも10か月間は妊婦を保護することができます。 世界中の周産期診療の場において、妊婦の定期的な健診の中にCOVID-19 に対するワクチン接種を含めるよう努めるべきです。」

 

オックスフォード大学 胎児医学分野Aris Papageorghiou教授のコメント:

「オミクロン変異株は、一般集団においては以前の株よりも害が少ないかもしれませんが、世界中の予防接種を受けていない妊婦の大部分は依然として大きなリスクにさらされています。どの患者が重篤な症状や合併症を発症するかを予測することは不可能であるため、普遍的な十分なワクチン接種が必要です。残念なことに、妊娠中の女性に対する十分なワクチン接種は、先進国でさえまだ十分ではありません。」

 

オックスフォード大学 生殖医学分野Stephen Kennedy教授のコメント:

「今回の研究は、よくデザインされた国際共同研究が、世界中の母親と赤ちゃんの健康を改善する確固たる証拠を極短期間のうちに提供できることを示した輝かしい例です。この研究と以前のINTERCOVID study(以下の研究成果一覧を参照)からの知見は、全ての妊婦に対し予防接種を推奨するという臨床診療と公衆衛生政策の決定に貢献しました。私たちの取り組みが、パンデミックとワクチンの有効性に関して広まっている、誤った情報を否定するのに役立つことを願っています。」

   

INTERCOVID projectの研究成果一覧:

  1. 'Maternal and Neonatal Morbidity and Mortality Among Pregnant Women With and Without COVID-19 Infection: The INTERCOVID Multinational Cohort Study', JAMA Pediatrics.
  2. 'Preeclampsia and COVID-19: results from the INTERCOVID prospective longitudinal study', American Journal of Obstetrics and Gynecology.
  3. 'Effect of prenatal exposure to maternal COVID-19 and perinatal care on neonatal outcome: results from the INTERCOVID Multinational Cohort Study',  American Journal of Obstetrics and Gynecology.
  4. 'Diabetes mellitus, maternal adiposity, and insulin dependent gestational diabetes are associated with COVID-19 in pregnancy: the INTERCOVID study',  American Journal of Obstetrics and Gynecology.

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種類
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カテゴリ
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