バイオフィルムを数秒で透明化する新技術「iCBiofilm」を開発
~内部の微細構造や生きたままの微生物を深部まで観察することが可能に~
東京慈恵会医科大学細菌学講座の杉本真也准教授と金城雄樹教授は、難治性感染症の発症や水浄化システムの機能低下などの原因となる微生物の集合体であるバイオフィルムを、内部の微生物が生きたままの状態で瞬時に透明にして顕微鏡で観察する世界初の新技術iCBiofilm(アイ・シー・バイオフィルム)法を開発しました。
東京慈恵会医科大学細菌学講座の杉本真也准教授と金城雄樹教授は、難治性感染症の発症や水浄化システムの機能低下などの原因となる微生物の集合体であるバイオフィルムを、内部の微生物が生きたままの状態で瞬時に透明にして顕微鏡で観察する世界初の新技術iCBiofilm(アイ・シー・バイオフィルム)法を開発しました。
従来の光学顕微鏡法では、光の散乱や屈折によりバイオフィルムの表面から20マイクロメートル程度の深さまでしか観察できず、その全体像や内部の微細な構造を観察することは極めて困難でした。iCBiofilm法は、500マイクロメートルを超えるような分厚いバイオフィルムでも観察することが可能であり、世界最高性能の深部イメージングを実現しました。また、iCBiofilm法を応用することで、微生物が生きたままの状態で透明にすることが可能になり、その形成過程や抗菌物質の殺菌作用を詳しく解析できるようになりました。それらにより構造や機能に対する理解が飛躍的に高まり、これまで困難とされてきた難治性バイオフィルム感染症治療法の開発や水浄化システムの高効率化など、様々な分野での社会実装に繋がると期待されます。
研究成果の概要
- バイオフィルムを生きたままの状態で瞬時(数秒以内)に透明にできるiCBiofilm法を開発し、製品化しました。
- iCBiofilm法は様々な微生物(細菌および真菌)のバイオフィルムに使用でき、その構成成分(微生物細胞、タンパク質、多糖類、DNAなど)の分布を、空間配置を壊さず可視化できます。
- iCBiofilm法は、従来の組織透明化法では不可能であった透明化3Dライブセルイメージングを実施することも可能であり、バイオフィルムの形成過程や抗菌物質の作用を解析できます。
今後の取り組み
今回の研究成果を医学の分野で活用し、ヒトの組織表面や体内に埋め込まれた医療デバイスに形成されたバイオフィルムの観察を現在進めています。また、本研究成果は水浄化システムの濾過膜の表面、住環境(バスタブや台所)、および発酵食品の製造過程などで形成されたバイオフィルムの観察にも応用できると考えています。さらに、今回の研究成果をもとに、スフェロイドやオルガノイドなどの動植物細胞の集塊のようなバイオフィルム以外の生体試料も透明化できる「3Dライブセルイメージング法」の開発を目指した新たなプロジェクトを立ち上げる予定です。なお、本研究成果をもとにしたバイオフィルム透明化試薬「iCBiofilm―H1」および「iCBiofilm―H2」は、東京化成工業株式会社より製品化されています。
本研究の成果は2023年1月23日19時(日本時間)、Communications Biology誌に掲載されました。
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