【感謝の気持ち】<恩返しと恩送り>個人で特許出願体験記【∞】

合同会社リボーン

2022.12.15 10:39

2014年から2016年の2年間に渡る実体験を綴る特許にまつわる彼是(アレコレ)完結編

エキゾチックレザーを使った個性的な財布を提案するブランド「リボーン」を展開する合同会社リボーン(本社:東京都台東区、CEO:高島成央)が、自身の体験を基にした初物づくしの特許出願ドラマチックストーリー第十三話

 

【感謝の気持ち】<恩返しと恩送り>

新しい審査官との面接で、手ごたえを感じた旨と共に審査官の方からいただいたアドバイスなども含めて一部始終を“Mさん”にご報告して明細書の読み直しと訂正の毎日です。

 【請求項】を補正しなければならず、呼応している明細書も補正して補正した箇所には下線をひいて、何度も読み直しては補正の繰り返しでしたが希望の光が見えてきたので、辛くは感じませんでした。

ゴールに向けて最終形態を見据えて煮詰めていく作業。

 

お忙しい合間を縫って“Mさん”から補正案や補正する際の注意事項などを教えていただきながら期日前に間に合うように補正書を仕上げていきました。

その際も非常に些細な疑問や稚拙な質問なども“Mさん”に質問させていただきましたが、全ての問いかけに対して快く返答してくださったことも大変有り難かったです。

 

そしてついに7月15日(金)完成した【補正書】【意見書】を手に特許庁に持参して提出。


帰り道はやはり日枝神社に参拝とご報告をして、階段の上から赤坂の街をボーっと眺めながら

この時は、‘やれることは全てやり尽くした’ ので後悔や未練といった感情はありませんでした。

唯々肩の荷がおりてホッとしたような….そんな気持ちでいました。

 



審査結果は、数週間程度で送付されると伺っていたのですが、一か月経っても送られてくることがなかったので、少しだけ不安な気持ちになりました。



もしかしたら、何か不備が見つかったのか?それとも?・・・・

 


そんな頃に不思議な夢を見ました。


以前母が住んでいた家の近くにお地蔵さんがあり、いつも行くとそこでお参りしていたのですが、夢の舞台はそのお地蔵さんがある非常に狭い石畳でした。


そこで三匹の魚の神様が何者かと戦う夢で、3対3の戦いでした。


魚の神様の一番手が相打ちで、二番手が健闘して相手のボスを引きずり出そものの、もう少しで勝てそうなところで負けてしまいます。

最後に残された魚の神様が瀕死のボスを打ち取って終わるのですが、相手方の3匹と神様の味方2匹が、天に昇っていくのを自分が見つめているところで目が覚めました。


何となく良いことが起こるような予感を感じました。
 



特許査定

 

8月も終わりを告げた9月8日に特許庁からの郵便物が届きます。


淡い期待と共に、前回の時の記憶が甦ります。
 

深呼吸をして気持ちを落ち着けて開封すると、そこには【特許査定】の文字がありました。


何度読み返しても【拒絶理由通知】の文字はなく【特許査定】と記してありました。


この時ばかりは感無量というか、やっと辿り着けたという達成感と、“Mさん”への多大なる感謝の気持ちと……素直に嬉しかったです。

 

さっそく“Mさん”に、特許査定のご報告と共に、言葉では言い尽くせぬ程のご尽力を頂いた事への感謝の気持ちを伝えさせていただきました。


“Mさん”からは
 

『特許査定やっと来ましたか。少し時間がかかっているので心配していました。

 なにはともあれおめでとうございます。』
 

とのお言葉をいただいて恐悦至極でした。
 


感謝の気持ち

 

大変お世話になった“Mさん”に今まで何の御礼もできていないので御礼をさせて下さいと申し出たところ“Mさん”から


『ご報告ありがとうございます。

  お礼などお気遣い無く。御社の事業が順調に発展することが何よりです。』

とのご返答をいただきました。


“Mさんと出会うことができたこと” そのことがまさに奇跡なんだと思います。



弁理士会館で初めてお会いしたとき、Mさんが『請求項を僕が考えてあげる』と言った理由について、“請求項以外の明細書の部分がしっかりとしていたから”だと仰られたことがありました。

【発明会館】【弁理士会館】でお会いした方々から頂いたアドバイス一つひとつを、必ず明細書に反映させていたことが少しずつ実っていったのかもしれません。

ド素人が作った明細書がプロの方々のご意見を頂戴して、その都度明細書を書き直していったことによって少しずつ当初よりはマシなものになっていったのかな?…と思います。

 

もちろんそれ以上に、“Mさん”の人間的な寛容さがあってこそのご提案であったことには言葉に尽くせぬ感謝しかございません。


一つとしてムダな出会いはありませんでしたし、そのどれが欠けても結果は違ったものになっていたかもしれません。


“Mさん”へのご恩返しも、もちろんですが、あの時の自分のように何かのアイディアを思いついた方、何かを始めたいと思いながらも迷っている方が最初の一歩を踏み出すキッカケ、若しくはヒントになってもらえれば….そう思って、この特許編を執筆した次第です。


中秋の名月


最初は自分の頭の中だけにしかなかったものが、最初の一歩を踏み出したことによって沢山の方々と出会うことができました。


そして出会った全ての方々に支えられ、助けられてここまでくることができました。

今まで出会えた方々の誰か一人が欠けても結果は違ったものになっていたかもしれません。
 

 

人間はひとりでは何もできないことを教えていただきましたし“Mさん”の存在がなければここまで辿り着けることは出来ませんでした。



これを99,999人の方が読んでも、何の参考にもならないし、つまらなく感じるかもしれません。

でも、いつか誰かの背中を押すキッカケ、何かのヒントになってもらえればと思っています。

 

【特許査定】の通知から一週間後の2016年9月15日に、特許庁へ行って特許料の納付をしてきました。

とうとう特許の権利が実現した日です。

2007年に他界した父の命日である“中秋の名月”がこの年は9月15日だったので、生きているうちには何の恩返しもできずにいた父への、せめてもの感謝の気持ちでこの日にしました。

 

そして今まで何度となく通った【発明会館】や【弁理士会館】を辿りながら、今までの出会いや、お世話になった方々への感謝の気持ちや、その時のことなどを思い出しながら歩いて特許庁に御礼を告げると、いつもの道を辿って日枝神社へ。

階段を踏みしめながら上って参拝、今までの御礼とご報告をすませて、日枝神社の階段から今までのことを想い出していました。


恩返しと恩送り


【特許取得を絶対目標】としていたのには理由がありました。

2007年に父が亡くなり母が代表を引き継いでいた会社でしたが、父の代の売り先の会社社長の突然死による売掛金の未回収や、フロリダに展開していたアリゲーターの皮鞣し工場の失敗による負債が残されていました。

父が亡くなってから暫くの間は、母とは会社の経営方針の違いなどからの対立もありコミュニケーションもままなりませんでした、ある日詳細を知り父の作った会社と、母を護るための“傘”として考えたのが特許でした。


かといって当時は弁理士に依頼できる状況ではなかったので、‘自分でやるしかない’ そう思って最初の一歩を踏み出しました。

 

その後、様々な方々との出会いがありアドバイスやアィディア、叱咤や激励などをいただき、その出会い全てが血と成り肉と成っていきました。

(弁理士会館でお会いしたときに “Mさん” にだけは自分の置かれている状況を打ち明けていました)


ホームページ制作と特許書類作成、製品のデザインなどを並行して行っていたのですが、そんな自分を見て母が変わっていくのがわかりました。

お昼ごはんを買いに行く時間も惜しんでいた自分のために、お弁当を買ってきてくれるようになり、お互いに少しずつコミュニケーションを図るようになってきて、本当に良い雰囲気になりかかっていた…そんな矢先に母の末期ガンが宣告されたのです。


母が、がんの宣告を受けるほんの数日前に、チラシをみて買ってきてくれた二人で食べた最後のお昼ごはん “キジ丼” を、あの日のことは一生忘れないでしょう。

 

自分もショックでしたが、誰よりも母の受けたショックは計り知れないものがあったと思います。

 

『なんで私が・・・』そう呟いている母がいました。
 


“姉や兄と相談して最終的な治療方針の決定をして欲しい”と母から任された自分は、気休めでも良いからとガンについて勉強し民間療法を検索したり、ガン治療についての病院などを探して病院を訪ねたりしながら、入院中の母のもとを1週間に3、4回ほど訪ねていたのですが、この頃が一番コミュニケーションを取っていました。

その昔…西暦2000年頃、父に、ジンバブエに象皮の落札に同行させてもらったことがありました。(思えばこの旅行が父との最後の旅行となりました)


象皮の落札後ビクトリアの滝を二人で見に行き、帰国した時に母が “ギランバレー症候群” で入院していました。

ギランバレー症候群は、免疫システムが自己の末梢神経を攻撃する稀な疾患で、当時の母は両手足の自由が利かなくなっている状態でした。

10万人に1~2人がかかる病気と言われていて、病院を退院した後も、最後まで薬を飲み続けていました。
 

ガンもですが、人間の免疫力に “深呼吸” が効果的だと何かに書いてあったので、自分が母にそのことを伝えた翌日、病院に行くと母が嬉しそうに  『深呼吸ができたこと』  

また 『深呼吸をすることの気持ち良さと、ギランバレーの発症以降、深呼吸をしていなかったことを、深呼吸をしてみて自分で理解してビックリした!』 …

などのことも話してくれて嬉しかったことを覚えています。

病院に行くといつも“母を笑わせること”ばかり考えていました。

お互いに笑いながら話しもできたので、短かったけれどある意味幸せな、良い時間を過ごすことができました。


“Mさん”への感謝も度々口にしていました。




でもそんな母も、もう居ない・・・





“傘”は、やっと手に入れられたのに、その“傘”で護る人はもういないんだな・・・



そんなことを想いながら。


 

『ごめんね、間に合わなかった・・・』




そう呟いたときに



 

『これからはその傘で子供たちを護ってあげて』 




そう言われたような気がしました。






ちょっぴり切なさが晴れた気がした2016年9月15日 “中秋の名月” の日のことでした。








終わり






【最後に】

今回の特許取得にあたって “Mさん” を始めとして自分のわがままを聞いて製作していただいた職人さんや協力してくださったファスナー屋の社長、何も知らなかった自分に対して寛容に接してくださった特許庁の方々、審査官の方々、【発明会館】の方々、【弁理士会館】の方々、応援して激励の言葉を掛けてくださった友人知人の皆さま、その他関わり合った全ての方々に御礼と感謝申し上げます。

自分ひとりでは何もできないのだということを教えていただきました。

本当に有り難う御座いました。

最後になりますが、沢山のメールのやり取りをしていただいた “Mさん” から送って送って頂いた文章の一部を抜粋して記載させていただきます。


いつも『こんにちは、がんばってますか』で始まるメールに、どれほどの勇気と希望をいただいていたことか計り知れませんでした。

本当に“Mさん”からのメールは感謝の言葉が見つからぬ程に感じておりましたし、自分の活力でした。

 

◆“Mさん”の貴重な財産であり、私自身の貴重な財産の一部であると認識しておりますが、“Mさん” にお世話になった自分がいたから現在の自分が存在できているのだと思っています。

(Mさんから掲載のご許可をいただいております)

もしもご自分で道を切り開こうとしている方がいらっしゃったなら、些細なヒントにでもなればと思ったので掲載させていただきます。





こんにちは。がんばってますか。

 

○請求項に対応する文言はほぼそのまま、全請求項につき【課題を解決するための手段】の項目に記載してください。
 (例)

第1の発明は、・・・を特徴とする収納具である。

・・・・・

第3の発明は、前記第1または第2の発明において、・・・したことを特徴とする収納具である。


その他、以下のような明細書を記載するうえでのセオリーがあるので、これを参考に明細書を記載してください。


1・請求項に上位概念で記載した構成(本発明の場合は「連結部材」「収納部」など)は実施の形態(または実施例・・・本発明ではどちらでもよい)の説明にて必ず具体例を2つ以上例示すること。

たとえば「連結部材」としてファスナーしか記載していないと、審査官から「連結部材では抽象的なので請求項の記載をファスナーに限定せよ」のような補正指令を受けてしまうことがあります。実施するかどうか、実用的かどうかはこの際度外視して、たとえば連結部材であればホック式、スライドレール式、磁石式など、思いつく限り具体例を挙げてください。


2・【発明の効果】の記載について。この項目には本発明の基本的な効果のみを記載すればよいが、請求の範囲に記載した各請求項の構成による効果は実施の形態のところでできるだけ(考えつく限り)記載すること。


3・実施の形態での具体的構成はできるだけ図面を使って説明すること。

出願後の明細書の記載を補正することは現行法では厳しく制限されており、最初に提出した明細書や図面に記載していなかったことは(効果なども)、いっさい追加することができません。ただし図面にしっかりと描いてあれば、万が一言葉が足りなかった場合にその図面を根拠に書き加えることが可能になります。


4・請求項と実施の形態による具体的構成とが1対1で対応している必要は無いが、実施の形態の記載で請求項の内容と効果がすべて網羅されるように注意すること。

 

こんなところです。これを参考に明細書をひととおり完成させてみてください。

健闘を祈ります。

 

上記抜粋部分は、沢山のやり取りをさせていただいていたほんの一部ですが、“Mさん” の存在がなければ結果は違ったものになっていたであろうことは想像に難くありませんでした。



■長くなりましたが最後までお読み頂き、有難うございました。





あなたの日常が素敵でかけがえのないものでありますように願いを篭めて。

 

 

 

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