異性愛者(ストレート)はかわいそう? 同性愛者の研究者が問いただす、新時代のパートナーシップ論『異性愛という悲劇』が発売

株式会社 太田出版

2024.11.06 11:00

太田出版では、ジェーン・ウォード(著)、安達眞弓(訳)による書籍『異性愛という悲劇』を、2024年11月21日(木)に刊行いたします。

同性愛者の視点からはハッキリとみえている、異性愛者(ストレート)の文化が抱えている深刻な問題。本書は、それら問題を同性愛者の研究者が提起した、“新時代のパートナーシップ論”です。装丁およびPOPデザインは水戸部功が担当しています。

あなたはこれからも、怠け者で思いやりに欠け、
腹を割って話せる友人もおらず、セラピーにも通おうとしない、
子育て並みに手のかかる、ケア目当ての男性と交際したいですか?

異性愛の文化の中で人気を博す映画・ドラマ、恋愛指南書の変遷、ナンパ教室でのフィールドワーク、クィアの仲間たちへのインタビューを通して、同性愛者(レズビアン)の研究者がまなざす、異性愛という悲惨な異文化の正体。世界をひっくり返す、新時代のパートナーシップ論!

異性愛者の皆さんが心配だ。これは私ひとりだけの意見ではない。私たちクィアは、以前から異性愛者の文化に危うさを感じていた。異性愛者が同性愛者を忌み嫌い、暴力を振るい、クィアなサブカルチャーをなかったことにしようとするなど自分たちに被害がおよぶのを怖れるだけではなく、異性愛者の女性を抑圧する異性愛の文化に困惑し、頭を抱え続けてきた。
性的にそそられないとか生意気だとか、稚拙なメディアや自己啓発プロジェクトが作った女性を貶める陳腐なイメージが長年にわたってまかり通っている。男性が女性を性のはけ口にして、自分たちの不満を解消するようなセックスは、どう考えても理にかなっておらず、クィアの多くが異性愛者の文化に戸惑いを覚え、もっとはっきり言えば、吐き気を催すほど嫌悪している。
しかし、私たちが異性愛者の文化を心配したり、異性愛者が異性に欲情するのを否定したり、人類のあらゆる性的指向を論じたりすることは、異性愛者たちからすればわずらわしいだけだとよく知っているので、クィアがあえてこの問題に口を出すことはない。
異性愛者の人たちが心配だなんて、私は考えすぎだろうか?(本文より)

目次

第1章【異性愛/ヘテロセクシャル】を定義する

異性愛という悲劇/異性愛者の悲劇:レズビアンのフェミニストは、こう分析する/証拠は山のようにある/【異性愛者/ヘテロセクシャル】の女性は大丈夫?/家父長制と異性愛規範の交差点/【女性嫌悪/ミソジニー】のパラドックス/次章以降について

第2章 そんな彼なら捨てちゃえば?
――【女性嫌悪/ミソジニー】のパラドックス

【異性愛者/ストレート】でいるのも楽じゃない/20世紀初頭――男女が憎みあった時代/20世紀半ば――女性をあからさまに低く見る/20世紀末――自己啓発書に翻弄される異性愛者たち/そんな彼なら捨てちゃえば?/100年続いた異性愛のキャンペーン

第3章 ナンパアーティスト
――モテ講座に潜入する

ナンパビジネスのルーツ、ナンパアーティストとは/ここにもミソジニーのパラドックスが/共感し安心できる関係の構築――うまくいく(と思われる)口説きのテクニック/男らしさとセックスでの主導権を握ることとの関係性/変わりつつあるモテビジネス:モテ新時代の到来、グローバル化、そして、ポップ・フェミニスト/それでも悲劇は続く

第4章 吐きそうなほど退屈な毎日
――クィアの目から見た異性愛という悲劇

異性愛は退屈である/どうしてここまで嫌う?――異性愛者の男女の悲哀/異性愛者の男性はクズ(異性愛者の女性はクズを助長させる存在)/想像力の欠如/異性愛者の儀式/ストレートは忘れっぽく、まなざしが容赦ない/セックスは下手なのに外性 器の形にはこだわる/異性愛者にもいいところはある

第5章 包容力のある異性愛
――これからの【異性愛者/ストレート】の姿

ディープ・ヘテロセクシュアリティ――包容力のある異性愛/ストレートを選んだ説明責任/女性、または女性を同一化する男性を好きになるということ/きっとみんな幸せになれる

謝辞

解説 トミヤマユキコ

原註

執筆者プロフィール

著:ジェーン・ウォード(Jane Ward)
カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授(フェミニスト研究)。著書に『Not Gay: Sex Between Straight White Men』(New York University Press、2015年)、『Respectably Queer: Diversity Culture in LGBT Activist Organizations』(同)がある。

訳:安達眞弓(あだち・まゆみ)
宮城県出身、外資系メーカー広報を経てフリーの翻訳者に。訳書に、ジェフ・シャーレット『この、あざやかな闇』、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック 女子刑務所での13ヵ月』(共訳)(以上駒草出版)、タン・フランス『僕は僕のままで』、ジョナサン・ヴァン・ネス『どんなわたしも愛してる』(以上集英社)、ディーン・ジョーブ『ヴィクトリア朝の毒殺魔』(以上亜紀書房)など多数。

解説:トミヤマユキコ
ライター/マンガ研究者。1979年、秋田県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、早稲田大学大学院文学研究科に進み、少女マンガにおける女性労働表象の研究で博士号(文学)取得。現在、東北芸術工科大学芸術学部准教授。ライターとして、日本の文学、マンガ、フードカルチャーなどについて書く一方、大学教員として、少女マンガ研究を中心としたサブカルチャー関連講義を担当している。2021年から手塚治虫文化賞選考委員。24年からNHK高校講座「家庭総合」(NHK Eテレ)でMC。主な著書に『バディ入門』(大和書房)、『労働系女子マンガ論!』(タバブックス)、『女子マンガに答えがある 「らしさ」をはみだすヒロインたち』(中央公論新社)、『文庫版 大学1年生の歩き方』(共著、集英社文庫)、『少女マンガのブサイク女子考』(左右社)、『夫婦ってなんだ?』(筑摩書房)などがある。

書誌情報

『異性愛という悲劇』
https://www.ohtabooks.com/publish/2024/11/19171215.html
著者:ジェーン・ウォード    訳:安達眞弓       解説:トミヤマユキコ
予価:2,640円(本体2,400円+税)  発売:2024年11月21日(木)
判型:四六判          ページ数:328ページ     ISBN:978-4-7783-1978-6

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