“原点に戻る”~実より名を取るー桜の咲く季節~個人で特許出願体験記【11】
2014年から2016年の2年間に渡る実体験を綴る特許にまつわる彼是(アレコレ)
エキゾチックレザーを使った個性的な財布を提案するブランド「リボーン」を展開する合同会社リボーン(本社:東京都台東区、CEO:高島成央)が、自身の体験を基にした初物づくしの特許出願ドラマチックストーリー第十一話
“原点に戻る”~実より名を取るー桜の咲く季節~
様々な出来事があった2015年も終わり、新しい年を迎えました。
年末年始は子供たちを連れて母がいる実家で過ごしました。
2016年も明けて、12月2日に届いた【拒絶理由通知書】への返答期限まで一か月を切りました。
年末年始の慌ただしさも過ぎ去ってしまったと思った時には、1月も中旬に差し掛り
‘ハッ’ と我に返った時には、残りの日数に焦りも感じ始めていました。
自分なりに考えた拒絶理由の引用文献との相違点や、自分が主張したい要点などを“Mさん”にご一読いただき、それらを踏まえたアドバイスなどもいただきながら明細書を訂正して、どこをどう訂正したか忘れないように書き留めていきました。
実より名を取る
以前、お会いした弁理士の方から『〇〇と〇〇と〇〇等』と記載していた箇所について、この “など” だけど審査官から補正が入ると思うよ。
といわれていたのですが、案の定補正が入ったので訂正しました。
また、【拒絶理由通知】は、だいたい3つほどの引用文献を引き合いにだして、
『引用文献#1の中の一文+引用文献#2の一文+引用文献#3の一文=これらの文献を掛け合わせれば思いつくものであるから拒絶理由とする。』
みたいな書き方をするんだよね。
と言われていましたが、まさにそのような感じでした。
それらに対して、それぞれの引用文献との相違点を述べられるように請求項(明細書)を補正していくのですが、当初の出願権利を縮小せざるを得なくなりました。
その時に“Mさん” から
『名より実を取るという言葉がありますが、特許の世界では実より名を取るということもあります。』
といった言葉を頂戴しました。
この先、どれほど実が削られようと絶対に名を取るんだ!
と、決意を新たにしていたことを思い出します。
審査官の方から、補正によって今回の拒絶通知は解消される可能性が高いが請求項を限定することによって新たな拒絶理由(引用文献)が見つかる可能性も示唆されました。
でもこの時は ‘もしかしたらこれで辿り着けるかもしれない’
そんな淡い期待もどこかでしている自分がいました。
桜の咲く季節
“Mさん” の多大なご尽力のお蔭でなんとか一月末ぎりぎりに、【請求項】を全て補正(当然そこに呼応する明細書も全て補正)請求項を7つにして、FAXで審査官のご意見を賜り【補正書】と【意見書】を提出することができました。
自分で作成したホームページに別れを告げて、新たにブランディングページを製作してもらう為の打ち合わせや写真撮影などをしていたのもこの頃でした。
そうしていつの間にやら桜の咲く季節となっていました。
厳しい冬の寒さを越えて新しい命が芽吹くような、なんだか嬉しい季節です。
嬉しい一報が届いたら….そんな淡い期待をどこかで抱きながらも、4月も終わりを迎えようとしていました。
5月になっても特許庁からの郵便物は来ないままに、ゴールデンウィークも終わりを告げると同時に、特許庁ではなく母の入院先の病院から連絡が入りました。
3日前に合ったとき、部活をしていた次男の試合が近いことを告げると
『私も頑張るから、試合頑張れって伝えて』
と言ってくれていたのですが…
桜が咲くのはほんの一瞬で、風に舞う桜の花びらのように
子供たち三人に看取られながら母が旅立っていきました。
父の時も、祖母の時も立ち会うことができなかったので、母の最期に立ち会うことができたことは幸いでした。
いつも病室で“Mさん”への感謝と共に、『特許取得に向けて頑張って』と励ましてくれていた母でした。
2016年5月6日の金曜日に母を看取り、母の日の5月8日に見送りました。
週明けの9日月曜日には会社に出社して仕事していたのですが、さすがにこの日だけは仕事に身が入らずに、いつもより早めに会社を閉めて帰りました。
何にも声も音もしない、たった一人の空間がとても空しいような気がして
傍らで見守ってくれていた母の姿が、昨日のことのように思えました。
原点に戻る
母の葬儀もすませてから1~2週間後、 ‘ホッ’ と一息ついた頃に “ソレ” は届きました。5月中旬のことです。
不安と淡い期待の中で開封すると・・・・
2回目の【拒絶理由通知】でした。
覚悟はしていたつもりでしたが、この時ばかりはその場に崩れ落ちてしまいました。
権利化が一番遠くに感じた瞬間でした。
でも落ち込んでばかりはいられないので、気を取り直して【拒絶理由通知】に目を通しました。
引用文献は、今回新たに米国の特許文献3つを含む5つ明記されていたので、早速全ての引用文献を特許情報プラットフォームへいって番号検索して明細書を印刷して“Mさん” へご報告しました。
今回の拒絶理由と、その根拠となる引用文献がどの程度権利化を阻む可能性があるのかを知りたかったのでプロのご意見を伺いました。
“Mさん” からの返答は
『ざっと目を通した段階だけど今回は強敵のようだが、時間はまだあるのでじっくりと対応しましょう。』と
本件発明と引用文献との相違点を中心に検討しておくようにとお返事をいただきました。
【二度目の拒絶理由通知】のうち1つはかなりの強敵でありました。
“Mさん” も『私が審査官でもこの引例を見つけたら同じ理由で拒絶するでしょう』と仰っていました。
気がつけば2か月あった返答期限もひと月を切っていました。
なかなか決定的な打開策も見つからぬままに時間だけが過ぎていきます。
返答期限までの残りも数週間と迫っています。
何度も何度も引用文献を読み直して、その相違点から対抗する手段として “Mさん” と自分が出した答えは同じでした。
初めてお会いした時に、ものの数分で “Mさん” から言い当てられた本件の本来の趣旨である
“原点に戻ろう”でした。
たとえば、今までトレーニングしてつけた沢山の筋肉の鎧を脱ぎ捨てて、Re-Bone Wallet の、本来の趣旨(コンセプト)である “Bone(骨)” <他者との関わり>の部分で勝負しようということです。
数十人の弁理士の方にご相談させていただいてきましたが、お会いしてからものの数分でその趣旨を的確にご理解して言葉にされたのは“Mさん”ただ一人だったので、何か運命的なものを感じていました。
拒絶理由の引用文献を何度も読み返して、その趣旨を理解して本願との相違点やその根拠などを書き綴って“Mさん”に目を通していただいて、“Mさん”からご提案していだいた補正書案を読んで、意見や拙い質問などのやりとりが続きました。
いつの間にやら返答期限の7月に突入していました。
返答期限のリミットは “7月19日”
気持ちも時間もギリギリの状況でしたが、7月4日“Mさん” から【反論趣旨】と【補正書案】が送られてきます。
その時に
『ぎりぎりになってしまいましたが、できれば審査官と面接し、補正案の可否につき意見をもらい、以下の反論で納得できそうか感触を当たってみてください。今回の補正が不適切である、あるいは反論が納得できないという感じであれば権利化は難しいと思います。』
そう書き添えられていました。
早速その日のうちに特許庁に電話して審査官の方をお願いすると、受付の方から意外なことを言われました。
その12へ続く
【Re-Bone Wallet/リボーンウォレット 製品開発秘話】
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