【BuildAppNews調べ】現場所長、4月からの残業規制開始も「働き方はかえって厳しくなる」が4割
~「現場作業の効率の悪さ」に対して、「BIMを使いこなしたい」の声が前回調査より4.4ポイント上昇~
BuildAppで建設DXに取り組む野原グループ株式会社は、「建設DXで、社会を変えていく」情報メディア「BuildApp News(ビルドアップニュース)」が2024年1月に実施した「建設業界従事者1,000人への独自調査」から、建設現場の「施工管理(工程、安全、品質、原価などの工事に関わる様々な業務の管理)」に従事する現場監督・所長(現場代理人)307名に対象者を絞った、「建設の2024年問題と現場の業務デジタル化の意識調査」の結果を発表します。
2024年4月から、時間外労働の上限規制厳格化(建設の「2024年問題」)が建設産業にも適用されます。野原グループが2024年1月末から複数回に分けて発表した「建設業界従事者1,000人への独自調査」からは、建設の「2024年問題」で人手不足や働き方等の改善を楽観視する傾向は少なく、建設産業が抱えてきた課題(人手不足と生産性向上)が改めて浮き彫りになりました。そして、「施工管理」は、デジタル化による生産性向上と業務効率化の進み具合の二極化が推測されました 。
今回の「現場監督・所長307名の実態調査」の結果からは、現場監督・所長(現場代理人)の4割が「適正工期の見直しは難しいため、働き方はかえって厳しくなる」と回答し、残業規制の影響をより強く懸念していることが分かりました。一方で、現場監督・所長は「現場作業の効率の悪さ」や「手戻り(作業のやり直し)」に痛みを感じており、30代を中心にBIMを使いこなしたいと思っていることも分かりました。
(現場監督・所長全体では、使いこなしたいデジタル技術の1位はBIMで、昨年より4.4ポイント上昇の23.5%との結果)。
野原グループは、建設工事の元請企業(主にはゼネコン)の「現場監督・所長(現場代理人)」は工期をはじめとする現場の施工管理に深くかかわる職種であり、建設現場(施工)のデジタル化による生産性向上に重要な役割を担うと考えています。
私たちは、BuildApp事業で、施工プロセスの生産性を押し上げ、業界全体の建設DXの推進に弾みをつけてまいります。
調査実施概要 (調査元:BuildApp News 編集部)
調査期間:2024年1月15日~1月22日
回答数:307人
調査対象者:全国の現場監督・所長(20~70代)
調査方法:インターネット調査(ゼネラルリサーチ株式会社)
※結果詳細PDFはこちら
現場監督・所長307名の実態調査|結果要点
- 【建設2024年問題の認知】
現場監督・所長(現場代理人)307名で、建設2024年問題を「詳しく把握している」と回答したのは43.3%で、業界人1,000名に比べて5.6ポイント多かった。年代別に見てみると、30代が「詳しく把握している(64.7%)」方が最も多く、20代で「聞いたことがない・知らない(18.8%)」と回答する方が多かった。 - 【建設2024年問題で悪化すると思うこと(複数回答)】
現場監督・所長(現場代理人)では、1位「適正工期の見直しは難しいため、働き方はかえって厳しくなる(40.0%)」、2位「ますます若手入社希望者が減少する(30.5%)」、3位「時間給・日給が減ることになるためむしろ困る(27.3%)」であった。業界人1000名の回答結果とは1・2位は同じだが、3位が異なる結果となった背景には、時間外労働時間の規制に伴い残業代が減り手取り総額の減少を懸念する心理が伺える。 - 【現場の痛み(複数回答)】
現場監督・所長(現場代理人)307名に、「建設現場におけるご自身や現場関係者の痛み」を尋ねたところ、「週末にも働く(納期厳守や、工程管理が厳しくて休めない)(59.0%)」がダントツの1位で、業界人1,000名の結果に比べても約9ポイントも上回っていた。
2位「前後の工程の都合での手待ち(41.0%)」、3位「新築の竣工前の変更や手戻り(40.4%)」、4位「一日の中で実作業時間が足りない、作業効率が悪い(39.4%)」も同様に、業界人1,000名の結果に比べてもその割合が多いことから、工程間の手戻り(作業のやり直し)と現場作業の効率に課題があるのではないか。 - 【年代別_建設業界で改善して欲しいこと(複数回答)】
いずれの年代においても、「給与水準のアップ」と「長時間労働(休日取得日数・早出・残業)の是正をしてほしい」がトップ2であるが、20代と30代では「デジタルツールを駆使した業務効率化」がそれぞれ25.0%、38.2%で3位にランクインしていることに注目したい。 - 【建設業界で最も深刻な課題】
現場監督・所長(現場代理人)307名に、「建設業界で最も深刻と思われる課題」の1位~3位を尋ねたところ、1位「人手不足(65.1%)」、2位「高齢化による技術承継(46.6%)」、3位「労働時間が長い・年間休日が少ない(33.6%)」との結果となった。2023年調査結果と比べると、1~2位の順位は同じだが割合が増加しており課題が深刻化している。また、2023年調査結果ではランクインしていなかった「労働時間が長い・年間休日が少ない(33.6%)」が3位に上がっており、建設の「2024年問題」を背景に、現場監督・所長(現場代理人)自身の働き方を改めて見直す機会になっているのではないか
<建設業界で最も深刻な課題>
現場監督・所長(現場代理人)307名の回答
1位 人手不足(65.1%)
2位 高齢化による技術継承(46.6%)
3位 労働時間が長い・年間休日が少ない(33.6%)
業界人1,000名の回答
1位 人手不足(63.0%)
2位 高齢化による技術継承(45.3%)
3位 円安などによる建材・人件費の高騰(30.2%) - 【デジタル化未対応による仕事の不安】
現場監督・所長(現場代理人)307名の64.2%が、「デジタル化に対応できないと将来仕事が減るのでは、という不安」があると回答している。これは、業界人1,000名の結果よりやや多い数値だが、前回調査の結果に比べると微減している。年代別では、20代が最多の68.8%で、次いで30代の67.6%で、若手ほど「デジタル化に対応できないと将来仕事が減るのでは、という不安」を抱いている傾向がある。 - 【デジタル化による生産性向上、業務効率化が遅れている業務プロセス】
現場監督・所長(現場代理人)307名では、「デジタル化による生産性向上、業務効率化が遅れている業務プロセス」として、1位「施工・専門工事(47.2%)」が2023年調査結果よりも6ポイント上昇、2位「施工管理(33.2%)」は1.7ポイント上昇していた。このことから、現場監督・所長(現場代理人)では、建設現場での施工関連プロセスの「デジタル化による生産性向上、業務効率化の遅れ」を感じている方が増えていると推測できる。 - 【使いこなすことができればよいと思うデジタル技術(複数回答)】
現場監督・所長(現場代理人)307名に、「使いこなすことができればよいと思うデジタル技術(機器・ツール)」を尋ねたところ、1位「BIM(3Dモデルで企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元管理)(23.5%)」、2位「施工管理ツール(20.5%)」が他のツールに比べてダントツで数値が高かった。2023年から2024年の経年推移をみると、1位「BIM(23.5%)」は2023年調査結果よりも4.4ポイントも増加していた。 - 【BIMを使いこなしたい理由】
現場監督・所長(現場代理人)307名のうち、「BIMを使いこなしたい」と回答した72名に理由を尋ねたところ、BIMの情報管理性、分かりやすさから効率化や生産性向上を期待する声が多いことに注目したい
<情報管理性>
・すべてを一元管理した方が効率的だから
・トータルなデジタル化ができる
・ワンストップ化
・積算、管理まで可能
・管理/監理しやすい
<分かりやすさ>
・分かりやすい
・複雑な図面等が、わかりやすくなる
・3次元にすることで理解しやすい
・立体で取合を確認出来るから
・イメージがしやすい
・周知しやすい
・見える化
・立体的にとらえることが可能となる
・簡単になる、簡単そうだから
・楽だから
<効率化>
・業務の効率化
・変更への対応
・時間的にゆとりが生まれるので
・スピードがかなり速くなるから
<生産性向上>
・省力化
・生産性向上
・仕事の簡略化が図れる
<その他>
・単なる3Dではなく情報を付加した形での運用を身に付けたい
・便利 - 【実際のBIM活用】
現場監督・所長(現場代理人)307名に「実際にBIMを活用しているか」を尋ねたところ、34.5%しか活用できておらず、業界人1,000名の回答結果よりも「活用している」と答えた方は少なかった。このことから、現場監督・所長(現場代理人)では、BIMを使いこなしたい気持ちがあるにもかかわらず、実際にはBIM活用は進んでいないことが伺える。
一方で、年代別に「実際にBIMを活用している」現場監督・所長(現場代理人)の割合を見たところ、30代で70.6%と最多だった。
※結果の詳細は別紙参照
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建設(建築+土木)全般
・おすすめの図面アプリを紹介|建築業務からDIYまで
・2025大阪万博|建設業注目のパビリオンは?
住宅分野
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非住宅分野
・点群データ|簡単に3Dモデル化、DX活用事例紹介
・フルハーネスの着用義務化とは|基礎知識と建設DXの関わりを解説
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野原グループ株式会社について
参考
- 建設の「2024年問題」とは、建設業における時間外労働の上限規制の適用開始を指します。国の方針として、「働き方改革関連法」の施行により、法律で定められた上限を超える時間外労働はできなくなっていますが、建設業は、長時間労働の背景に、業務の特殊性や取引慣行の課題があることから、時間外労働の上限についての適用が5年間猶予されていました。その猶予期間が間もなく終わり、建設業は2024年4⽉から時間外労働の上限規制が適用されます。これにより、2024年4月以降、建設業では、災害時における復旧及び復興の事業を除き、時間外労働の上限規制が原則通りに適用されるため、建設の品質を維持したより一層の生産性向上が急務と言えます(上限規制の時間は月45時間、年360時間。違反した場合には、罰則として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれあり)【参考】厚生労働省 働き方改革特設サイト
- 野原グループが2024年に発表した調査結果は、以下の通りで、「デジタル化による生産性向上、業務効率化が進んでいるプロセス」の3位(34.0%)にランクインし、前回調査時よりも伸び率が大きい。一方で、「デジタル化による生産性向上、業務効率化が遅れていると思う業務」第2位(24.9%)にもランクインしています。
●「建設2024年問題の捉え方」に関する調査結果(2024/2/19発表)
●「デジタル化による生産性向上」の実態調査結果(2024/3/21) - BIM(ビム)とは、国土交通省によれば、「Building Information Modelling」の略称で、コンピュータ上に作成した3次元の形状情報に加え、室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げ等、建築物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築することです。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、経済産業省の定義によれば「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指し、単なるデジタル活用とは区別されています
- サプライチェーンとは、商品や製品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費といった一連の流れのことをいいます。
関連リンク
野原グループの調査結果(過去に発表したものを含む)
- 【独自調査】デジタル化による生産性向上、「施工・専門工事」での遅れが深刻化(2024/3/21)
- 【独自調査】建設現場の痛みは「週末にも働く(工期順守と厳しい工程管理)」が5割(202/2/27)
- 【独自調査】建設2024年問題 、「人手不足と採用の改善」への期待は1割にも満たず(2024/2/19)
- 【独自調査】建設産業の最大課題は人材不足(63.0%)、昨年より深刻さ増す(2024/2/9)
- 【建設現場の意識調査】現場監督・所長の65.5%は、デジタル化未対応による仕事減少に不安(2023/5/17)
- 【建設業界従事者のデジタルツール意識調査】デジタル未対応による将来の仕事への不安がある方は63.4%(2023/4/13)
- 【建設業界従事者の建設DX意識調査】進まぬデジタル化の実態は「施工・専門工事」「施工管理」にあり(2023/4/6)
- 【建設業界従事者の業界イメージ調査】建設業界人が思う最も深刻な課題は「人手不足」56.5%(2023/3/14)
- 【建設DX実態調査】建設DXの推進はパートナーとの連携がカギ(2022/10/28)
- <建設DX実態調査)競合のデジタル化が自社のDX推進の起爆剤に(2022/9/30)
- <建設DX実態調査>建設DXのカギは、DX推進部門との関係性強化とBIM利用(2022/8/30)
- <建設DX実態調査>図面のデジタル化は建設プロセス全体に影響、多用途でのニーズが判明(2021/9/9)
- <建設DX実態調査>業界全体のデジタル化は進行、プロセス別では格差も(2021/8/23)
- 【続報】設計士の本音調査 約5割の設計士が「“図面に落とし込む建材情報の収集”を効率化したい」と回答 ~デジタル化とBIMの重要性~(2019/10/23)
- 設計士の本音調査を実施 6割以上が「発想のための時間を”業務時間外”で確保している」と回答、業務の効率化には4
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