「建設DXで、社会を変えていく」情報メディア「BuildApp News」が独自調査を実施。建設産業最大の課題は「人材不足(63.0%)」で、昨年より6ポイント上昇、深刻さ増す

野原グループ株式会社

2024.02.09 14:30

~課題解決に期待するデジタル技術は「施工ロボット(36.2%)」が1位で、「BIM/CIM」は圏外との結果に~

BuildAppで建設DXに取り組む野原グループ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:野原弘輔)は、「建設DXで、社会を変えていく」情報メディア「BuildApp News(ビルドアップニュース)」が2024年1月に「建設業界従事者1,000人への独自調査」を実施したことをお知らせします。

建設の「2024年問題」 が社会の注目を集めている中で、今回は調査結果から「業界従事者が思う建設業界の課題と解決に期待するデジタル技術」について発表します(*)。

結果からは、「人材不足」の更なる深刻化、国が進める「BIMの活用」にはBIM導入費用、必要性、人材育成の面で障壁があることが分かりました。野原グループは、この現状を打開するために、建設業界従事者の多くが、BIMソフトがなくても簡単にBIMのメリットを感じ生産性を向上できる基盤環境としてのBuildApp事業を強化してまいります。

(*)建設業界従事者1,000人への独自調査の結果は、今後「建設2024年問題への意識」、「デジタルツールに対する意識」について発表予定です。建設業界全体が、今後どのように「働き方」「工期」「品質」「給与」を考え行動していけばよいのかを考察します。

調査実施概要 (調査元:BuildApp News 編集部)

調査期間:2024年1月15日~1月22日
回答数:1,000人
調査対象者:全国の建設業界従事者
調査方法:インターネット調査(ゼネラルリサーチ株式会社)

建設業界従事者への独自調査|業界課題とその解決に期待するデジタル技術

<結果総評>

  1. 【建設業界で最も深刻な課題】1位は「人材不足(63.0%)」で前回調査結果の56.5%を上回った。2位「高齢化による技術継承(45.3%)」も同様に、前回調査結果の43.6%より上振れした結果となった。

    1)事業規模別の結果も同様で、建設業界では「人材不足」と「高齢化による技術承継」が課題として共通認識されると同時に、年々と課題の深刻さが増していることが分かった。

    2)建設現場での施工関連業務の従事者(施工管理、施工、専門工事)に着目すると、3位に「労働時間が長い・年間休日が少ない(31.0%)」があがっていることに注目したい。

  2. 【業界課題を解決すると期待するデジタル技術】1位「施工ロボット(36.2%)」、2位「図面管理システム(24.9%)」、3位「VR・AR・MR(17.9%)」との結果となった。

    1)「施工ロボット」は導入が進んでいると思うデジタル技術の1位(20.7%)にも上がっており、建設RXコンソーシアムを中心にゼネコン各社の連携による開発と実装の効果の現れともみることができる。

    2)「BIM/CIM」は建設業界の生産性向上に寄与するものとして国がその活用を進めているが、業界内では「業界課題を解決すると期待するもの」、「導入が進んでいると思うもの」のいずれでも圏外だった。

  3. 【BIM活用の実態】62.4%が「活用しない、できない」と回答。

    1)中小企業では「活用しない、できない」が71.9%、業務別には設計・積算業務従事者に比べ建設現場での施工関連業務の従事者(施工管理、施工、専門工事)で「活用しない、できない」との回答多数。

    2)その理由には、「ソフトが高額で購入や維持ができない(199名)」と「業務の関係者や発注者から建築BIMの活用を求められていない(199名)」が同率1位、3位「BIMソフトを使える人がいない・不足している(191名)」と、導入費用、必要性、人材育成といった複数要素が影響していると推測できる。

1.【建設業界の最も深刻な課題】

前回調査から、順位に変動はなかったものの、1位「人材不足(63.0%)」、2位「高齢化による技術継承(45.3%)」の割合は微増した。この結果から、建設業界では年々、人材不足と技術承継の課題が改善されないまま課題が深刻化していると推察される。

2024年度 調査結果(n:1000)
1位  人材不足(63.0%)
2位 高齢化による技術継承(45.3%)
3位 円安などによる建材・人件費の高騰(30.2%)

2023年度 調査結果(n:1000)
1位  人材不足(56.5%)
2位 高齢化による技術継承(43.6%)
3位 円安などによる建材・人件費の高騰(30.8%)

1-1.事業規模別
中小、大手企業別にみても、1~3位は同様の結果が得られたことから、「人材不足」「高齢化による技術承継」「円安などによる建材・人件費の高騰」が業界内の深刻な課題であるとの共通認識がうかがえる。一方で、「人材不足」に注目すると、中小企業よりも大手企業の方が、より課題としての深刻さが増しているとの結果にも注目したい。

全体(n:1000)
1位 人材不足(63.0%)
2位 高齢化による技術継承(45.3%)
3位 円安などによる建材・人件費の高騰(30.2%)

中小企業(n:711)
1位 人材不足(60.6%)
2位 高齢化による技術継承(44.4%)
3位 円安などによる建材・人件費の高騰(30.4%)

大手企業(n:289)
1位 人材不足(68.9%)
2位 高齢化による技術継承(47.4%)
3位 円安などによる建材・人件費の高騰(29.8%)

1-2.従事業務別
建設現場での施工関連業務の従事者(施工管理、施工、専門工事)に着目すると、3位に「労働時間が長い・年間休日が少ない(31.0%)」があがっている
ことに注目したい。建設業界では、日本建設業連合会が「4週8閉所」の実現に向けた活動を長年実施 しているが、現場では工期順守が求められる一方で、生産性向上が進まず、労働環境の改善につながっていないのではないかと考察する。

全体(n:1000)
1位 人材不足(63.0%)
2位 高齢化による技術継承(45.3%)
3位 円安などによる建材・人件費の高騰(30.2%)

施工関連業務の従事者(n:613)
1位 人材不足(65.9%)
2位 高齢化による技術継承(47.8%)
3位 労働時間が長い・年間休日が少ない(31.0%)

2.【建設業界の課題解決に期待するデジタル技術】

建設業界従事者が思う最大の課題(人材不足、高齢化による技術承継、円安などによる建材・人件費の高騰)に対する解決方法として期待するものと、現実に導入が進んでいるかの現状の上位3つをそれぞれ尋ねたところ、結果は次表の通りとなった。「BIM/CIM」は建設業界の生産性向上に寄与するものとして国がその活用を進めているが、業界内では「業界課題を解決すると期待するもの」、「導入が進んでいると思うもの」のいずれにもランクインしていない。(n:1000)



業界課題を解決すると期待するデジタル技術
1位 施工ロボット(36.2%)
2位 図面管理システム(24.9%)
3位 VR・AR・MR(17.9%)

導入が進んでいると思うデジタル技術
1位 施工ロボット(20.7%)
2位 図面管理システム(21.5%)
3位 VR・AR・MR(17.0%)

3.【BIM活用の実態】

全体(n=1000)では、「BIMを活用していない、できない」が62.4%、「活用している」が37.6%となった。

  • 中小企業(n:711)と大手企業(n:289)では、より一層、BIM活用状況に大きな乖離がある。
  • ゼネコンをみても、スーパーゼネコンと地方ゼネコンとではBIM活用状況に大きな乖離がある。
  • 建設工程の下流(工事関連/サブコン、工務店、専門工事店)にいくほどBIMを活用できていない。
  • 業種別の結果からは、建設現場での施工関連業務の従事者(施工管理、施工、専門工事、n:613)のBIM活用が進んでいないことが分かる。




3-1.【BIMを活用しない、できない理由】
「BIMを活用しない、できない(62.4%)」と回答した624名を対象に、その理由を質問したところ(複数回答)、「ソフトが高額で購入や維持ができない(199名)」と「業務の関係者や発注者から建築BIMの活用を求められていない(199名)」が同率1位、3位「BIMソフトを使える人がいない・不足している(191名)」となった。

  • 事業規模別にみても大差のない結果となった。
  • 最多回答数の項目に着目して、従事業務別にみてみると、「業務の関係者や発注者から建築BIMの活用を求められていない」が多く、建設産業内の契約形態(請負契約における工事発注者・受注者の関係性)や、重層下請構造の影響が示唆できる。業種別にみてみると、「準大手・中堅ゼネコン」や「工務店」、「専門工事店」では「BIMソフトを使える人がいない・不足している」がおおく、BIM人材の育成に課題がありそうだ。

3-2.BIM活用推進の障壁とは
以上の結果から、建設産業内でのBIM活用の推進には、BIM導入費用、必要性、人材育成の面で障壁があるのではないかと推察される。野原グループは、建設業界従事者の多くがBIMソフトなしに、簡単にBIMのメリットを感じ、生産性を向上できる基盤環境として「BuildApp事業」を強化し、現状打開を目指す。

全体(n:1000)
1位 ソフトが高額で購や維持ができない(199名)
2位 業務の関係者や発注者から建築BIMの活用を求められていない(199名)
3位 BIMソフトを使える人がいない・不足している(191名)

中小企業(n:711)
1位 業務の関係者や発注者から建築BIMの活用を求められていない(162名)
2位 ソフトが高額で購入や維持ができない(161名)
3位 BIMソフトを使える人がいない・不足している(159名)

大手企業(n:289)
1位 ソフトが高額で購入や維持ができない(38名)
2位 業務の関係者や発注者から建築BIMの活用を求められていない(37名)
3位 BIMソフトを使える人がいない・不足している(32名)  
    BIMを習熟するまでの業務負担が大きい(32名)


4.【建設業界のマイナスイメージ/複数回答】

1位「若い人材が少ない(387名)」、2位「残業・休日出勤が多い(385名)」は2023年度の調査結果と順位が変わらず、3位の「給与が少ない(296名)」は昨年の4位からランクアップした。
建設業界では、人手不足、働き方や給与(待遇)に根強いマイナスイメージがあることが分かった。

2024年度 調査結果(n:1000)
1位 若い人材が少ない(387名)
2位 残業・休日出勤が多い(385名)
3位 給料が低い(296名)
4位 清潔感がない(270名)
5位 昔ながらの文化や慣習が多い(257名)

2023年度調査結果(n:1000)
1位 若い人材が少ない(436名)
2位 残業・休日出勤が多い(392名)
3位 清潔感がない(301名)
4位 給料が低い(285名)
5位 昔ながらの文化や慣習が多い(260名)

5.【建設業界のプラスイメージ/複数回答】

1位「社会貢献度が高い(351名)」、2位「スキルが身につく(320名)」、3位「安定感がある(292名)」で2023年度の調査結果と順位が変わらなかったが、3位以下のいずれにおいても数値は下がっていた。従事業務別で建設現場での施工関連業務の従事者(施工管理、施工、専門工事、n:613)に注目すると、1位に「スキルが身につく(222名)」、5位に「給料が高い(73名)」が入り、全体結果と異なる内容となった。

2024年度 調査結果(n:1000)
1位 社会貢献度が高い(351名)
2位 スキルが身につく(320名)
3位 安定感がある(292名)
4位 伝統や歴史がある(190名)
5位 将来性が高い(106名)

2023年度調査結果(n:1000)
1位 社会貢献度が高い(351名)
2位 スキルが身につく(332名)
3位 安定感がある(318名)
4位 伝統や歴史がある(254名)
5位 将来性が高い(160名)

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参考

  • 建設の「2024年問題」とは
    建設業における時間外労働の上限規制の適用開始を指します。国の方針として、「働き方改革関連法」の施行により、法律で定められた上限を超える時間外労働はできなくなっていますが、建設業は、長時間労働の背景に、業務の特殊性や取引慣行の課題があることから、時間外労働の上限についての適用が5年間猶予されていました。その猶予期間が間もなく終わり、建設業は2024年4⽉から時間外労働の上限規制が適用されます。これにより、2024年4月以降、建設業では、災害時における復旧及び復興の事業を除き、時間外労働の上限規制が原則通りに適用されるため、建設の品質を維持したより一層の生産性向上が急務と言えます(上限規制の時間は月45時間、年360時間。違反した場合には、罰則として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれあり)
    【参考】厚生労働省 働き方改革特設サイト
  • 日建連が進める「建設業の働き方改革」とは
    日本建設業連合会は、2017年12月に、建設現場における週休二日を実現するための基本方針・具体的な方策である「週休二日実現行動計画」を策定しています。「4週8閉所」は、日建連が進める建設業の働き方の一つです。
  • BIM(ビム/Building Information Modellingの略)とは
    国土交通省によれば、コンピュータ上に作成した3次元の形状情報に加え、室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げ等、建築物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築することです。
  • DX(デジタルトランスフォーメーション/ Digital Transformationの略)とは
    経済産業省に定義によれば「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指し、単なるデジタル活用とは区別されています。建設業界でも、AI(人工知能)、ICT(情報通信技術)、ビッグデータなどのデジタル技術を用いて、業務フローの改善や新たなビジネスモデルの創出が始まっています。

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