生成AIが働き方をどのように変えるのか、マイクロソフトがレポートを公開
Copilot for Microsoft 365などの早期ユーザー調査から、生産性向上や時間節約等の効果が判明
米国時間2023年11月15日、マイクロソフトは、Copilot for Microsoft 365などの生成AIを活用したサービスが、人々の働き方をどのように変革できるのかを調査したレポートを公開しました。ここでは、初めて実施した、職場でのCopilotに関する調査結果をまとめたレポートの概要をご紹介します。
*本レポートの詳細はこちらを参照ください。
*日本を含む市場別データはこちらを参照ください。
マイクロソフトは、生成AIを活用したCopilotの提供を拡大する中で、お客様と共に学びたいと考え、Copilotが仕事をどのように変革しているか深く理解するため、アンケートと実験を組み合わせた調査を実施し、次のような特徴が明らかになりました。
- Copilotユーザーの70%が生産性が向上したと回答し、68%が仕事の質が改善したと回答しています。
- 全体的にユーザーは、検索や文書作成、要約といった一連のタスクが29%速くなりました。
- 欠席した会議の遅れを挽回する速度が約4倍速くなりました。
- 64%のユーザーが、Copilotでメール処理に費やす時間を削減できたと回答しています。
- 85%のユーザーが、Copilotによって優れた初稿をより迅速に作成できるようになったと回答しています。
- 75%のユーザーが、Copilotによって「ファイルから必要なものを見つけられるので、時間の節約になる」と回答しています。
- 77%のユーザーが、Copilotを一度使ったら手放したくなくなったと回答しています。
- Copilotによる生産性の向上
Copilot for Microsoft 365 アーリーアクセスプログラムの参加ユーザー 297人を対象に、会議や文書作成などでCopilotをどのように使用しているか調査したところ、開発者がGitHub Copilotで経験したのと同様に、生産性向上と時間削減ができたことがわかりました。
- 68%が、仕事の質が向上したと回答しています。
- 57%が、創造性が高まったと回答しています。
- 68%が、創造プロセスの活性化に役立ったと回答しています。
- 72%が、文書作成中にアイデアを生み出す際に役立ったと回答しています。
- 67%が、Copilotによって時間を節約でき、より重要な仕事に集中できるようになったと回答しています。
- 平均で1日14分、1週間で2時間分の時間を節約できたと報告しています。
- 22%の人は、1日30分以上の時間を節約できていると回答しています。
- 1日30分以上時間を節約できると回答したユーザーに、その節約した時間を何に使っているか尋ねました。
- 最も多かったのは集中作業(53%)で、データ入力などの事務作業(7%)に時間を費やしている人はほとんどいませんでした。
- ただ、2番目に多かった回答は、その時間を別の会議に充てている(16%)というものでした。すでに会議の数が多いところにさらに会議が加わると、逆効果ともいえます。
- これほどまでに時間を節約できているのはすばらしいことですが、節約した時間をうまく再投資することが重要となってきます。
従業員がCopilotにどの程度価値を見出しているかについても調査しました。初期ユーザーは、一度Copilotを使って仕事をすると、Copilotなしで仕事をする状態には戻りたくないと答えています。
- 77%が、Copilotを手放したくないと回答しています。
- 大半の人が、職場での無料ランチよりもCopilotを利用したいと回答しています。無料ランチが月1回の場合で88%がCopilotを選択し、2週間に1回の場合で79%が、週1回の場合で77%がCopilotを選ぶと回答しています。
- 30%が、Copilotを利用できるかどうかが勤め先の選択にまで影響すると回答しています。
- Copilotが会議、メール、情報検索、文書作成に与える影響
定性調査に加え、ナレッジワークを構成する4つの要素である会議、メール、情報検索、文書作成を対象に観察調査を実施し、Copilotの生産性向上を定量化しました。マイクロソフトは、人々が感じているデジタル負債は現実のものであると認識しています。Microsoft 365のヘビーユーザーは、1日に250通以上のメールを受信し、150件のチャットをやりとりしています。また、1人あたりのTeams会議の数は、2022年以降グローバルで3倍に増加しています。
日常の様々な業務において、Copilotを使用するグループと、使用しないグループに同じ作業をしてもらい、比較した結果、下記が判明しました。
- 情報検索、会議要約、ブログ記事執筆の一連のタスクにおいて、Copilotのユーザーは、29%速く完了でき、所要時間は29分42秒でした。Copilotを使用していないユーザーは42分6秒でした。
- 録画された35分間の会議の要約において、Copilotのユーザーは、Copilotを使用していないユーザーより8倍速く会議を要約し、かかった時間は11分13秒でした。使用していないユーザーは42分34秒かかりました。
- Copilotを使用して書かれたメールは、18%より明瞭(clear)だと評価されました。
- Copilotを使用して書かれたメールは、19%より簡潔(concise)だと評価されました。
- ファイル、メール、予定表を横断して情報を検索する作業では、Copilotのユーザーは27%速く作業を完了し、かかった時間は17分54秒でした。使用していないユーザーは24分18秒でした。
- 役割特有の課題と改善機会
マイクロソフトでは、Copilotには、個人や特定部門だけでなく、あらゆる部門にわたってインパクトを与えるような、より幅広い機会があると考えていることから、役割による違いを調査しました。
営業担当者
Copilot for Salesを少なくとも毎週使用しているマイクロソフトの営業担当者133人を対象に調査したところ、次のことが明らかになりました。
- ユーザーが1週間に節約した平均時間は90分でした。
- 83%が、Copilot for Salesによって生産性が向上したと回答しています。
- 67%が、お客様との時間を増やせると回答しています。
- 64%が、お客様とのエンゲージメントをよりパーソナライズできると回答しています。
- 58%が、必要なCRM情報をより早く見つけられると回答しています。
ビジネスプロセスをAIで変革
ビジネスプロセスを根本的に変革する生成AIの幅広い機会について理解を深めるため、12ヶ国で6つの主要部門に勤める1万8,100人を対象に調査を実施しました。全体として、デジタル負債におぼれているとの回答を得ています。情報の作成(1日の24%)や、コミュニケーション(1日の24%)、情報の消費(1日の25%)よりも、情報検索(1日の27%)に多くの時間を費やしているというのです。しかも、毎日消費する情報のうち、仕事に必要なものは半分(50%)だけだといいます。
6つの異なる職務に就く人に、生成AIが仕事のパフォーマンスにプラスの影響を与える可能性があるのはどこかを尋ねたところ、トップとなったのは「必要な情報を見つけること」でした。そこから、職務別に独自のニーズが浮かび上がってきました。
- 営業担当者は、営業機会の特定(75%)と、マーケティングデータと販売データの統合(74%)を挙げています。
- カスタマーサービス担当者は、問題を適切な担当者にインテリジェントに引き渡すこと(70%)と、担当者と顧客のやり取り全体の傾向を検出すること(68%)を挙げています。
- 財務部門では、財務報告の簡素化(73%)と、データ品質の検証(72%)を挙げています。
これらの結果は初期のものではありますが、時間が経てばCopilotによってより多くの商談が成立し、カスタマーサービスでより多くの問題が解決され、顧客満足度が高まることが期待されます。これは、仕事の満足度や充実感を高めるだけでなく、最終的に収益の向上にもつながる強固な手段となります。
今後の展望
Copilotは個人の生産性を実際に、しかも大幅に向上させていることがデータによって示されました。しかし、個人的な実験を超えてAIを活用する組織を構築するには、新しい方法で取り組む必要があります。最大限利益を得ることになるのは、Copilotを検索エンジンとしてではなく、非常に有能で、無限に忍耐強く、いつでも利用できるアシスタントとして扱う組織です。
Copilotで日々の習慣を築いてみましょう。運動や新しい言語の習得と同じように、Copilotの生産性向上を実現するには、意図的に毎日実行する必要があります。その習慣を早くから築くことで、先頭に立つことができます。
マネージャーの気持ちになって考えてみましょう。Copilotの可能性を最大限引き出すには、権限を委任し、適切な判断を下し、対象分野の専門知識を応用する能力が必要です。それが、機械化時代に欠かせない人間のスキルとなるのです。従業員は皆、それぞれが新しいアシスタントを管理し、AIにタスクを任せるタイミングと、独自の人間的知性を適用するタイミングを見極めなくてはならないのです。
取り戻した時間を無駄にしないでください。新しいリーダーは、すべての従業員がCopilotで節約した時間を意識できるよう支えなくてはなりません。マネージャーは、チームを指導して気遣うことにより多くの時間が割けるようになり、営業担当者はお客様との関係構築や商談成立により多くの時間が費やせるようになります。またマーケティング担当者は、新製品を考案する時間を捻出できます。今後は誰もが、組織にとって最もインパクトがあり、価値のあるやりがいのある仕事に、より多くのエネルギーを注ぐようになるでしょう。
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