岡本光博展「ラブ&ピース」
京都出身の現代美術作家、岡本光博によるラブ&ピースをテーマにした新作個展
パロディと引用を用いて現代社会の矛盾や問題をユーモラスに、アイロニカルに写し出す作家による、平和と愛のシンボルをモチーフにした作品を展示します。
岡本光博
ラブ&ピース
2023年12/2(土)~12/30(土)
関連イベント
12/2(土)17時~18時 ギャラリートーク
岡本光博×本展キュレーター 工藤健志
ラブ&ピースは魔法の言葉。ちょいとまぶせば、たいていのことは正、善として押し通せちゃう。もともと「愛」も「平和」もひどく曖昧な概念だから、使う側と受け取る側の認識が大きくズレることもしばしば。こうした凡庸な言葉を狡猾な人間は戦略的に利用するし、純粋無垢(より正確に言えば無知蒙昧)な受け手は、素直に理想郷を想起したりする。多くの人々が「愛」を盾にして他者を傷つけ、「平和」の名のもとに殺しあいを行っているのにねえ。こういう言葉をある個人が使う場合はたいてい「いい人」アピールだし、様々な組織が使う場合は特定の層やコミュニティをある方向へと誘導し、消費意欲の喚起や思想統制の強化に用いることが多い(と僕は感じる)。わかりやすい言霊の活用は人々を誘惑するためのもっとも有効な手段なのだ。
こうしたタイトルのもとに開催される今回の岡本展にも、平和や自由のシンボルである鳩を中心とした鳥モチーフの新作が多数展示される。岡本は特定の寓意や理念をもつ数種の鳥と、言霊的作用を喚起する美術作品や企業ロゴ、あるいは政治的形象を(過激に)接続することで、多くの人が共有する価値や意味を撹乱させ、その問い直しをはかっていく。解説を読まなければ理解できないコンセプト至上主義の(特に左巻き)アートか、ストレートに感情を刺激するウエットな表現ばかりがもてはやされる時代にあって、パロディやユーモアという知的な手法をとおして、現代社会が抱える問題を鋭く告発していく岡本の作品はアートシーンの中でもひときわ異彩を放っている。しかし、諧謔を弄ぶかのようなそれら表現の奥底には強烈な風刺性と強靭な批評性が備わっているのだ。世界各地で戦争が激化している今だからこそ、単純な表象に惑わされないよう、本展を通じて情報や知識を智慧へと昇華させていく思考法を身につけてほしい(と切に願う)。
工藤健志(青森県立美術館企画課長)
岡本光博(おかもと・みつひろ)
1968年京都生まれ。94年滋賀大学大学院修了。94~96年アート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークに在籍。97~99年CCA北九州に在籍。01~04年ドイツのレジデンスを中心にインド、スペインなどに滞在。04~06年台湾・沖縄を拠点に活動。07年から京都を拠点に活動し12年よりKUNST ARZT主宰。弊廊での主な展示に桜を見る会(2019~2022)、ニャンともならニャイ(2022)、オキナワ・ステーキ(個展 2021)、天覧美術(2020)、UFO(個展 2018)、THEドザえもん展TOKYO2017(個展 2017)、69(個展 2016)、マックロポップ(個展 2014)。ほか国内外の展覧会に多数出展。
eitoeiko
東京都新宿区矢来町32-2
03-6873-3830
開廊 火曜~土曜 12時~19時 日月休廊
ウェブサイト www.eitoeiko.com
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