分子標的型抗がん薬に起因する皮膚障害を予防する製剤を共同研究
~神戸大学医学部附属病院薬剤部との共同研究成果~
創業から137年、美と健康を追求し続けてきた桃谷順天館グループ(本社:大阪市中央区、代表取締役社長桃谷誠一郎)は、国立大学法人神戸大学医学部附属病院薬剤部の山本和宏副薬剤部長・講師との共同研究の結果、分子標的型抗がん薬(マルチキナーゼ阻害薬)の影響で起こる皮膚障害(手足皮膚反応)をビタミンC誘導体※1を含む製剤が予防する可能性があることを新たに見出しました。 本研究成果は国際専門誌The Oncologist ※2に掲載されました。また、山本和宏氏は、当該掲載論文により第10回(2022年度)江口記念がん優秀論文賞を受賞しました。神戸大学医学部附属病院の本研究グループは、第121回日本皮膚科学会総会(2022年6月2-5日)でも本研究成果を発表しています。
【研究背景】
がん薬物療法は、がん細胞の特定の標的分子に作用する分子標的型抗がん薬の登場によりその治療成績が飛躍的に進歩しました。しかしながら、当初副作用が少ないと考えられていた分子標的型抗がん薬においても皮膚障害等の副作用が認められ、治療の中断や患者様の生活の質(QOL)を低下させる要因となっています。
この皮膚障害の発症はこの薬の有効性と相関する、つまり、この薬の効果が高い人ほど皮膚障害が発症しやすいと報告※3されています。そのため、この薬の皮膚障害をしっかりと予防軽減していくことは患者様のQOL向上のみならず、治療の成功にもつながると考えられます。しかし、現在のところ、分子標的型抗がん薬で起こる皮膚障害の発症メカニズムに基づく予防・治療法は考案されておらず、既存の経験則に基づいた予防効果は決して高いとはいえない状況です。
【共同研究内容】
これまで当社は、分子標的型抗がん薬による皮膚障害の発症メカニズムに係る基礎研究を共同で進めてきました。発症メカニズムの一部解明やビタミンC誘導体が分子標的型抗がん薬による表皮角化細胞への毒性を抑制する可能性があることについては神戸大学医学部附属病院より論文報告※4,5され、製剤研究・開発も共同で行ってきました。
上記成果をもとに、神戸大学医学部附属病院ではマルチキナーゼ阻害薬であるスニチニブを内服する腎細胞がん患者を対象としたビタミンC誘導体配合製剤の安全性および皮膚障害の予防効果を検証する第Ⅰ/Ⅱ相試験(単施設・非盲検・非対照)を実施し、腎細胞がん患者に対する本製剤の安全性と手足皮膚反応に対する予防効果を示唆する結果を得ました※2 。
【今後の展望】
今後は、マルチキナーゼ阻害薬で起こる手足皮膚反応に対するビタミンC誘導体の影響について更なる検証を進めるとともに製品化を目指していきたいと考えています。
※1 ビスグリセリルアスコルビン酸
※2 The Oncologist. 2022;27(5):e384-e392
※3 Annals of Oncology 2012;23(12):3137-43
※4 Experimental Dermatology 2021;30(3):337-346
※5 Biological&Pharmaceutical Bulletin 2017;40(9):1530-1536
■株式会社桃谷順天館について
https://www.e-cosmetics.co.jp/
【概要】
桃谷順天館グループは、約400年続く薬種業を受け継いだ創業者が1885年(明治18年)にきびに悩む妻のために創った「美顔水」をきっかけに新たに化粧品製造業を創業し、これまで137年美と健康を追求してきた化粧品メーカーです。
「人と地球の美しい未来を創る ~For Beauty and Well-being~」をパーパスに掲げ、4社からなるグループ経営を行っています。
永い歴史とともに培った技術力と品質力をさらに進化させ、国内外で包括的に『美』を提供する企業グループを目指し、企業活動を続けています。
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