「売らない店」の現状と課題(OMOやRaaSとはいったい何なのか?)
新しいビジネスモデルのOMOやRaaSはどこへ向かうのか
“食に特化”した新たな体験型店舗として2023年にOPENした店舗型PR・マーケティングサービス「試食専門店 試食屋」。多くの食品/飲料メーカーの商品の販売における課題を可視化して、中長期的な事業拡大に寄与するべくサービスを提供しております。「売らない店」でなく「気に入っていただいた商品をしっかり売る店」というビジネスモデルとは少し異なる立ち位置を取り展開をしています。
- 新しいビジネスモデルの“OMO”や“RaaS”とはいったい何か?
近年よく目にするビジネスのモデルの1種としてOMOやRaaSという言葉は聞いたことがありませんか?いわゆる“ショールーミング型店舗サービス”というような括りがなされることが多いビジネスモデルです。
OMOとはOnline Merges with Offlineの略称であり、1つの捉え方しての意味は「オンラインをオフラインの融合」です。RaaSとはRetail as a Serviceの頭文字を取ったもので、1つの捉え方としての意味は、小売のサービス化という意味です。
OMOとは、たとえば「洋服を店舗で試してECサイトで購入をする」などのように、実店舗で商品を確認してからオンラインで購入したり、逆にオンラインで情報を得て実店舗で商品を購入するような導線を繋げるイメージです。そこでのデジタルメリットである顧客データを活用して、個別にカスタマイズされた提案やプロモーションを提供します。これにより、顧客の購買行動を理解し、ターゲット市場を効果的にターゲット化できるようなサービスです。
RaaSとは、たとえば「店舗のリアルメリットを生かしてサイネージなどでの商品訴求を顧客に行い、販売促進に繋げたり行動データを取得して販促に繋げるデータを取り小売業の事業拡大に寄与する」などの例です。小売業の運営や顧客体験を向上させるためのソリューションを提供するアプローチをする方法であるとも言えます。RaaSは、テクノロジーやデータなどのサービスを小売業に提供することで、小売業者がより効率的に運営し、顧客に対して魅力的な体験を提供できるよう支援することを目指すものです。
現在は首都圏で多くの百貨店などをはじめとした企業が、このようなモデルの業態を展開しています。
- どのような事業が展開されているのか
首都圏におけるいわゆるショールーミング型店舗ビジネスが、どのような形態で展開され分類されているのかを分かりやすくした図をお見せします。ガジェットをはじめとしてコスメや小物・雑貨、アパレルや食品などの多用な商品ジャンルを取り扱う企業が存在します。
大きな分け方としては縦軸の『商品ジャンル』と横軸の『購入方法』です。多くの企業は図の左上にある「商品ジャンル複合型」かつ「ECでの商品購入方法紹介」を行っています。現在は店舗販売を開始している企業も増え、横軸が広く取られているような現状があります。弊社が運営する試食専門店試食屋は、食に特化している「商品ジャンル特化型」かつ「店舗販売もEC紹介もしている」ためこの位置になります。色々なやり方があるように見えますが、意外と同じようなやり方をしている企業が多いように見受けられます。
- なぜ多くの消費者はこれらのモデルの店舗やサービスの認知・理解がほとんどないのか?
実はこのようなビジネスモデルの店舗は、東京を中心に現在までにかなりの数に広がっております。しかしながら、多くの消費者がこれらのビジネスモデルの認知をしていないうえに、店舗の存在自体をほとんど知らないのはなぜでしょうか。それは非常に単純で、消費者にとって「そのお店がそもそも何なのか?」という部分です。おそらく多くの企業が消費者にとってお店のことを想像しにくい、“分かりにくい”店名やサービス名になってはいないでしょうか。リアルな店舗において、消費者を集客するのに1番大切なことは分かりやすさです。分かりにくいお店は、そもそもの入店可能性を大きく減らしてしまっています。どんな料理が食べられるかわからないレストランに、初めて食事にはなかなか行かないですよね。要するに消費者が入店目的を持てないまま終わっているということです。
そしてもう1つ大きな欠点があります。それは『商品ジャンル複合型』であることです。考えてみてください、どんな店かも分からないだけでも入店への心理的ハードルが高いうえに、入ってみたら色々なジャンルの商品がそれぞれ十分なバリュエーションで展開されているわけでもない状態です。さらに何のお店なのか分からなくなりますよね。そのうえ、サービスの認知・理解もまだまだされているとは言えないため、利用方法も分かりにくいという、消費者の集客においての負のスパイラルです。
- なぜ「売らない」というスタンスを出しているのか
これらの多くのビジネスモデルは、「売らない店」というような形でメディアなどでも注目をされています。しかしそうだったはずの企業は、現在「売る店」に姿を変えていっています。それでは、なぜ当初はほとんどの企業が売らないというスタンスを取っていたのでしょうか。その答えは冒頭のOMOやRaaSという、いわばビジネスモデルの形式的な理想追求があったからです。
先にも触れたように、このようなモデルを展開しているのは比較的、施設や資本、人的リソースなどの各種アセットを持つ企業です。既存のビジネスモデルからの脱却や、企業としての新規事業創出という目標のもと、最先端な取組みをしているように「見せること」が対外的に重要であるのかと考えられます。しかし実際はどうでしょうか。あくまでビジネスとしてスタートして拡大をするはずが、消費者への認知・理解も進まないまま肝心な集客は弱くなり、取引先になる企業へ提供できるメリットが想定より少なくなってきているのではないでしょうか。そこで売らないというスタンスが起こす、導入企業への「成果物」としてのデータの価値が小さくなってきているのではないでしょうか。それをカバーするために、販売をすることで「売上」という1つの「成果物」を後から付けたように思えます。
- 店舗で体験→ネットで購入はほとんど起こらない!?
売らないお店が狙うのは、店舗で試してECサイトで購入してもらうことです。一見すると、「リアルとデジタルの掛け合わせ」の理想形のように見えます。しかし実際はどうでしょうか。商品ジャンルにもよりますが、正直この理想形は現実問題相性が非常に悪く、実際の成果が出ずらい傾向にあるように思えます。相性を商品ジャンルごとに分けると、以下の図のような印象があります。
単価が高く、重量があったり購入までに検討が必要になる傾向が高い「家電系・ガジェット系」は比較的相性が良いと思います。コスメ系に関しても、ECでのまとめ購入やストック購入、より安価なサイトでの購入などをマメに行う女性に受け入れられやすいと思います。アパレル系はD2Cメーカーなどは購入方法がECしかないため、そういったケースでは相性が悪いとまではいきませんが、食品系までいくと相性は普通どころか、悪い傾向にあります。
あくまでも相性が良い悪いという傾向を分類をしただけであり、実際に購入という成果につながるかどうかは別問題です。実際は多くのやり方でこの導線で直接的に購買にはつながりにくいはずです。お店を利用する消費者を自分だと置き換えて考えてみてください。そこで商品を見て触って、わざわざECを開いて商品を選択して、住所やカード情報などを入力して、送料がかかるうえに届くまでのタイムラグがあるという多く買い物におけるデメリットを積極的に行うでしょうか。おそらく答えはそこにあります。一方で自分で持ち帰ることや、定期購入などの用途などにおいてはメリットを発揮します。
- リアルな店舗の価値とは何なのか?
時代がすごいスピードで変わるなかで、多くの企業がビジネスのやり方を変化させていこうとしています。特にデジタル化が進む社会において、リアルな場所やヒトの存在価値は、大きく見つめ直されてきているのではないでしょうか。ではいったいリアルな場所やヒトの、デジタルな時代のビジネスにおける価値とは何でしょうか。それは、「情緒的価値」だと考えています。要するに「ヒトの心を動かせる価値」です。
多くの商品やサービスが溢れる中で国内景気は低迷気味で世帯所得平均も低下傾向にあり、消費も衰退してきているような日本。そんななかで起きていることは、メリハリ消費だと考えています。つまり本当に必要で良いと感じたものにはお金を払い、あってもなくても良いレベルのものだと、無駄にお金を払わなくなってきているということです。そんな消費者の心理状態で、新しいものにチャレンジするには経済合理性はもちろんのこと、感動体験などの付加価値が大切になってきます。類似する商品やサービスに、圧倒的に大きな差があるほどのものはあまり見受けられません。そこで大切なのが、情緒的価値です。場所におけるワクワク感や、体験ができる価値、ヒトが教えて自分に合うもの提案してくれる価値、これらが商品本来の価値に加わっていくことで、満足度の高い購買体験が生み出されるのです。そういった意味で、リアルにおける消費者への体験価値の生かし方はもっとたくさんあり、効果を最大化することができると考えています。
- そのデータは企業にとって有益なものになっているか?
ショールーミング型店舗サービスで重要なものが消費者データの取得です。無償での体験価値を提供する代わりに各種データを取得して、各企業に提供しています。このデータに関して、多くの企業が行っているのが人流データや顧客属性データの取得です。カメラを店舗に設置して、消費者の年代や性別の分析をはじめ、各展示商品ごとの滞在時間や行動ルートを取っています。
これは商品ごとのあらゆる傾向がわかりそうな気がしますが、私たちはそうは思いません。たとえば、商品も前に2分立ち止まっていたという事実があったとして、それは「商品にポジティブな感情を持って気になってる」のか、「デザインなどではわかりにくいから、商品が何かを知るため」に見ていたのかは、確実にわかりません。似ているようで全くことなる性質のデータを、年代・性別・滞在時間などの括りでひとまとめにしては、受け取った企業は価値を感じるでしょうか。接客における会話データの収集もメモが限界で、正確に情報量多く取得ができているでしょうか。つまり、企業にとって有益になる、次のアクションに明確につながるデータとしての価値が確立されていないのです。
- これからのショールーミング型店舗サービスの未来
業界における現状と考えられる課題を色々と書きましたが、おそらくこのモデルのみならず大切なのは、消費者のことがみえているか?取引先の企業へのメリットを提供もしくは課題解決ができているかだと考えます。理想を持ちながらも現実を見て、半歩ずつ進んでいくことで新しい未来が見えてくるのではないかと思っています。試食専門店試食屋は、大きな理想を持ちながらも現実を誰よりも理解して、新しいアタリマエを生み出していきたいと思います。
店舗:試食専門店試食屋
会社:株式会社Liva
住所:東京都目黒区自由が丘2-9-6 Luz自由が丘1階
電話:050-8886-1701
広報:info@liva-cs.com
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