ChatGPTが日本経済に与えるインパクト、年間で最大40兆円相当の労働価値を創出する可能性を示唆
~SIGNATE、企業のChatGPT導入効果を試算できる『ChatGPT影響度診断サービス』をリリース~
AI・データ分析コンペティション、DX人材育成を手掛ける株式会社SIGNATE(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:齊藤 秀、読み方:シグネイト、以下 SIGNATE)は、2023年8月24日に、ChatGPTが日本経済に与えるインパクトを試算した検討結果を発表しました。 本検討結果によると、現状のChatGPTの業務活用は、年間で約25兆円相当の労働価値を創出し、将来的には約40兆円相当まで拡大する可能性があり、最も影響を受ける事務従事者においては、全業務内容の34%〜54%が半分以下の作業時間に効率化される可能性を示唆しています。
■本検討の背景と目的
ChatGPTに代表されるLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)については、様々な研究やレポートで、職業や経済へ与える大きな影響が試算され、世界経済、社会、政策に顕著な影響を与える可能性が示唆されていますが、これらの検討は欧米のデータを中心としたマクロな影響に関するものが中心です。よって本検討の目的は、日本の労働市場および経済に対するLLMのインパクトについて初期的な傾向を可視化することです。
SIGNATEでは、LLM活用における業務効率化によって得られる経済効果を最大限享受するためには、全職業従事者がLLMの特性を正しく理解し、具体的な職業・業務タスクレベルにおけるLLMの活用ノウハウを蓄積し、普及させることが非常に重要と考えています。国内の企業におけるLLM活用の推進の一助となるべく、ChatGPTの導入効果試算や優先度検討のため『ChatGPT影響度診断サービス』をリリースしました。
■検討の概要
本検討は、2023年3月23日にOpenAIとペンシルベニア大学から報告されたプレプリント[1]に基づき、影響の判定基準を定義、職業への影響度を計算しました。また日本の労働市場における同様の計算を行うため、日本の職業および業務タスクの定義としてJobtag(日本版O*NET)[2]のデータを活用しています。
その論文手法を再現したアルゴリズムを適用した結果が下記の図で、現状のChatGPT(alpha)から将来のChatGPT(zeta)までの影響度のポテンシャルを表現しています。例えば、betaの影響度をみると業務の10%にLLMを活用できる職業は全職業の70%強におよび、業務の50%にLLMを活用できる職業は全職業の20%という解釈です。
・alpha:一般的なChatGPT、つまりテキストのみを扱え、1年以内の最新の情報を持っておらず、検索による情報取得や他のアプリケーションとの連携はできない想定
・beta:alphaに実装されていなかった機能が追加され、その機能の評価を半分としたもの
・zeta:機能面ではbetaと同じで、機能追加の評価を等価としたもの
次に、LLM活用がもたらす業務効率化の価値を現状の日本の労働市場における給与実績から試算するため、国内の様々な公的統計データから企業規模ごとの年間給与平均額を割り出し、経済効果(alpha・beta・zeta)算出に利用しました。結果としては、現状のLLM機能を活用した場合の影響度(alpha)で年間約25兆円、将来的な機能追加が実装されたLLM機能を活用した場合の影響度(zeta)で年間約40兆円相当の労働価値を生む試算となりました。
最も影響を受ける職業分類は「C. 事務従事者」で34%の業務をLLMで効率化でき、続いて「B. 専門的・技術的職業従事者」が26%の業務をLLMで効率化できるという試算です。いずれもコンピュータを用いたデスクワークにおいてテキストを扱うことが多い職業で、この2つの職業分類は、就業者数および給与総額においても全職業分類の上位を占めており、LLMが大きな経済インパクトをもたらす可能性が示唆されます。
■今後についての提言
本検討において、LLM活用における業務効率化によって大きな経済効果が得られることが示唆されました。この効果を最大限享受するためには、全職業従事者がLLMの特性を正しく理解し、具体的な職業・業務タスクレベルにおけるLLMの活用ノウハウを蓄積し、普及させることが非常に重要と考えられます。2023年7月の研究論文[3]では、ChatGPTの活用により約40%の業務効率化と18%の品質向上効果が例証されました。さらに注目すべき結果として、被験者のほとんどがChatGPTに対して仕事を奪われるといった脅威ではなく、仕事を楽にしてくれる技術というポジティブな対象として受け入れていること、実験後も継続して日常業務に自発的に活用していることが報告されています。
今後、労働人口が半減する日本においては、生成AIを含むAI技術の活用による生産性向上が必須であり、AI技術を前向きに捉え積極的に活用していく社会風土の形成を、人材育成や計算資源・データ整備などへの投資・活動を通じて実現していく必要があると考えます。
[1] Eloundou, T., Manning, S., Mishkin, P., & Rock, D. (2023, March 17). Arxiv.
https://arxiv.org/abs/2303.10130
[2]職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag
本レポートでは、以下のデータを利用しています。
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)作成 職業情報データベース 簡易版数値系ダウンロードデータ ver.4.00 職業情報提供サイト(日本版O-NET)より2023年3月28日にダウンロード(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/download)を加工して作成
[3] Noy, S., & Zhang, W.(2023b) Experimental evidence on the productivity effects of generative artificial intelligence, Science,381(6654),187-192.
https://doi.org/10.1126/science.adh2586
▼本検討についての詳細はこちらからご確認ください
齊藤 秀note『ChatGPTが日本経済に与えるインパクト』(2023年8月17日公開)
https://note.com/saix/n/nff3dd5d2e341
齊藤 秀(さいとう しげる)
株式会社SIGNATE 代表取締役社長CEO/Founder
博士(システム生命科学)、1975年生。オプトホールディング CAO(Chief Analytics Officer)を経て41歳でSIGNATEを設立。幅広い業種のAI開発、データ分析、共同研究に従事。政府のデータサイエンティスト育成及び産業データ活用関連の委員に多数就任。筑波大学人工知能センター客員教授、国立がん研究センター研究所客員研究員。社会全体がデジタル化する中で、データを活用する人材が圧倒的に不足している問題を解決したいという想いで起業。
■SIGNATE『ChatGPT影響度診断サービス』をリリース
SIGNATEでは、本検討の手法を企業診断に応用したサービスをリリースしました。組織・職種の情報から全社・部門・職種単位でChatGPTがもたらす影響度を算出し、業務効率化のポテンシャルを可視化します。ChatGPTの導入効果試算や優先度検討などに活用可能です。
また、影響を受けるすべての業務タスクにおいて、効率化のためのプロンプト例や、活用アイディアも提供するため、既にChatGPTを導入している企業にとっても、更なる効率化が期待できます。
他にも、SIGNATEではChatGPTの社内活用を促すプロンプト講座の提供や、機運醸成及び知見共有を目的としたChatGPT活用コンペティションなどのご支援も可能です。
お問い合わせはこちら:https://go.signate.jp/impact_assessment_Inquiries
■SIGNATEとは
SIGNATEは、社会と企業のDX推進を支援し、日本の成長に貢献することを目指すベンチャー企業です。日本最大のデータ人材コミュニティ「SIGNATE」では、AI開発コンペティションやDXプロジェクトサポートで個人が才能を発揮できる機会を提供するほか、DX推進のための人材育成クラウドサービス『SIGNATE Cloud』では、社員をDX人材にするための教育を提供しています。
■会社概要
社 名 : 株式会社SIGNATE(SIGNATE Inc.)
本 社 : 東京都千代田区神田錦町2-2-1 KANDA SQUARE(WeWork内)
資本金 : 2.8億円(資本準備金1.8億円含む/2022年8月1日時点)
代表者 : 代表取締役社長 齊藤秀
URL : https://signate.co.jp/
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