異質のヒット!?『Dr.コト―診療所』の客層・情報源は?
KIQ REPORTでは、年1回以上映画館で映画を見る全国の15~69歳、1,757名にアンケ―トを実施し、2023年正月映画の鑑賞者分析を行っています。
★第1回:正月ヒット映画を観たのはどのタイプ??
★第2回:『THE FIRST SLAM DUNK』超大ヒットの3つの秘密
★第3回:TV?ネット?映画館の予告? 映画を知ったきっかけは??
4回目となる今回は、邦画実写作品の鑑賞者に注目してみます。
2022年、興行収入10億円を超えた邦画は26作品ありました(※一般社団法人日本映画製作者連盟調べ)。うち実写映画は12作品となり、これまで邦画を牽引してきたテレビドラマの劇場版は26作品中の3作品にとどまりました。近年はテレビドラマで大きな話題作が乏しいこともありますが、ユーザーの嗜好が変化しているようです。
しかし、昨年末は往年の人気ドラマを原作とした『Dr.コトー診療所』(興収:約24億円)が大ヒットに。約20年前に放送されたドラマの劇場版という背景も含め、その特徴を探り、邦画実写の立ち位置を確認してみたいと思います。比較対象は公開規模、実績ともに近い『ラーゲリより愛を込めて』(興収:約26億円)に加えて、邦画アニメ『すずめの戸締まり』『THE FIRST SLAM DUNK』です。
マスメディア中心の宣伝で、ふだん映画館に行かない中高年層を動員
まず劇場鑑賞者の性・年代別の構成比をみてみましょう。
『Dr.コトー診療所』の客層には大きな特徴があり、他の3作品に比べて女性比率が高く、女性50-60代の割合が突出。メインターゲットである当時のドラマファン層をしっかりと取り込んでいます。鑑賞者の映画鑑賞頻度にも特徴があり、『Dr.コトー診療所』は劇場での映画鑑賞が年1回以下のノン層の割合がきわめて高い割合を占めました。
通常、映画はヒット作ほどライト層(映画館で半年に1本程度映画を観る人)やノン層の割合が増える傾向がありますが、4作品の中では興収が少ないにもかかわらず、他の作品を大きく上回ったことは特筆に値します。映画好きな10-40代を中心に幅広い層に訴求した3作品に対して、『Dr.コトー診療所』はふだん映画をあまり見ない50代以上の人々に映画館まで足を運ばせたのです。
次に劇場鑑賞者が何を参考にしたのか、情報源に着目してみます。
『Dr.コトー診療所』はTV番組とネットニュースの比重が高く、映画館の予告編は低いという明確な特徴があります。ネットニュースの高さと映画館の予告編の低さは前述の客層に起因しているといえるでしょう。TV番組については『ラーゲリより愛を込めて』も同様に高く、邦画実写はキャストの宣伝稼働が期待でき、テレビ番組での露出効果を改めて確認することができました。
かつて、テレビドラマ原作映画は若年層をターゲットにした作品がメインでした。マスメディアを中心とした宣伝展開で映画に馴染みのない中高年層をしっかり取り込んだ『Dr.コトー診療所』はやや異質のヒットであり、トレンドの変化を感じさせる作品といえるでしょう。
【調査概要】
調査時期:2023年1月24日(火)〜2023年1月31日(火)
調査対象:計1,757名 (15歳~69歳の男女)
調査手法 :インターネット調査(FastAsk利用)
調査定義:映画ヘビーファン=月に1本以上劇場で映画鑑賞する人/映画ミドル=2~3ヶ月に1本程度劇場で映画鑑賞する人/映画ライトファン=半年に1本程度劇場で映画鑑賞する人/映画ノン=年1回程度劇場で映画鑑賞する人
【関連リンク】
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